『心霊カンパニア』外伝

白銀比(シルヴァ・レイシオン)

黄泉の奈落

 苦しい・・・痛い・・・死の痛みだ。


 寂しい・・・孤独・・・世界の相違だ。



 お前には、何が見える?

 俺には・・・いや、何も視えない・・・・・・


 ひだるい・・・ひもじい・・・満たされぬ。

 いぶせい・・・えぐい・・・もう、どうでもいい・・・・・・



 世界とはもともと不公平だ。人間が悲観しわざわざそう嘆く必要は無い。


 「食物連鎖」とは、ものは云いようだ。

 「弱肉強食」こそ、それがこの世界だ。


 強くなることを否定された、この地、この国は終わる。強者、搾取者に無抵抗に奪われ、永続的な奴隷に成り下がってしまう。


 多くの神々や、様々な妖々たちも最早、嫌気を差している。


 下賤の愚者どもは気づきもせずに、吊るされ祭り上げ灰と化す。



 奪った物は奪い返される。因果応報、運命さだめという輪廻。殺せば殺される。報復、復讐、反乱、逆襲・・・・・・


 繰り返される愚かで疎かな愚行。永遠と続く争いと死。

 ならば、と、許し受け入れ、耐えて死ぬ。




 死しても無いのに、何が分かる。


 黄泉の現実の、何が解る。

 奈落の底に何を求める。

 逃げた先が天国だなんて、誰がほざいた?


 生か死か。天国か地獄か。白か黒か。零か百か。

 二択の世界、二元論では結果は同じ。

 極論、死後に奪われることは無いと楽を願う。


 生して何を得る?天国に何が在る?白ければ汚され、百からは引かれ、奪われることしか存在し得無い。


 零に何を掛けても零は零、黒い死の先、地獄が解るか?

 と、何処の誰がそうぬかし、ほざいた?

 零でもなければ百でもないだろう。十かもしれんが九十かもしれぬ。


 奈落が零だと、誰が決めた?

 所詮は半端なこの全ての世界。

 勝手なことわりの勝手な決め事。そうだと決定付けたなら、それこそ傲慢な罪として問われ裁かれよう。



 厳格なる規律の反動でルシファーが生まれ、優しい堕落から、ベルフェゴールが生まれた。

 そうとしか思えぬ。


 全てが「表裏一体」

 裏か表かだと云うならば、表があるから裏がある。

 これになんの意味があるのだろう。これになんの意義があるのだろう。

 どちらも間違い、どちらも理不尽でありどちらも同罪、同類である。


 ただ、この世の摂理があるならば、そして蹂躙されたくないならば、『続ける』しかない。強者として得物と他者を喰い続けるしか、他にないのだ・・・でないと・・・・・・



~黄泉の奈落~    了



『心霊カンパニア』本編⇩

https://kakuyomu.jp/works/16818093073381669406


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