犬連れて 🐕

上月くるを

犬連れて 🐕



寒暁やホテルの窓のひとつ開く

犬連れて手を振るひとや春隣


山巓に動かざる雲春を待つ

また一歩進みたる道冬深し


一月の道の続きのカフェの隅

晩冬の茶色い殻の茹でたまご


恐竜に似た雲奔る冬の空

鮟鱇の画数多き名の一生


平台の本に呼ばれる厚着かな

侘助や応じるつもりのなき話


住む星がちがふ人なり破氷船

悪役の名に甘んじるはぐれ鷹


冬忍ロールモデルと言はれても

野に満ちるドライフラワー寒雀


しやかりきはかつこわるいねかまどねこ

ほんたうのことは言はずにししゃも食ぶ


ペーチカや止の一針返縫ひ

ワンセグの字幕鮮明冬の月


金星のうつかり入るブーツかな

冴ゆる夜の茶碗一椀うづくまる




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