夢見の幼子達は

夜桜 緑

第1話 【出会い】

『…?ここは…。』


遊園地にあるようなメリーゴーランドにある馬車の中で目を覚ます。

自分の手、体、そしてメリーゴーランドの中央にある鏡で自分の顔を確認した。


バツ印の瞳、縫い付けられた口角は上がりきっており、服は黒と白ばかり。

髪は…紫?こんな髪してたっけ、

あぁそうだった、ボクはこんな見た目だった、眠る度一瞬忘れてしまう記憶、感情、自分すらも。

大きくあくびをしのびをして服を整える、シワを伸ばして見栄えを良くして。

さぁ、仕事の時間だ。

これだけは忘れない、自分の仕事が夢を食べる事だと言う事

不思議だよね、ボクもそう思ってるさ。


『今日も夢を食べに行かなきゃ』


仕事だし、何より自分自身気に入ってる夢を食べるって事。

美味しいから。

けど…最近は美味しいって…感じなくなったな。

それでも食べ続けなきゃいけない、それが仕事


鏡の先は現実世界、通れないと思った?けど通れるの、ここが夢の世界だから。

少年は鏡にそっと手を当てるそして飲み込まれるように鏡の中へと吸い込まれて行った。




第一話  【出会い】




飲み込まれて行った先は現実世界、ビルが建っていて光が多く目が痛い。

車もたくさん走っている、少し怖いけど怖く無い。何故って?

ボクが空に浮いてるから。


残念、ボクは生きてないんだ。


今日はあの家へ行ってみよう。

それは赤い屋根の家、平凡な家、車が一台、新しい自転車が四台。

住宅街にある二階建てのただの家。

2階の窓から淡い光、寝ている良い子が居る。

時間はかからない、だってどんな夢もボクにかかれば一口。ごくんと飲み込めばハイ終わり。


『あれ、この子なんか変』


2階の窓から少年は侵入し寝ている子の目の前へと移動していたのだが…、

けど何か変。

頭に黒いモヤがある、息を吹きかけてもどこにも行かない、やだよご飯にゴミがついてるみたいでさ、

だから手で追い払おうとしたんだ。


その時、夢に吸い込まれていく感覚がした。

怖くて目を閉じたんだ、でも…すぐに開けた。


気持ちのいい太陽に綺麗な青空、花がたくさんでいい匂いもする、蝶々もたくさん居て小鳥の鳴き声がする、そして遠くには青と白のお城があった。

そんな場所で遊ぶ金髪ロングの青いドレスと宝石のついたティアラをつけた女の子。


『ねぇ、キミは?』


少年は女の子に話しかけた。

女の子はびっくりしていたが直ぐに笑った。


「わぁ!王子様まで居る!」


そう女の子が言った瞬間少年の服装は王子様のような服に変わる、白ばかりの服にマントが付いている服だった。

少年は驚く自分の服が変わっちゃったそれに髪も…、金髪になっていた。顔立ちは変わって無さそう。


「にしても何でこの王子様はこんなに小さいの?私背の高い王子様がいい!!」


女の子の言葉に自分の体が変わって行く気配がした、心地が悪い。


『やめて、ボクは王子様じゃ無いよ。』


少年はそう言うが話しは通じ無さそうだ。女の子はずっと笑っているそれは純粋な笑みで。


『やめて!!』


あまりの心地の悪さに少年は大きな声が出る。女の子は…、

反射的に地べたに座り込んでしまう、そして…泣き始めた。青空だった空はたちまち雨に。

あぁ濡れてしまう。嫌だなぁ。

少年は女の子に話しかける。


『ごめんってば、ボクもびっくりしたんだ。』


ため息混じりの声だったが女の子は驚いた顔をしていた、何故だ…?

雨は止みまた青空、けど今回は雲が多く見えた。


『そう、それで良いんだ。ねぇ名前は?』


少年が聞くと女の子は答える。


「ティアラよ!」


女の子の名乗る名前に直ぐ偽名だってわかった。

でも機嫌を悪くさせるとめんどくさいからもう…いいや。


『ねぇ、ティアラ。キミの夢を食べさせてよ、後ここから出して。』


少年は言うが女の子は気にして居なかった。多分聞こえて居ないのだろう。


「ねぇ王子様!お母様達が私の事いじめるのよ…!私もう耐えられないわ!」


女の子は言う、多分慰めて欲しいのだろう物語でよく見る展開だ。


『あー…、…大変…だったね?』


少年は言うが女の子は不満なようだ、また雨が降りそうだった。


『あぁ…ティアラ…その…、……か、かわいそうにだいじょうぶだったかい?』


ごめんよ、ティアラ感情を込めるのは苦手なんだ。


でも女の子は満足気だった。そして女の子は少年にお姫様抱っこを求めた。

女の子なら一度は多分…憧れるであろうお姫様抱っこ。

少年は大人しく従いお姫様抱っこをした。

軽かった。

とても、軽かった。


ティアラをしっかりと近くで見える、女の子って半袖でなんか袖がふんわりしているのが好きじゃ無いのか?そう少年は思った、ティアラが来ている服は長袖だった暑そうだ。

顔もしっかりと見る左右で目の大きさが違う、デカさってより…縦…?ぷくってなってる。

それに鼻少し曲がっているような…、これは生まれつきかな?

肌が異様に綺麗だったティアラの頬を擦ったら濁ってしまった青紫に。

そう言えば聞いた事ある女の子ってヒールのある靴に憧れを持ってるって。

けどこの子裸足。

でも格好はまさしくプリンセスまるで童話の。


「ねぇ!ツインテールして!」


女の子は言った。


少年はその言葉を聞きティアラをゆっくり下ろし座らせ髪をいじり始める。


『ねぇ、ティアラって何人家族なの?』


この子以外にも夢を食べられるなら、満腹になる為に聞く、何やかんや移動は疲れる。


「んー?えっとね…、いち…にい…さん! 3人家族だよ!」


手で数字の三のポーズをとる女の子。


ティアラを含めずに2人の夢が食べれるのか、思ったより少ない。


『ねぇ、さっきさ。お母様達がいじめてくるのって言ったでしょ?それ本当?』


少年は問うがティアラはもう覚えて居なさそう。

でもティアラは言う、笑って。


「大丈夫!悪はティアラがやっつけたの!あの子私のママを取っちゃうから!後はあいつを倒すだけ!」


あいつ?誰だろう。


「あいつの手は悪魔の手。あいつの足は悪魔の足、だからあいつはバカなの!いつか切り離してあげるんだ!」


青空が一瞬赤く、そして城の方向におぞましい生物が居た気がした。

けど、多分気のせい。


『ツインテール、出来たよ。』


最高傑作だ、何故か鼻が高い。


「ありがとう!これでやりやすいね!」


何を…??


気づいたら、空が赤く城はおぞましい生物へと変わった。

赤くって、どろどろで、頭がぐちゃぐちゃで。腕が変な方向に曲がってて。

その怪物は、大人の男性を呼び出しそして…、


手足を引きちぎった。


「これで!皆ハッピーだね!!」



……。



ボクはここでティアラの夢から追い出された。



多分ティアラが起きかけているんだ、現実世界に戻った時もう朝日が見えかけて居た。

ティアラを改めて良くみたんだ外見だけで正確な年齢は分からないけど、小学低学年か、幼稚園とか通うぐらいだろう年齢だった、あぁ、夢を食べなきゃ、口を大きく開けた。

だか…、

夢を食べたら夢の中で起こった事全部忘れちゃうんだ。少なくとも楽しいって思えたんだ。


少し勿体無くってティアラの夢食べない事にした。


けどティアラの家族の残り2人の夢は食べた。男の方は悶えて居た。


後面白い物を見つけたんだ。

黒い額縁の中に子供の写真があったんだ、ティアラより幼い。多分2歳ぐらい。

その額縁に黒いリボンをつけて居たんだよっぽど黒が好きなんだね。後額縁の周りも豪華だった。


あぁティアラが起きる音がする早く逃げなきゃ、急いで出ようとした。だけど少しもたついて時間がかかった。


楽しそうな大きな声が聞こえた。


やっと家から出れた。それにしてもこの家個性的な匂いがするな、来た時は匂わなかったんだけど、



あぁ、大人の男の人の夢は美味しかった。











後…、どことなくティアラに似て居た気がした。













次はどんな夢を食べに行こうかな。








第一話 【出会い】 終わり。







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