アラサーに高校生のコスプレはしんどい4
「――“腹を痛めて産んだ我が子を、どうして手離さなければいけないのか”……今回の転生者は、随分と面白い考え方をする。彼女がこの世界にどう作用するのか、興味深い」
(これまでの転生者のなかで、子どもの将来を案じたのは彼女だけだった。人間はしょせん、我が身が可愛い生き物。他の転生者は自由を得るために、子どもを差し出した。しかし、彼女は違う選択肢を選ぼうとしている)
要人の伴侶を見つけるため、子どもを授かるために異世界から若い女性を召喚している――
その説明は嘘じゃないが、すべてでもない。グレゴワールは待っている。この世界に変革の雫を落とす存在の登場を……
(母性……それが、この世界に足りない要素だったのかもしれない。彼女はきっと、なんらかの異変をもたらしてくれるだろう。わたくしはただ、傍観していればいい)
「それにしても、“なんでもやります”なんて言って、大丈夫なのか? まさか、思春期の男がどんなに愚かなのか、知らないのか?」
あののんきな異世界人は手当たり次第、学生たちに声をかけるだろう。“表向きは”男子校の学園で、どんなトラブルが生じるのやら……
(まあ、いいか。わたくしには関係ない)
自分が味方だと言った覚えはない。なにしろ、異世界から若い女性を召喚している大魔術師とは、グレゴワール本人なのだから。謎多き男は金色の瞳を細める。
「――この世界に残った異世界転生者なら、いますよ。子どもを産んでもなお、残った女性がね」
その異分子の謎を解き明かすために、育美は召喚されたのだ。グレゴワールの腕輪が
「転生者さんの気持ちは聞きましたが、彼らはなにを考えているのやら。男はいくつになっても、甘えたいものですからねぇ。ふふ。母性100%に振り切ったら案外、気に入られたりして。
さて、わたくしは居心地のよい環境を整えておきましょう。彼女を鳥籠から逃さないように」
異世界スキル ママ味~年下男子に母性本能をくすぐられています!~ その子四十路 @sonokoyosoji
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