第6話 S子の復讐
城にて。
「ええい、まだ逃げた女は見つからないのか!?」
「申し訳ありません団長。森をくまなく捜索してはいるのですが……」
「森などとっくに抜けているに決まっている!近隣の村を探せ!村人を脅しても構わん居場所を吐かせろ!」
「はっ!」
城の騎士団長が声を荒げる。自信が|管轄していた『プロジェクト・マグノリア』の要、人形兵士の成功例が逃げ出してしまったのだ。
「団長、ご報告が」
「うん?あの女が見つかったか?」
「はい。女は見つかったようですが……同じく人形兵士と思われる男と共にいたという情報が」
「人形兵士の男など、俺は作った覚えはないが」
「おそらくですが……森に打ち捨てていた人形の失敗作に、なんらかの理由で異界の戦士の魂が宿ってしまったものかと……」
「ちっ、面倒な……男はどうせ失敗作だ。役立たん。破壊してしまって構わん」
「かしこまりました。必ずや女は持ち帰って参ります!」
部下が全員去ったのを見届けた団長は、苛立ちを収めようと自室で一人映像魔法を展開した。
「あの女……見目だけは麗しかったが、実に反抗的な瞳をしていた。俺はじきにこの国の中枢を担うにも関わらずというのにだ。妾にもならぬなどと生意気言いおって……」
1週間前に撮った女の映像を再生する。服を脱がせ、体を
パッと視界に映し出されたのは期待通りの素裸──ではなかった。
「──井戸?」
どこか暗い森の中、ポツンと井戸がある。そこからヌッと、長い黒髪の少女が這い出てくる。
「お前……戻ってきたのか?しかしこれは映像魔法のはずで……一体何が起きている!?」
フラフラと少女が近寄ってくる。とはいえ、団長は驚きながらも警戒はしていなかった。たかが映像、魔法で写された過去の記録に過ぎないはずだと。──ずるりとその実態が現実に這い出てくるまでは、そう思っていたのだ。
「ひっ……!?何故、どうして、俺が使ったのはただの映像魔法──!?」
ずりずりと床を這う少女の瞳は団長を捉え、そして──
翌日、姿が見えないことを心配した部下が自室で変死した騎士団長を発見する。
その後、立て続けに『プロジェクト・マグノリア』に関与した人物が変死体で発見されることとなった。
その共通点は、超能力を行使する人形兵士──長い黒髪の少女の召喚に携わっていることであった。
寺育ちのDさんは異世界で変身する 何屋間屋 @nann_ya_kann_ya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます