「審判」ダイジェスト版・カクヨムコン10出品作!

桜坂詠恋

エピソード0

 祭壇の前で彼は跪き、主を仰いだ。そして語りかける。


 神よ──。


 何故、ひとつの林檎を割るように、私たちを等しく同じにお創りにならなかったのか──。

 何故、あなたは私をお選びにならなかったのか──。

 何故、私を怪物になさったのか──。


 神よ──。


 彼の頬を一筋の涙が伝う。

 しかしそれを拭うと、彼は笑みを浮かべた。


 ぞっとするような、悪魔の笑みを──。


 *   *   *


 東京の夏、蒸し暑い日が続く中、中野区の住宅街で異様な殺人事件が発生する。

 被害者は女性で、遺体は廃工場に吊り下げられていた。

 さらに首には鋭利な刃物による深い傷が刻まれ、現場には薔薇の花弁が散らばり、壁には血文字で「Guilty(有罪)」と記されている。

 そこにアヴェ・マリアが流れていたというのだ。

 その異様な現場に、捜査員たちは息をのんだ。


 捜査にあたるのは警視庁捜査一課。その中には刑事・西島隼人と新人刑事・久住葉月のコンビもいた。

 西島は過去に犯した誤認逮捕の経験から罪悪感を抱え、警察組織内で孤立している。一方、葉月は刑事としての使命感に燃えつつも、まだ使い物にはならない。

 すぐに第二の事件が発生するも、捜査班長・渡邊は二人にろくな捜査をさせようとせず、実質捜査班からの排除をを目論んでいた。

 本件を自身の手で挙げるには、西島が邪魔だったのだ。

 そんな中、西島と葉月は独自に操作を開始した。

 西島には、気になる被疑者がいた。

 第二の事件発生の数日前、偶然見かけた若い男だ。

 夏の盛りに白い長袖パーカーをしっかりと着こみ、マスクで顔を隠し、現場となる廃倉庫の写真を撮っていた謎の男である。

 捜査会議ではプロファイラーを迎え入れ、犯人のプロファイリングを実施。

 その犯人像が、白パーカーに酷似している事に西島と葉月は気付く。

 任意で事情を聞くべきという葉月に対し、慎重になる西島。

 それは西島の過去に原因があったが、葉月はそれを知らない。


 五年前、彼は捜査一課で若手のエースとされ、自信に満ちた刑事だった。

 しかし、ある殺人事件で状況証拠を基に容疑者を追い詰め、結果的にその男を自殺に追い込んでしまう。その後、真犯人が逮捕されたことで、西島のキャリアは転落し、彼の精神には深い傷が刻まれた。以来、西島は孤独と罪悪感に苛まれる日々を送り、唯一の心の拠り所として教会を訪れるようになる。そこで彼が出会った神父・新堂文哉は、西島にとって自らを支え、寄り添う存在となった。


 捜査を行う中で、少しずつ距離が縮まって行く西島と葉月であったが、ついに事件は起きた。

 葉月が何者かによって誘拐されてしまうのである。

 拉致された姿が西島のスマホに届く。

 西島は被疑者と目していた男の協力を得て、葉月の救出へと向かった。

 

 なんとか救出された葉月。

 葉月の証言から、とんでもない人物が事件に絡んでいる可能性が出てくる。

 二人は犯人と思われる人物のバックグラウンドを調べるため、高知へ向かい、被疑者の周囲にいた人々からの聞き込みを行い、驚きの秘密や過去が浮かび上がる。それにより、事件の背後に潜む異常性が明らかになって来た。

 しかし、捜査が進むほどに事件の全貌は複雑さを増してゆく。


 二人は事件の核心に近付くも、その過程で西島は自身の過去の罪と再び向き合うことを余儀なくされる。

 そして再び事件は起きた。葉月が何者かによってまたも誘拐されてしまうのである。


 西島のスマホに届いた動画には、薄暗く狭い中で体を捩る葉月の姿が。

 少ない情報の中、葉月の居場所を探る西島。

 そして、ある人物の元へ──。

 

 ついに真犯人と西島の対決の場へ。

 彼らは犯罪の背後にある人間の狂気に触れる。

 燃え盛る教会で戦う、サイコパスと刑事。

 本当に審判を下されるのは一体──。


 二転三転する犯人像。

 最後まで読者を翻弄するストーリー。


 そして驚愕のラストとは──!


 *   *   *


<頂いた感想やレビューの抜粋>

 

「本作は、読者をじっくりと惹きつけ、次の展開を期待させる、心を離さない、非常に読み応えのある一作です」

「作者の宣言通り、ラストに驚いた。どんでん返しの連続!」

「書籍化されている作品と比較しても全く遜色ないクオリティです!!!」

「まんまと引っかかった……!まー、気持ちよく騙された!!」

「最高と最悪のラストが同時に…」

「ミステリーは大好きで色々読ませていただきましたが、この作品は本当に面白いです!」

「主人公の背景も深みを与えていますが、心理描写や展開の巧みさなどweb小説でこんな書籍にも負けないような本格的なものを拝読できて嬉しくなります」

「映像化を熱望します」

「仕事中に読むなよ。続きが気になりすぎて身が入らなくなるからな」


 その他たくさんのコメントを頂きました。有難うございます。

 是非、本編をご覧下さい。

 当作は「カクヨムコン10」にも出品。

 応援頂けますと幸いです。

 【審判】

 https://kakuyomu.jp/works/16818093081349120701


 


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 「審判」ダイジェスト版・カクヨムコン10出品作! 桜坂詠恋 @e_ousaka

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