インターセプター
山口遊子
第1話
[まえがき]
『真・巻き込まれ召喚~』の外伝、SF:ASUCAの物語(全42話、11万字)https://kakuyomu.jp/works/1177354054916821848の最終話にまつわる外伝になります。
よろしくお願いします。
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有史以来人類最高頭脳を自認するニコラ・ドライゼン、ドライゼン帝国皇帝により世界は統一されたものの、彼の突然の崩御から30年。ドライゼン帝国は旧来のコルダを帝都とした(東)ドライゼン帝国と新大陸アレクサンドリアを帝都とする西ドライゼン帝国の東西に分裂した。それから65年が経過した帝国歴479年。
ドライゼン帝国戦略宇宙打撃軍は西ドライゼン帝国の航空宇宙軍と同様、軌道爆撃機による戦略爆撃を実施する組織である。
ヘルザ・ヨハイムは帝国士官学校宇宙科を卒業後、6カ月に及ぶ対軌道爆撃機用軌道
彼女は今、所属基地から衛星軌道上のC3型軌道母艦-ゲルズ1に向かうため帝国首都コルダ近郊に設けられた軌道往還機発射場にやってきている。手荷物は軍規定の小型のスーツケース一つ。
ヘルザにとってゲルズ1への乗艦任務はこれで3度目である。
これから彼女は発射場付属の軍病院で最終身体検査を受け、異常がなければ体調調整後軌道往還機に搭乗し、軌道母艦に移乗後、3カ月間のインターセプター出撃待機任務に入ることになる。
軌道母艦は12機から15機のインターセプターを搭載している。搭載機数の違いは母艦の型式の違いによるもので、最新鋭対軌道爆撃機用軌道
現在東側が運用している軌道母艦数はC3型軌道母艦6、一世代前のC2型軌道母艦10の計16隻。この16隻に搭載されているインターセプターの総数は210機。うち常時200機は出撃可能状態に整備されている。
軍病院の受付でIDカードを提示したヘルザは検査案内書を受け取り、案内書に記載された指定ロッカールームに移動した。ヘルザはそこで割り当てられたロッカーに手荷物を入れたあと、戦略宇宙打撃軍の夏季制服からロッカーの中に用意されていた検査着に着替え、同じくスリッパに履き替えた。
検査開始まで待合室の椅子に座り、各種の検査室を順に回って、12時少し過ぎに検査を終了した。
今日の検査のために昨夜から何も固定物を口に入れていなかったヘルザはロッカールームに戻り検査着から制服に着替えて手荷物を持って病院内の食堂に向かった。
夕方にはこの日の身体検査の結果が出る。結果に問題がなければ、5日後の軌道往還機への搭乗まで病院内の個室で食事制限などを受け体調管理することになる。従って腹いっぱい食事できるのはこの昼食が当面の最後となる。結果に問題があるようならそのまま入院生活に入ることになる。
ヘルザは食堂手前の荷物置き場に手荷物を預け、食堂に入っていった。
軍病院の検査棟には軍関係者以外立ち入り禁止のため、食堂の利用にはIDカードなどの提示は不要である。
配膳テーブルに並ぶ料理はビュッフェ形式で好きな料理を皿に取ることができる。もちろん無料である。午後7時以降は瓶と缶に入ったものだけだがアルコールも提供されるが、アルコールだけは有料で、アルコール類を取る場合はIDカードが必要となる。そして料金は次の俸給から差し引かれる。俸給が不足した場合は登録された個人口座から引き落とされる。それでも不足した場合は軍の人事部門から呼び出しを受ける。昇進に影響するため、そういった人物はごくまれだが、ゼロではない。士官の場合、たいていは呼び出しを受けた段階で自主退官する。
ただ、軍務を真面目にこなし、違法賭博でもしない限り、俸給が不足することはまずない。
牛肉とジャガイモのプレートをメインとして、サラダとスープをトレイに載せて空いていた席について食べ始めたところ、向かいに一人の若い男が座った。
「よう、ヘルザ。久しぶり」
「なんだ、ヘルマンか。おまえも今回上がるのか?」
「ああ」
ヘルザの向かいに座った男の名はヘルマン・ハリス。ヘルザの同期で同じく戦略宇宙打撃軍に入隊し、おなじくインターセプター操縦士だ。所属基地が違うためお互い顔を合わせることは滅多にない。なお、『上がる』とというのは軌道任務に就くことを言う。
「上にいる時はいいが、下りてきたらリハビリの筋トレに持久走だ。下にいる方が辛い」
「その通りだが、リハビリで体を動かしていても俸給がいただけるし下ならうまいものも腹いっぱい食べられる。ありがたいじゃないか」
「それはそうなんだがな。ところで、西の連中の動きがどうもおかしいって俺のところでもうわさになっているが、お前のところはどうだ?」
「わたしのところでも話題にはなっているな。西側の戦略級潜水艦が相次いで出航して、わが方も対抗上戦略級潜水艦を出航させているとかなんとか。何であれ、われわれは命令通り任務をこなすだけだ」
「もちろんそうだが、俺たちが本当の意味で出撃するとなったら、それでお終いだぞ」
「仕方ないだろ。われわれの仕事とはそういうものなんだ。ヘルマン、お前だってなにも知らずに志願したわけじゃないだろ?」
「もちろんそうだがな」
「上にいて出撃して死ぬ方が、下にいて融合弾の火で焼かれて死ぬより何倍もいいんじゃないか?」
「それはそうだが、欲を言えば敵に撃ち落とされて死ぬより、敵を落としてから自爆したいけどな」
「わたしもその意見に全面的に賛成だ」
「だよな。まあ、その時には派手に暴れようじゃないか」
「その通りだ。おまえと話せて元気が出てきたぞ」
「そいつは、良かった」
「ヘルザ、上の任務が終わってリハビリが終わったら今度一緒に飲まないか?」
「いいぞ。その時は連絡くれ」
「了解。ちょっと奮発してコルダで飲むか? いい店を知ってるんだ」
「いいんじゃないか。上に上がっている時は金を使おうと思っても使えないから宇宙勤務手当付きの3カ月分の俸給がまるまる残るからな」
「1年のうち6カ月。上に上がれなくなる40歳まで勤めれば帝都に屋敷が建つという話を士官学校時代聞いていたが、あながち嘘ではなさそうだものな」
「まったくだ。
そういえば、同期のエルザなんだが来月結婚するそうだ。わたしはローテーションの関係で結婚式には出られないけどな」
「知らなかった。相手は誰だ?」
「海軍の潜水艦乗りらしい。さすがにどういった潜水艦に乗っているのかは聞いていないがな」
「何にせよ潜水艦じゃあ俺たちと同じだろ? 全くのすれ違い夫婦にならないか。まあ、夫婦の形はいろいろだから俺が心配しても仕方ないけどな。
他の物を取って来る」
ヘルマンがお代わりに立ったところでヘルザは牛肉のプレートをお代わりしようと思ったが、さすがに食べ過ぎかと思い直して、代わりにアップルパイと紅茶を配膳テーブルから持ってきた。
食事を終えたヘルザとヘルマンは空の食器を載せたトレイを下膳口に返してそれぞれの割り当てられた部屋に戻っていった。室内には一般的なホテルの客室と違いトレッドミルなどの軽い運動器具が備え付けられている。さらに言えば彼女の部屋のような宇宙勤務者用の待機室は無菌隔離室となっている。
制服から備品の部屋着に着替えたヘルザは、時間つぶしのため手荷物の中から小型リーダーを取り出し、備え付けのモニター前の椅子に座り、リーダーの書籍リストをながめて、適当な小説を選び読み始めた。
しばらくそうやって時間を潰していたら、モニターが明るくなり、今日の検査結果が映し出された。モニター上には全ての検査項目で正常であることが表示されており、これからの体調調整期間での注意事項とともに、5日後指定のゲートに向かいゲートの控室で軽宇宙服を装着して午前11時までに宇宙往還機に搭乗するよう指示されていた。
「これで一安心。あとはこれから出発までの5日間、部屋に届けられる食事を摂って、軽く運動して、小説を読み、ぐっすり寝るだけだ。退屈ではあるがこれも任務。この時期に外部の情報が入ってこないのはもどかしいがそれだけだ」
何事もなく5日間を隔離室で過ごしたヘルザは、宇宙任務用の作業服に着替え、無菌処理された手荷物を持ってゲートに向かった。
ゲート手前の控室で、宇宙服を着込んだヘルザはそのままゲートに向かい、宇宙往還機のハッチを抜けて指定の座席に座った。
今回の飛行では、宇宙往還機は3隻の母艦に順にドッキングして各々の母艦にインターセプター操縦士1名と母艦要員1名が入れ替わりの形で移乗し、母艦への補給物資を積んだカーゴと母艦での廃棄物資を積んだカーゴを交換することになる。従って往還機には正副操縦士のほか、インターセプター操縦士3名と母艦要員3名が搭乗している。
ヘルザはてっきりヘルマンと同じ往還機で上に上がりるものと思っていたのだが、ヘルザの乗った往還機にヘルマンの姿はなかった。
座席前のモニターが発射前のカウントダウンを表示し、数字がゼロを示したところで機内の振動が高まりヘルザの体は座席に押し付けられた。
斜面式の発射台からブースターによって加速発進した往還機は途中ブースターを切り離し高度800キロから1000キロの軌道上の母艦に向けて上昇を続け発射から40分後に最初の軌道母艦とドッキングし操縦士と母艦要員を各1名が交代した。同時に物資入りのカーゴと廃棄物のカーゴも交換された。
C3型軌道母艦の本体の基本形状は円柱で2カ所正6角柱型の膨らみ設けられており、その6角柱の6面がムスペル用の搭載ベイになっている。
往還機の次のドッキング先がヘルザが乗艦予定の母艦はゲルズ1だったため、40分後、往還機はゲルズ1とドッキングし、ヘルザと母艦要員1名が移乗し、ゲルズ1からは3カ月の任務を終えたインターセプター操縦士1名と母艦要員が往還機に移乗していった。最初の軌道母艦と同じく彼らの交代と同時に物資入りのカーゴと廃棄物のカーゴの交換が各々のカーゴベイを通じて行なわれている。
ゲルズ1の人員の交代とカーゴの交換作業を終えた往還機はドッキングベイから離れて人員と積み荷の最後の交換先である軌道母艦に向かって飛び去っていった。
ゲルズ1に乗艦したヘルザと母艦要員は艦内で艦長をはじめとする母艦要員たちに迎えられ簡単なあいさつの後、与えられた居室に向かった。
インターセプターの操縦士には士官操縦士しかいないため搭乗員には個室が与えられている。居室の広さは2×2メートル、奥行き3メートル。ベッドとキャビネット、小テーブル。他に簡易シャワーが付属している。シャワーはミストシャワーだが、体の汚れなどは問題なく流すことができる。
部屋に入り、軽宇宙服から軽作業服に着替えたヘルザは、手荷物をキャビネットに移し、待機体勢であるベッドに横になった。これから目立った仕事といえば指定時間に艦内のジムで2時間ほどのトレーニングするだけの3カ月が続くことになる。
部屋の中のモニターで地上のニュースも見ることができたが、数時間遅れな上に
西側との情勢は緊迫しており、何かあれば各自責任を果たさなければならないのだが上がってしまうとそんなことを忘れてしまうようで、艦のクルーはヘルザを含めて落ち着いて日々の業務を進めていた。
ヘルザが軌道母艦-ゲルズ1に乗艦して10日目。艦内に警報が鳴り響き、艦内各所のモニターに一級出撃待機命令と表示された。
居室で待機中のヘルザはベッドから飛び出し、他のインターセプター操縦士ともども各自に割り当てられたムスペルに案内の手すりを伝って向かった。
インターセプター操縦士はトレーニング時間とシャワー時以外は待機任務中であり、待機任務中は軽宇宙服を着用することが規定されている。
宇宙機であるインターセプターの場合、加速といってもそれほど急激なものではなく地表重力の2倍程度での加速である。また、宇宙機の機体は高機動力を持つ気層用の航空機と違い、急激な機動はできないためどちら方向であれ加速度が重力の3倍を超えることはない。従って、加圧スーツ的なものを着用する必要もない。
規則は規則ではあるが、
各操縦士はインターセプター搭載ベイ前の専用ロッカーから情報用ディスプレイが組み込まれた専用ヘルメットを手にムスリムに搭乗した。
操縦席で姿勢を整えたヘルザはシートベルトで体をしっかり固縛したあと、ヘルメットを装備してから機内から伸びた酸素パイプをヘルメットに接続し、同時に機体と有線接続されたヘルメットのディスプレイを見ながら発進準備を整えていった。
機内のパネルはオールグリーン。発進準備完了。
発進準備を終えた機から母艦の管制に発進準備完了を告げた。
これで、出撃待機命令が出撃命令に変更されれば12機のムスペルは2秒以内に出撃することができる。
機内で待機すること3分。待機命令が解除されるのか、出撃命令に変更されるのかじっと座席で待っていたところ、
「ゲルズ1-ムスペル06、敵軌道爆撃機撃破任務に出撃せよ。発進!」
オペレーターの声がヘルメット何に響き、機が母艦からリリースられた振動が伝わってきた。
ヘルザは一気に操縦桿を引き、ムスペルを加速した。
操縦席に押し空けられる中、ヘルメット内には計器表示の先に青い惑星が見えていた。
ヘルザのムスペル06の発進とほぼ同時に11機のムスペルが後部噴進ノズルから青白い推進剤の炎の尾を引いて母艦から飛び立っていった。各機はそれぞれ割り当てられた敵軌道爆撃機に向け加速していく。
ムスペルの兵装は、機関砲1門と小型噴進弾4基を装備する宇宙戦用ドール2機及び機首に2門の機関砲、自律型噴進弾4基、小型噴進弾8基。ドールが1機でも敵の迎撃網を突破し軌道爆撃機に突入できれば他の攻撃がたとえ失敗しても敵の軌道爆撃機の撃破は可能であると考えられている。
つまり、ヘルザの役目は自身が操縦するムスペルをおとりとしつつ、ドールを敵機まで送り届けることである。また、ムスペルが装備する自律型噴進弾は軌道爆撃機撃破用ではあるが、ムスペル本体と同じく実質的に敵の攻撃を集中させるためのおとりの意味合いが強い。
ドールが装備する小型噴進弾は自衛のためのものだが、ムスペルが装備する8基の小型噴進弾は、地上目標に向けて発射された敵の融合噴進弾を追跡破壊するためのものである。
ヘルザのムスペルは発進後、間をおかずレーダーが撃墜目標である敵軌道爆撃機を捉えており、目標である軌道爆撃機への攻撃可能圏への接近時間は6分。
6分という時間はそれほど長いわけではないが、短いわけでもない。
母艦のオペレータの声が耳元で聞こえてくる。母艦のオペレーターは3名でそれぞれが4機のムスペルを受け持っている。自分以外への指示もかすかに聞こえ、当然だが自分への指示は大きな音量で聞こえてくる。自分への指示に対して、ヘルザは返答しているのだが頭の中は別のことを考えていた。
――宇宙勤務を40歳まで勤め上げて帝都に屋敷を買って両親を呼び寄せたかった。
『ムスペル06、敵軌道爆撃機への攻撃可能圏に入った。ドールA、B、発進せよ』
「了解。ムスペル06-A、ムスペル06-B発進」
ヘルザの指先が素早く操作パネル上を動き2機のドールがムスペルからリリースされ、噴進エンジンが点火されムスペルから離れていった。
『ドール2機、発進確認した。引く続き自律型噴進弾を全弾発射せよ』
「ムスペル06、了解」
――もう3年も両親に会っていない。会っていればよかった。
次に4基の自律型噴進弾がリリースされた。自律型噴進弾は噴進ノズルから青白い炎を引いてムスペルを追い抜き、ドールを追うような形で敵軌道爆撃機に向かって行った。
ヘルザのヘルメット内のモニターにはその様子が映し出されているが、ヘルザは何も感じることはなかった。
――そういえば、ヘルマンは往還機に乗っていなかったが健康診断で引っかかったのだろうか? そうなると、ローテーションが狂うから今度帝都で飲めないな。あっ。そうか、もうそんな心配しても仕方ないんだった。
自律型噴進弾は推進剤の許す限り回避行動をとりながら、敵軌道爆撃機に向かって行くはずだが、どうしても最接近前には推進剤が空になり回避できないまま近接防御火器で撃ち落とされる。ドールはその動きと同期して、近接防御火器の時間的死角から軌道爆撃機に接近することになる。
――あいつはまだ地上にいるなら、不本意だろうな。その点わたしは上に上がっている時にこうなって幸運だった。
『ムスペル06、乱数回避モードに移行せよ。これにてムスペル06の誘導は終了する。ヘルザ、健闘を祈る』
「ムスペル06乱数回避モードに移行。オペ01、ハンス。ありがとう。さようなら」
ヘルザは、パネルを操作して機体を乱数回避モードに切り替えた。すでに機関砲の照準は敵軌道爆撃機を捉えており、射撃を開始している。
――これでエルザの結婚式、流れてしまうな。式はインペリアルホテルだったから、予約料も高かっただろうに。こういった場合は、違約金はどちらが払うんだろ? おっと、そんな心配もう無用だったな。
そこでヘルザの口元はわずかに上がった。
ドライゼン帝国のB47軌道爆撃機には16個の融合弾頭が束ねられた多弾頭核融合噴進弾レーヴァテインが42発搭載されている。戦略宇宙打撃軍総司令部から指令を受ければ、42基は一斉にあらかじめ設定された目標に向かって飛翔していき目標上空手前で16個の核弾頭を分離し、各核弾頭は目標上空で目標を包み込むように一斉に核エネルギーを解放する。
B47軌道爆撃機の防御兵装は、対噴進弾用自律型噴進弾6基。近距離噴進弾迎撃用機関砲2門と実体弾迎撃用単波長光線兵器4門。それに、2機の宇宙戦用ドールを搭載している。搭乗人員は機長以下6名。こちらは軌道母艦と異なり3カ月毎に6名全員がローテーション交代する。
西側の軌道爆撃機およびインターセプターも自国と同等の攻撃力及び防御力を有している。と考えられている。
既に敵軌道爆撃機から誘導噴進弾が地表に向けて発射されたため、ヘルザは誘導弾に向けて小型噴進弾を全弾発射した。その間ムスペルは乱数回避はできず、敵軌道爆撃機からの機関砲弾を機首に2発受けた。その被弾により、全2門の機関砲とも機首が吹き飛んでしまった。
操縦席のヘルザにもかなりの衝撃があり、いくつかのパネルが死んだがヘルザ自身は無傷だった。
ドールAからの信号も途絶え、そしてドールBからの信号も途絶えた途端前方の空間に真っ白な光の球が現れた。撃破確実であるがヘルザは特に感慨はなかった。
この時点でヘルザのムスペルの推進剤は残り3パーセントを切っていた。喪失したムスペルの機首には制動用スラスターも取り付けられていたがもちろんそれも喪失している。幸い機の左右に設けられたスラスターは生きているため機を180度回転させて機を減速することは可能だがそれにも推進剤は必要であり、残り3パーセントでは現在の機速を惑星からの脱出速度以下まで抑えることはできないことは、ヘルメット内に映った赤い表示が示している。
ヘルザはキャノピー越しではあるがヘルメット内の映像ではなく直接地表の状況が見えるよう地表に対して機が倒立するよう操作し、ムスペルが宇宙に飛び出していかないよう、後部噴進装置を再点火した。
すでに多くの誘導噴進弾が地表に降り注いでおり、ヘルザの見知った各大陸上の諸都市も敵味方の区別なく融合弾の爆発によって生じた巨大なキノコ雲に覆われていた。帝都コルダも例外ではない。
5分ほどでヘルザのムスペルは全ての推進剤を使い果たした。行動不能状態となったムスペルは
ヘルザはコントロールパネルの安全カバーを外して暗証番号を入力し、最後に数字キーの下にある赤いボタンを右手の親指で押し込み目を閉じた。
(完)
[あとがき]
なんか書き始めた理由があったんですが、書いてるうちに忘れてしまいました。
インターセプター 山口遊子 @wahaha7
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