第4話 貴方のことは、私が死なせません!!
「早いな。早速聞かせてもらおうか」
午前の執務を終わらせたカルロス王子が、机の上に置かれた魔道具に釘付けになっている。
「見たことの無い魔道具だが!!」
控えめに目を輝かせているカルロス王子だが、二度のループを経たセレンには喜んでいると伝わった。
「カルロス様に贈り物です。ただし!!」
さっそく手を伸ばしたカルロス王子が、動きを止める。
「このループを終わらせることができましたら、です」
「そ、それは、確かに」
セレンはこれまで起きたことを話した。
「二度目は、何が起こったのかわかりません。他の魔道具に細工がされたのか、別の方法だったのか。それならば、魔道具に細工をしているところを捕らえればいいのです」
もし他の魔道具に細工をされているとしたら、コレクションがたくさんありすぎて、絞りきれない。
「しかし、どうやって?」
「そのための、魔道具です」
セレンは机の上の魔道具を撫でて、不敵な笑みを浮かべた。
カルロス王子の隣で、湯沸かしの魔道具を修理している。
キャ! ジリリリリリ!!
悲鳴に続き、大きなベルの音が聞こえた。
扉の前で仁王立ちしていたバーナード様が飛び出していき、隣の部屋に駆け込む。
セレンとカルロス王子も駆け付けた。
そこで目にしたのは、金髪の令嬢が拘束されている姿だった。
けたたましい音をたてる魔道具を止める。細工をしようと触れば起動するようにしておいたのだ。
「これは何だ?」
そこには本来入っていないはずの小袋が入れられている。
バーナード様が武骨な指でつまみ上げると、ジャラジャラと金属音がした。
セレンも「これは何ですか」と魔方陣のかかれたクリスタルを取り出した。
光に透かせて魔方陣を解読する。
「兵器に使われるものですね。大砲や爆弾でしょうか」
「この金属片を入れて、爆発させれば、どうなるかわかるだろ!」
「ひっ!!」
エラーは、腰が抜けたように床にしゃがみこむ。
「わ、私が治すので、カルロス様には怪我はありません!!」
考えている以上の爆発が起こり、カルロス王子は命を落としている。
「治すからいい? これは、殺人未遂だ」
「えっ!! 私がお世話をすれば、カルロス王子も心を開いてくださるって!! 私を見て下さるって!!」
金髪を振り乱して金切り声を上げている。
「連れていけ!!」
カルロス王子の腹心の文官達が、大暴れする令嬢を人数で押さえつけ連行していった。
魔道具の状態を確認すると、本来のクリスタルが無くなっている。エラーが持っていってしまったのだろうか。
「うちの商品でよければ、使えそうなものを見繕って来ますね」
「私の魔道具好きも大概だが、セレン嬢の魔道具好きも大したもんだな」
笑うカルロス王子に、頬を膨らませた。
「私は、商売も好きですから」
物心ついたころには、魔道具工房を遊び場にしていた。
「あっ!!」
コロンと指輪が動いた。石の色も白に戻っている。ループは終わったらしい。
「セレン嬢。感謝する」
カルロス王子の出した手のひらに指輪を返そうとしたら、指輪ごと手を握られていた。
「魔道具師としてだけではなく、気の合う友人として付き合ってはくれないだろうか。同じ魔道具好きとして」
ナイフで指先を傷つけて、セレンの指に指輪を通したら、石にその血を擦り付けた。
途端に魔力の吸われる感覚があり、体勢を崩す。
「おっと」
カルロス王子に抱き上げられ、近くのソファーに優しくおろされた。
「あのぉ~」
非難の視線を向ければ、カルロス王子はいい笑顔を浮かべている。意地悪が成功した子供のようだ。
「君しかいない。離さないって言っただろ? 金属片はともかく、クリスタルをエラーが準備できたとは思えない。まだ狙われるだろうな」
「なぜ、私なんですか?」
「俺だって試してみたさ。バーナードも。魔力が足りなくて使えないんだよ。セレン嬢は、十分な魔力がある、だろ?」
魔力の多さが条件なら、治癒の魔道具を使えるエラー嬢だって……。
「まさか、エラー嬢にも指輪を試したんじゃ……」
セレンにしたように、甘い台詞で混乱させ、勘違いされたのでは?
「まさか、聖女とは名ばかりだよ。あの魔道具だって、何度も使える訳じゃない。セレン嬢なら、何度使える?」
「・・・・何度でしょう?」
魔力は使うことで増え、多い魔力は遺伝する。代々魔道具店を営んでいるシュタイン家は、誰もが魔力豊富だ。その中でも小さな頃から工房で魔力を使っていたセレンは、群を抜いていた。
黙ってしまったセレンに、カルロス王子は笑顔を向ける。
「そういうわけで、これからもよろしく」
腹黒王子の死に戻りに巻き込まれたので、全力でループを回避します 翠雨 @suiu11
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