AMY'S CHANNEL
「まったく……貴重な研究サンプルを全滅させるとは何事だね。この蛮族どもが」
「す、すみません……」
カルファーニアの研究室へと戻るやいなや、賞賛されるどころか嫌味を言われる羽目になるルイーザとダリエント。そのセリフはダリエントの事前予想から一字一句違わぬものであった。
「まあ私も鬼ではないからね。ルーキーのキミを責めるつもりはないよ。問題はキミだダリエント。何のためにこんな簡単な任務のお守りにつけたと思ってるんだい? ええ?」
「い、いやー。まさか一撃で全滅するとは思ってなくてですねー……ついつい眺めてました」
頭を掻きながら悪びれもせずに答えるダリエント。そんな彼を見てカルファーニアはため息をつく。
「はあ……まあとりあえずお疲れ様とだけ言っておくよ」
いかにも面倒くさそうな形だけのねぎらいの言葉をかけた後、カルファーニアは研究室の奥へと消えて行ってしまった。
取り残された二人はしばし顔を見合わせて困惑した後、それぞれの本来の授業へと戻るのであった。
***
「あ、ルー。お疲れー」
「ありがとう。アンジー」
ちょうど薬学の授業が終わり教室から出てきたアンジェラと合流したルイーザ。
「いやー、あの炎の輪の魔法すごかったねー。あれだけの悪魔を一瞬で片付けちゃうんだから」
「別に大したことじゃ……って、何で知ってるの?」
アンジェラは学校に残って薬学の授業を受けていたはずだ。なぜ東2番街での戦闘の様子を知っているのだろう?
「え? あ、ほ、ほら。エミちゃんねるで『注目のルーキーのデビュー戦 緊急生中継!』ってライブ配信やってたから……つい、ね……?」
エミちゃんねる。マジックフォン向け動画配信サイト「MagiTube」にて、モネータ寮2年生のエミリー・ジョヴァンナが運営しているチャンネル名だ。彼女の得意な「
「ああ、あの……。まあ、それはいいんだけど……。ちゃんとノートは取ってくれたの?」
「いやー……それがですねー……。ルーの勇姿を見届けるのについ夢中になっちゃって……。全然ノート取れませんでした。ごめんね」
首の後ろをかきながら、誤魔化すようにあははと笑うアンジェラ。
「あんたねぇ……。授業はちゃんと聞きなさいよ……」
「ごめんごめん。あ、そうだ。アーカイブも残ってるから、この後カフェテリアで一緒に観ない?」
歩きマジホでアーカイブ動画を検索するアンジェラ。
「え? 別にそんな自分の映像まじまじと観たくないんだけど……」
「そっかぁ……残念。ってあれ? またライブ配信やってるみたい。どれどれ? 『あのスーパールーキーの一日に密着! 排泄から入浴まで全編ノーカット生中継!』……なんかすごいことになってない……?」
アンジェラが読み上げた配信タイトルを聞き、ルイーザの背に身の気のよだつほどの悪寒が奔る。今こうしている間も撮られ続けているという事実に気が遠くなりそうだ。ましてやトイレやお風呂まで生中継された日には、もう二度と人前には出られない。
「ちょっと放送部の部室行ってくるわね。どうせ籠もってるでしょうから」
こうしてはいられない。プライバシーと人としての尊厳守るため、なんとしてでもこの暴挙を阻止しなくては。
「あ、待ってよルー」
ついて来ようとするアンジェラのことも振り返らず、ルイーザは一目散に巨悪の親玉が待つアジトへとその歩みを進めた。
車輪のエクソシスト ぼんげ @bonge
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。車輪のエクソシストの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます