これは聞いた話です。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 実はこの短編集はカクコン10短編に出すために急遽書き始めたもので、どうゴールするのかは決めておりませんでした。きりよく10話まで書くことができたのと、字数の上限が1万字とのことなので、このあたりで完結とさせていただこうと思います。

 それにしても10話分か。これをあと10セット書けば一人百物語できるな……と皮算用をしてしまうくらいにはサクサク書けたと思っていますが、おそらくネタが尽きて100話も書くことはできないでしょう。

 唐突ですが、私には霊感がありません。はっきりと幽霊が見えたこともなければ、ある場所に入るなり「ここ何かいる!」と感じたこともありません。ただめちゃくちゃ怖がりのくせに怖い話や不思議な話が大好きという、いわゆる怖がりの物好きです。

 私の友人の一人はそういうものに敏感らしく、時々というか結構頻繁にヘンなものを見たり感じたりするそうですが、私は零感なので、一緒にいて「店の奥のあの辺り何か近付きたくない感じだよね」とか「なんだか腕が痛い」とか言われても、「なるほど、わからん」となるだけで、正直そんなに楽しくはないです。

 でも、その友人から「今働いてるとこのバーにさ、時々出るんだよね。どんなのやと思う? あのねあのね、良いスーツ? タキシードかな? なんか古臭いけどピシーッとした格好した西洋人のおっちゃん。透けてるし、店内で気付いてる人いないし、全身じゃなくて足音だけが入ってくることもあるんよ。で、そいつが来た後はいっつもお客さんがワッと来て満員になるの。お客さん連れてきてるんやね」みたいな話を聞かせてもらった時には手を叩いて笑って喜びました。(酔ってたのもあります。)

 まあ友人みたいな人は、本人も話し慣れているのがわかるし、そもそも怪異に肯定的なので出てくる話はおもしろいけれどそれほど怖くないことが多いです。

 今回の短編中だと「ホワイトボードの向こう」のDさんなんかがそうですが、オカルト的なものを本人が信じていない場合の体験談はまた違う聞き味があります。何の流れだったか忘れてしまいましたが不思議な体験を話す流れになって、Dさんが「俺は幽霊とか見たことないし、信じてもないけど、でもそれっぽい体験といえば一度だけあって……」と淡々と話してくれたものが元になっています。Dさんはバリバリの理系なのもあって怪異の存在を信じていないのが普段から私にもわかっていましたから、そんな彼の話には「おお〜」となりました。普段そういうものを信じていない人が否定しきれずに残ってしまったものというのが良いなあと思ったので、今回書かせていただきました。

 よく百物語をすると100話目が終わった時に恐ろしいことが起こると言われますが、「怪を語れば怪至る」と言うやつなのか、あまりそういう話ばかり集めていると変なことが起こると言われていますね。今回は私個人のところには特に何も起きていませんが、この短編集を書いている間、私が勤めている職場の、上の階にある偉い人の部屋にある対人センサー(部屋の中で誰かがセンサーの前を横切ると秘書室に置かれているブザーが鳴る)が偉い人が出張中で誰もいないはずなのに何度か鳴って、秘書さんが首を傾げていたということはあったようです。私は実際にはその場に居合わせておりませんので、これも聞いた話です。

 さて、これでちょうど1万字です。

 お付き合いいただき、誠にありがとうございました。

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これは聞いた話です。 相馬みずき @souma-mizuki

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