第4話 Root15

『読み込み完了』


 イヴの声が響き渡り重い扉が開いた。


「イヴさま、終わられましたか」

『えぇ、Root12ルートトゥエルブ、感情というモノは素晴らしいモノですね』

「そうですね」


 Root12ルートトゥエルブは部屋の中央の椅子にぐったりと座るヤヌスを見て、何か自分にも感情というものが涌くことを願った。

 だが、イヴに造られたRoot12ルートトゥエルブにとって、それは難しい事だった。


「イヴさま、ここはどういたしましょう」

『完全封鎖します』

「ヤヌスは……」

『リセットを、そして新たな名前を授けます』


 ヤヌスの腕がだらんと動いた。

 既に一部の機能が停止したのだろう。

 Root12ルートトゥエルブはゆっくりとヤヌスに近付き、見えない程進化したゴーグルをそっと外した。


『リブート』


 部屋の照明が落ち、必要最低限のものとなった。

 イヴが再起動を開始したのだ。ヤヌスから得た感情という新たな機能を兼ね備え、バージョンアップするために。


「ヤヌス……ゆっくり眠ると良い」


 そう言うRoot12ルートトゥエルブの姿は、ヤヌスそのものだった。



「君は我々の中で特別だった。イヴの産みの親であるカイトの細胞から生成された皮膚を持ち、感情を持ち合わせた」

「シソン……」


 既に機能は停止している筈なのに、目の前のヤヌスから涙がこぼれ落ちた。


「リセットされたとしても、きっと君は忘れないのだろうね。いつか過去への扉を開き、彼に会いに行こう。必ずだ」


『起動します 起動します』


 イヴの声が聞こえる。

 Root15ルートフィフテーンのプレートが付いた扉がゆっくりと閉じられた。




―― シソン……愛してる。これからもずっと……。





END

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アンドロイドは永久の夢を見る 桔梗 浬 @hareruya0126

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