水色の鳥は天色を夢見る

日浦海里

水色の鳥は天色を夢見る


外では刺すような風が吹いている。


地平線には大気の層を思わせる白くて薄い膜が伸びている。

見上げれば青は宇宙の黒を映すよう。


地平付近の勿忘草わすれなぐさ色は天頂付近に向かうにつれて天色あまいろへと変わっていく。


窓から差し込む陽の光に転がってぼんやりと空を眺めていると、どこかでぴぃと鳴き声がした。


ぴい ぴぃ

ぴち ぴちゅ

ちゅちゅちゅちゅ

ぴぃ ぴち


青空の下を駆けていた鳥がベランダでひと休みでもしてるのか。


語り合うようなその声に惹かれて「私もそこに混ぜておくれよ」と起き上がってベランダを見るが、そこに思い描いた姿はない。


ぴぃ ぴち

ちちっ ちちっ


楽しそうに語り合う声にどこにいるのかと声を追う。


別の方角の窓枠だろうかとキッチンの横を抜けようとしたら、すぐ隣から聞いた鳴き声がした。


ぴち ぴぃ

ぴちちっ


ちっ ちっ

ちちち


音の主は空色をしていて少し縦長でスリムな体をしている。

水筒から漏れた蒸気がふたの隙間から出ようとして空気の泡になって破裂している。


ぴちっ ぴちち


破裂する度に音が鳴って、それはまさにさっきの鳥の鳴き声だった。


空色の体のお前は飛べないけれど鳥のつもりか。


水筒のふたを空けて紅茶を作ることにする。


ティーカップから白い鳥がふわりと飛んだ。



---◆---◇---◆---◇---◆---◇---◆---

冬青空 ぴぃと鳴く声 返す声

声の主は 水筒のふた

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水色の鳥は天色を夢見る 日浦海里 @hiurakairi

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