白色のスミレ編

白色のスミレ編第1話

私は1人の男の子を見つめる。


「だからさー!彼女に浮気されてそうでさ……!」

「大丈夫だろ!なにか好物を買ってあげれば?スイーツとかさ。」


最近よく視界に入ってくるこの人。名前は分からないけど、人気者らしくいつも周りに誰かいるこの人を見ているきっかけはたまたま辺りを見渡した時に、目が笑ってなくて怖かったから。いつもこの顔だし楽しくないのかな?



「るーるる、」


今日は用事があってバスに乗っていて、つい好きな曲なので鼻歌を歌っている。

私、星宮 花梨(ほしのみや かりん)は元々怖がりだったが、とある事情によりさらに酷くなり、人間不信になってしまった。友達も少なくいつも1人で怯えているが誰にも関わらないなら意外と1人行動も好き。店員さんと話す時とか困るけどね。


「次はー。〇〇。〇〇。」


バスの停車ボタンを押して止まったらカードをスキャンしてバスから降りる。


「こっちかな?」

人の多い道は嫌だけど通らないといけない道だからビクビクしながら通る。


「ポス。」


「!」


目の前の女の人がなにかを落とした。拾って見るとハンカチで名前がローマ字で縫ってある。柄も可愛らしいし大切だよね。でも、話しかけられない!


「あ、あ、」


どんどん進んでいく人の後を追って肩を叩こうとするけど、失礼かな?とか考えながらオロオロする。


「あの!」


なんとか振り絞った声は小さかったが私が気になってたのかすぐに振り向いてくれた。


「どうしましたか?」


「あ、急にすみません。

あの、これ。」


対応が運良く怒られない素敵なお姉さんで良かった。私は手に持ってるハンカチを返す。


「あ!ありがとうございます!落としてましたか?」


「あ、えと、」


まさか質問されるとは思わず。

普通に『はい!落ちてました』って言えばいいのに!そう思えば思うほど体が震える。


「こくこく。」


待ってくれてるけど、口が開けないから首を縦に振って返事をする。


「そうですか!ありがとうございました!」


お姉さんは歩いていってしまった。


「ふう。」


良かった。私は一安心して歩き出す。



「うーん。」


目的地の近くのホームセンターに寄ったけど、理想な花が無いな。他に近くに店無いしなー。毎年、墓参りに行ってるのに未だに花屋さん分からないし。


「わあ。」


通りかかった綺麗なお姉さんは手に綺麗な墓参り用の花を持っていた。あんなのが欲しいけど『どこに売ってましたか?』とか聞けないしな。



「あの、もしかして花を探してますか?」


長い間探していると、さっきの綺麗な花を持ったお姉さんに声をかけれる。


「あ、えと、」


つい言葉が出てこなくて目を泳がせる。


「大丈夫です。ゆっくり話してください。」


お姉さんの向日葵のような笑みにガチガチに固まっていた肩の力が抜ける。


「ありがとう、ございます……。

あの、私、墓参りの花を探してて。」


「そうなんですね!でも、そんな感じの花中々無さそうですね。」


お姉さんは花を見ながら考えてくれてる。なんか、昔助けてくれたお姉さんを思い出すな。あだ名があったけど忘れたなー。


「あ、もし良ければ私の店に来ませんか?」


店?

私が疑問に思っていると、お姉さんはフフフと余裕な大人みたいに笑っている。


「でも、用事があった、……んですよね?」


合ってるか分からなくて恐る恐る聞く。


「ええ、でも大丈夫よ!私も墓参りに行くの。その時の道具を買いに来たけどもう買えたから帰るところ。」


「お店って……。」


「私の店は花屋さんよ。主には違う用途だけど、この花も自分のお店で作ったの。」


花屋さん!毎年、墓参りに行くから花屋さん行きたかったけど勇気が出なかったんだよね。このお姉さんなら大丈夫かな。


「……お願い、します。」


「ええ!行きましょう!」


私たちは歩いてお姉さんのお店へ向かった。



「いらっしゃいませ!」


綺麗なお店。それにお花の爽やかないい匂いがする。


「こちらに座って。私はここの花屋をひとりで経営してるのよ。」


花屋さんと読んだ方がいいのかな?花屋さんは私と反対の席に座って、どうぞ?と促す。私は甘えて座る。


「それで、今日は墓参りの花ですよね?ちょうど自分のために素敵なお花を手に入れたんです!」


花屋さんは奥へ入り花を探してくれてるみたい。ここは素敵だな。花も沢山で、静かだし。今度からここで花を買おうかな!


「お待たせしました。こんな感じはどうですか?」


手に持ってきたのは白いカーネーション。


「白いカーネーションは、

あなたへの愛情は生きてる。

という花言葉もあるんですよ!

あなたのさっきの花を探してる様子を見てるととても大切な方なのかな?と思いまして!」


私は心が洗われるような気持ちで受け取る。


「……これ、買います。」


白いカーネーションだけの、シンプルな束だけどこの花言葉は私の気持ちを表してくれるようでとても気に入った。


「はい!ぜひお届けください!」


「……お姉さんも、墓参り行ってらっしゃい。」

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あなたへ1つの花をおくります。 桜の一夜 @sakura_itiyo

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