本当に詰んでいます。悶える猫(元夫)ちゃん。

最近、亡くなった後に転生する物語は定番となりました。その中には動物に転生するという作品も多くあります。異世界ではなく現実世界で転生して元の家族と再会する作品も多くあります。

しかし現実世界の動物に転生して元の家族と再会する作品は意外と少ないです。
読めば理由が分かります。
人間社会に手出しができず、心中に苦悩のみが積み重なりますから。

題名に嘘偽りありません。主人公は一応は一家の大黒柱であったところを事故で世を去り、不可抗力により妻を放り出してしまいました。妻は世間の荒波に晒されます。猫としてよみがえり元妻に引き取られても、会話も手助けもできません。本当に人生という将棋は詰んでいて抗う術がありません。猫(元夫)ちゃんは悶えるばかり。

こんなはずじゃなかった! その思いを何度胸中で叫べば終わるのか。

苦しい? こんなの転生物じゃない? そう、それが本作の主眼です。

作者様はワナビ繋がりの仲間から、人間関係の泥沼を描かせたら右に出る人はいないと目されるお人です。本作でも本領発揮。いや、まだ軽いかも、作者への入門編としてちょうどいいかな、くらいでして……

ただし苦しむだけで終わらせないのが作者様の真骨頂。結末まできちりと描くため読者の期待を裏切ることがありません。当レビューを書いている2024年12月29日は第二六話まで公開されているところですが、ここからキチンと結末まで導いていくはずです。

まあ、見ていてご覧なさい。
作中人物に手出しできない、猫に転生した気分になって。