エピローグ

スーパーを出ると、すっかり晴れ間が覗いていたからか、思わず傘を忘れていきそうになる。


「そういえば」


何かあったような。

何か大事なことがあったと思い出して、ポンと手を叩いた。

今日は娘が給食を食べたあとすぐに下校する日だった。


まだ走るほどではないものの、あまりのんびりしているとお昼ごはんを食べ損ねてしまいそうではある。

娘だけならまだ問題ないのだが、友だちも一緒にやってきそうな予感がする。

最近そういう日が徐々に増えてきているから、油断ならない。


そんなことを考えながら、ほんの少しだけ軽くなった足をほんの少し広げ、競歩くらいの速度で歩きだした。

しかし、ほんのちょこっとだけ留まると「そうだ」と思い出してスマホを取り出す。


それから連絡先一覧を出した。

母親の死をキッカケに絶縁しますとは言っていたものの、なんとなく消せずにいた父親の連絡先を消すことにした。


枷を外したからか、なんだか空を飛んで帰ってしまえそうな勢いだ。

澄んだ空気が冬の到来の近いことを知らせる。

寒さで冷えてしまう前に帰ろう。


わたしは今にも走り出しそうな足取りで、家へと向かっていった。


<完>

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雨上がりの帰路 佐伯明理 @SaekiAkari

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