あ、これ、亀岡に絶対行きたくなるやつだ


 亀岡を舞台にしたあやかしストーリーです。

 幼い頃神隠しにあった大好きな臣くんを探して、ストイックに生きることを決めた志乃さんは自分を戒めるために身体を鍛え、合気道家として活動している。
 そんな志乃さんがひょんなことから出会った狐面で顔を半分かくした青年キリヤくん。彼は、半分人間で半分あやかしの、「化け暮らし」であるという。
 そして、彼のパンケーキのお店で志乃さんは、亀岡に暮らす様々な化け暮らしたちと交流することになる。

 とにかく志乃さんがキリヤくんに毎回振る舞われるパンケーキが美味しそう。じっさいに食べられないのが残念。そして、パンケーキと一口に言っても、こんなに種類があるのかと驚かされます。甘〜いトッピングや練り込まれた亀岡産のフルーツや野菜。とろとろの蜜がかかり、くるんとのった生クリームとバターの香り。フォークを入れるとふんわりと焼き上がった湯気が立ち上る。
 まさに至福の刻。

 舞台となる亀岡も魅力的な街で、高台にある「霧のテラス」や「秋桜公園」、バルーンフェスティバル、保津川下り、そして物語の重要なポイントともなるトロッコ列車。

 不思議と霧が多いといわれる亀岡とその周辺地域には、妖怪も多いらしい。算盤小僧、つるべ落とし、火無しのお龍。
 これら亀岡の魅力をぎゅっと詰め込んだ本作。物語はクライマックスへ向けて、神隠しにあった臣くんの真実へ迫ってゆきます。そして、物語の行方を追う内に、あなたはきっと亀岡へ旅してみたいと思うにちがいないでしょう。

その他のおすすめレビュー

雲江斬太さんの他のおすすめレビュー484