終末は長い

 僕の部屋の中に、嫌な空気が流れている。

「ねえ、何があったの?母さんに教えて。火鶴君は?」

「火鶴ならいるじゃんずっと。後ろにいるよ?」

 そう言うと母は振り返った。おかしそうな顔をした。

「火鶴君のお母さん。葬式にも来ずに行方不明だって。妹さんだけ置いてかれて、かわいそうに」

「僕のことはほっといてよ。もう良いから。忘れて?」

「また来るから」

 そう言って母は部屋を後にした。この所夢と現実が曖昧になっている。今だってどっちなのかよく分からない。火鶴と函館を歩いていると思えば、汚い部屋の中でうずくまっていることがある。次は誰に感染したのだろう。


「楽?もう朝だぞ」

「ああ、ありがとう。ちょっと変な夢を見ていたみたいだ」

 北海道の山の中、僕たちはひっそりとテントの中で暮らしている。どこかのタイミングで海外にでも行かなきゃな。そのためにはお金が必要だ。今日はバイトの面接を受けに行く。2人で160万ぐらいだろうか。そのためには2年ぐらいはバレずにいる必要がありそうだ。ってあれ? さっきまで自分の部屋に居たはずなのに。おかしいな。最近ずっと変な夢を見てる気がする。


 部屋に嫌な笑い声が充満した。

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永遠に君を願おう のりぬるのれん @norito0202

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