終章

「さぁてと。今日もお仕事お仕事!」

俺は呟くと鍵を握って歩き出す。


俺は山田幸四郎(56歳)


駅のコインロッカーの警備員をしている。


別にこれといった大きな報酬もあるわけじゃないし、愛せるような人もいない。


永遠の独身警備員。


まぁ、それも別に良いんだけどね。


「ねぇ!ねぇ!おじさん!!」


「ん?どうした?」


俺が駅の改札口のちょっと前を歩いていると、どこからともなく、水色のランドルセルを背負っている女の子…レイが駆け寄ってきた。


「どうした?レイちゃん。」


「おじさんおじさん!!あのね!あのね!さっき!レイがお母さんの荷物とりにいこぉとおもってね!コインロッカーにいったんだけど!なんか、赤いのがながれてたの!」


「あ、赤いの…?」


嫌な予感がした。


俺が若い時に先輩にある話を聞いたことがあった。

その時の先輩の顔が脳裏に浮かぶ。


まさか…!!!


俺はまさかと思い、レイの自然に合わせるように、しゃがみ込み、

「ち、ちなみにどこのロッカー?」


「ん!」

レイは、西口の方を指さす。


西口なら…ロッカーは一つだけ!!!!


「ちょ、ちょっと待っててね!」


俺はもしものことがあるかもと、レイをその場に置いて、走り出す。



【西口、コインロッカー】



そして。

俺が例のロッカーに付くと、そこには、一つだけ閉じられた蓋のしたから赤い液体の漏れるロッカー。


マスターキーを取り出す。


手が震える。


俺は思い切って鍵を差し込む。


「あ…あぁ!!!!!!」


そこに入っていたのは、荷物でも、なんでもなく、歪んだ愛の形だった。









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