女神の摂理

インキュバスの地下迷宮

　誠（まこと）に、申（もう）し訳（わけ）ありませんが‥‥未（いま）だに、ダンジョン探索（たんさく）のデビュー日（び）です。

　午後（ごご）４時（じ）、いつもの宿屋（やどや）の食堂（しょくどう）で、噂（うわさ）を耳（みみ）にします。

　何（なん）でも、この冒険島（ぼうけんじま）で‥‥自由（りべら）さんが、娼婦（しょうふ）として貢献（こうけん）しすぎた所為（せい）で、アダルト地下迷宮（ちかめいきゅう）が出現（しゅつげん）したらしいです。

　面白（おもしろ）がって、把取（はとる）さまが言（い）い出（だ）します。

「１８禁（きん）ダンジョンだってさ、行（い）ってみようよ♪」

「却下（きゃっか）、自由が、泣（な）き叫（さけ）ぶと、可哀想（かわいそ）だから」

「なんで、わたしが、犯（おか）される前提（ぜんてい）？」

　安里（あざと）ちゃんの『可哀想』に、自由さんが抗議（こうぎ）の疑問形（ぎもんけい）です。

　ですが、賑（にぎ）やかに話（はな）している内（うち）に、安里ちゃんまでが賛同（さんどう）して‥‥結局（けっきょく）、行（い）くことに成（な）りました。

　こうして、ダンジョン到着（とうちゃく）の午後８時から、数分（すうふん）後（ご）‥‥

　自由たち女子（じょし）３名（めい）は、インキュバス３人（にん）と交戦（こうせん）しています。インキュバスの見（み）た目（め）は‥‥戦（たたか）いづらい事（こと）に、王子（おうじ）さまの集団（しゅうだん）です。

「挑発（ちょうはつ）からのシールド突撃（とつげき）！」

　把取さまが、盾（たて）を構（かま）えたまま、インキュバスの一人（ひとり）に、体当（たいあ）たりします。

　ところが、そのインキュバスは、それを受（う）け止（と）めながら、把取に囁（ささや）きます。

「お前（まえ）の想（おも）いを、受（う）け止（と）められるのは、俺（おれ）だけだ」

「じゃあ、剣（けん）も、受け止めな！」

　把取さまは、筋肉（きんにく）美形（びけい）インキュバスに、剣で斬（き）り掛（か）かりました。

　少（すこ）し離（はな）れた場所（ばしょ）では、自由さんが、舞（ま）うように双剣（そうけん）を、繰（く）り出しています。

　艶（あで）やかで、美（うつく）しい舞いです。

「はぁ‥‥っ！」

　自由さんは、気合（きあい）と共（とも）に、剣を空中（くうちゅう）に飛（と）ばして、念動（ねんどう）操作（そうさ）しつつも、徒手（としゅ）格闘（かくとう）戦（せん）を始（はじ）めます。力強（ちからづよ）く、華（はな）やかに、パンチとキックの連携（れんけい）攻撃（こうげき）です。

「ふっ、飛来（ひらい）する剣（けん）が、後（うし）ろからも攻撃（こうげき）してくるか‥‥

　しかし、当（あ）たらなければ、意味（いみ）など無（な）い！」

　自由さんの相手（あいて）は、情熱系（じょうねつけい）インキュバスのようです。

　ちなみに、安里ちゃんは、情（なさ）け容赦（ようしゃ）なく、魔法（まほう）の火炎（かえん）攻撃です。

「お嬢（じょう）さん、火遊（ひあそ）びは、恋（こい）だけにしようよ。

　‥‥顔（かお）を、狙（ねら）わないでくれるかな？」

　こちらのインキュバスは、正統（せいとう）なる美形です。

　２０数分後、自由たちが勝利（しょうり）して、激（はげ）しい戦（たたか）いが終（お）わりました。

　ところが、インキュバスの一人が、消（き）えることなく、跪（ひざまづ）いています。

「我（わ）が名（な）は、キュバスのアドル‥‥仲間（なかま）に加（くわ）えて欲（ほ）しい！」

　アドル（先程（さきほど）の情熱系インキュバス）は、自由さんに、目（め）で訴（うった）えています。

「悪（わる）い人じゃ無（な）いみたいだから、良（い）いよ。

　それより、怪我（けが）とか、大丈夫（だいじょうぶ）？」

　自由さんが、お人好（ひとよ）しを発動（はつどう）しました。

　しかも、お節介（せっかい）にも、アドルの体調（たいちょう）を、気遣（きづか）っています。

　情熱の王子さま‥‥もとい、キュバスのアドルが、仲間になりました。