第16話

「透空、遅かったわね。……その子、誰?」


リビングに立つ母の視線は、私の隣にいるリベラに向けられていた。今日は遅くなるって言ってたのに。母の鋭い目は、リベラの存在を正面から捉えている。


「……お邪魔してます。」


リベラは少しだけ頭を下げた。


「透空、ちょっと説明してくれる?」


母の声は冷静さが保たれているけど、内心の困惑が伝わってくる。

私は覚悟を決めて、リベラと一緒にリビングへ足を踏み入れた。


「お母さん、この子はリベラ。私の友達……なんだけど、ちょっと訳があって、今うちに泊めてるの。」


声が震えないように必死で平静を装いながら、言葉を紡いだ。

母は腕を組みながら私たちをじっと見つめている。


「訳があって、ってどういうこと?親御さんはどうしてるの?どうしてうちに勝手に泊めてるの?」


想定していた質問。だけど、一瞬だけ答えに詰まる。けれど、この場で嘘を重ねるのは、きっとリベラにとっても良くない。私は深呼吸して、正直に話すことにした。


「……お母さん、変だって思うかもしれないけど、聞いてほしい。この子、普通の子じゃないんだ。リベラは、異世界から来たの。」


その言葉に母は一瞬だけ目を見開いた。静寂がリビングを包む。


「異世界……って?」


母は信じられないという表情で私を見ている。無理もない。でも、私は続けた。


「私だって最初は信じられなかった。でも、リベラは本当にそういう存在なの。私が偶然儀式みたいなことをして、彼女を呼び出しちゃったんだ。」


母は目を細めながら、リベラに視線を移す。


「それで……リベラさん、あなたはどうしてうちにいるの?」


リベラは少しだけ口元に笑みを浮かべた。


「理由は単純ですよ。この世界には、私の居場所がないんです。」


淡々とした口調だったが、その中に少しだけ含まれる寂しさを私は感じた。

母はしばらく黙っていたけれど、やがて深く息をついた。


「正直、何を言っているのか理解できない部分も多いわ。でも、あなたたちがお互いのことを守りたいって思ってるのは伝わる。」


その言葉に、私は思わずホッとする。そして母はリベラに向き直った。


「リベラさん。あなたが透空にとって大切な存在なら、私もあなたを否定するつもりはないわ。でも、いくつかルールを決めさせてもらう。」


母の言葉にリベラは静かに頷き、微笑んだ。その微笑みはいつも以上に柔らかく見えた。

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エレフセリア〜ネットで調べた都市伝説を試したら成功しちゃった話〜 夢咲リベラ @Yumesaki_Ribera

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