第15話
私は呆然と彼女を見る。リベラは鏡をじっと見たまま、質問の答えをくれた。
「ちょっと抑えただけだよ。怪異が暴れると透空が怖がるからね。」
リベラの手のひらが鏡の表面をそっと撫でる。その仕草に、怪異がさらに静まり返ったのがわかる。
「さて、君は話が通じるタイプかな?」
リベラが柔らかい声で怪異に話しかける。すると、鏡の中で揺れていた赤い目がじわりと動きを取り戻し、彼女の言葉に反応するように微かに揺れた。
私はその様子を見て、自分の理解が追いついていないことを痛感した。
怪異と対話するなんて――そんなことが本当にできるの?
「リベラ…怪異って、そんなに普通に話せるものなの……?」
思わず尋ねると、リベラは振り返らずに答えた。
「普通って訳じゃないよ。でも、僕はこういうのに慣れてるから。」
私には、その言葉がやけに重く感じられた。
鏡の中の怪異は、リベラにだけ聞こえる声で何かを呟いているらしい。私はそれが全く理解できない。ただ、リベラが真剣な表情で頷いているのがわかった。
やがて彼女は軽く息を吐き、静かに鏡の前に座り込んだ。
「大丈夫。君を傷つけたりしない。」
その言葉に反応するように、怪異の赤い目がゆっくりと消えていく。
「リベラ、今の……何を言ってたの?」
私は震える声で尋ねた。
彼女は一瞬だけ私を見つめたあと、小さく笑って立ち上がる。
「ただ迷子になっただけだってさ。誰かに呼ばれて、ここに閉じ込められてたみたい。」
「それで、助けられたって?」
リベラはその問いに答えず、ただ
「さ、帰ろうか」
と私を促す。
その背中を見つめながら、私は彼女の正体に対する興味と、不安が一層深まった。
夜の学校から帰ってきて玄関のドアを開けると、母の声が聞こえた。
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