第14話

噂の教室にたどり着くと、リベラは再びピッキング道具を取り出した。


「ふむ、ここも鍵がかかってるね。」


慣れた手つきで作業を始めたリベラを見ながら、私は思わず尋ねた。


「ねぇリベラ、ピッキングなんて、どこで覚えたの?」


「まあ、色々あったからさ」


彼女は適当に答えるだけで、具体的なことは言わない。でも、それがいつものリベラらしくて、少し面白く思えた。


鍵が開く音がして、リベラが扉を押し開ける。中は昼間と変わらない教室のはずなのに、夜の闇の中ではどこか不気味に見えた。


「……さて、赤い目の女さんは本当にいるのかな?」


リベラがからかうように笑いながら言った。私は緊張を隠しながら、鏡の前に立った。


「……きっと、何かが起きるはずだよ」


そう言いながら、私は胸の鼓動を抑えるように深呼吸をした。背後にいるリベラの視線を感じながら、私は呪文を唱え始めた。



「――来た。」



呪文を唱え終えたとき、リベラが静かに呟いた声で背筋が凍った。

私たちの目の前の鏡に、赤い光がじんわりと浮かび上がる。それは最初ぼんやりとした光だったが、やがて形を成し、瞳のように見え始めた。


「リ、リベラ……!」



私は反射的に彼女の袖を掴む。鏡の中に映るそれ――赤い目は、まるでこちらを見透かすようにじっと動かない。

リベラは私に目もくれず、鏡の中をじっと見つめていた。何かを観察しているような視線だ。


「なるほどね……」



そう呟くと、リベラは鏡に手を伸ばした。その動きがあまりにも自然で、私は止める間もなく声を漏らしてしまう。



「な、何してるの! 危ないよ!」


だが彼女は私の言葉に耳を貸さず、鏡の中の女に向かって冷ややかな声で言い放った。


「おとなしくして。」


次の瞬間、空気がぐっと重くなった。見えない力が広がり、赤い目の女が鏡の中で押しつぶされるように動きを止める。それはまるで、彼女が何かで怪異を封じたようだった。


「リベラ……今の、何?」

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