阿波道中膝栗毛

マイペース七瀬

第1話

 2024年11月になっている。

 今年は、もう寒くなって良いはずなのに、暖かい日がまだまだ続く。

 変な天候になっている。

 40代後半になっている会社員のシンイチは、東京から、新幹線で関西まで来た。そして、新大阪駅から大阪駅まで出て、そこから、高速バスで、徳島へ向かった。最近、シンイチは、ずっと会社で仕事をしていて、それで、気分転換に、東京から関西を経由して、徳島へ向かった。

 阪急梅田駅のバスターミナルから、高速バスで、徳島へ向かった。

 そして、高速バスは、阪神高速道路3号神戸線に入って、大阪市内から淀川を越えて、兵庫県の尼崎市、西宮市の甲子園、そして、芦屋市、神戸市内を通って、バスは、明石市から、道路は、アップダウンがありながら、青くなった海を一望しながら、本州から淡路島へ向かった。

 空は晴れており、そして、シンイチは、高速バスの車窓から、瀬戸内海を行き来する船をみながら、淡路島を通った。淡路島の畑を観ていたら、「日本は、まだまだこんな風に農業をしている地域があるのか」とも感じていた。

 最近、シンイチは、恋人のサヤカと別れた。

 サヤカから「シンイチと一緒にいても、つまらない」と言われた。それも、そうで、シンイチは、いつもスマホで音楽しか聴かないからだ。ただ、シンイチは、40代後半になっているが、サヤカは、まだ30歳である。

 シンイチは、食品メーカーに勤務しているが、最近、関西の大阪出身のサヤカと遅まきながら春を迎えたのに、いきなり、別れを告げれて困った。

 サヤカは、美人で、ダンスが好きで、そして、玉ねぎのサラダが好きだった。

 そして、淡路島と言われたら、玉ねぎが特産だったのではないかと思った。ただ、シンイチは、彼女と一緒に徳島へ旅行に行きたかったのだが、一人で行くことにした。あんな女、自己中心的だとも思った。

 ただ、シンイチだって、学生時代は、軽音楽をしていて、歌っては踊っていた。ところが、色んな都合で、今は会社員をしている。

 40代後半になっているが、それまでは、ずっと下積みだった。

 東京を離れて、北海道やら東北地方、北陸地方、東海地方、近畿地方、四国地方、中国地方、九州地方と転勤もした。

 後輩で、上司になったのもいた。

 ところが、シンイチは、サヤカと二人で企画したショッピングモールでのイベントで仲が良くなり、そして、LINE交換もした。

 だが、サヤカは、ある時、「シンイチ、いつも、<ごめんなさい>なんて言うの、みっともないから止めなさい」と言われて、口論になった。

 何故か、サヤカだって、昨日から、会社を休んでいる。

 ああ、オレにも、彼女ができたが、もう、できないのか、と思った。

 もう、あんな彼女、できないだろう。

 そう思っていた。

 一緒に「ぷよぷよテトリス」やら「ぷよぷよクエスト」のゲームをし、カラオケで、いきものがかりやミスチルを何時間も歌い、ディズニーランドへ行き、ユニバへ行ったり、横浜の街を散策したのになぁと思った。

 最近、会社の中で、会っても口を利いていなかった。

 大阪を出た高速バスは、淡路島から鳴門海峡を渡った。

 この時、漫画『NARUTO』を思い出した。

 いきものがかり『ブルーバード』のアニソンを思い出した。

 緑色の自然が、綺麗に目に焼き付いた。

 日本は、広いなぁと思った。

 今日は、晴れていると思った。夏目漱石『三四郎』を思い出した。

 高速バスは、徳島県鳴門市から、徳島市内へ向かった。そして、地方へ行くと、「看板がでかい」と思った。

 それでも、東京や大阪にはないのんびりした雰囲気がまた良かった。そして、JR徳島駅に、高速バスは、到着した。

 そのまま、シンイチは、ホテルへチェックインして、徳島駅周辺を散策した。

 その時、シンイチは、阿波踊り会館へ向かった。

 スマホでも知っていたけど、記念に阿波踊り会館で、公演を観ようと思った。14時に開演になった、地元の踊り連が、着物を着て踊った。そして、阿波踊りには、男踊りと女踊りがあると知った。

 そして、その場で立って踊りをしましょう、となった。

 結構、面白いじゃんとシンイチは、感じた。

 楽しい、と。

 最後に、「みんなで輪になって踊りましょう」と司会の人が言った。

 シンイチは、こんなところは、陽気だから、ステージでみんなと踊った。

 そして、数分踊った後、終わった。

 そして、公演が終わったあと、「シンイチ!」と聞き覚えがある声がした。

 「え」

 とシンイチは、思った。

 そこに、東京で別れたと思ったサヤカが、若い女性と3名で並んでいた。

「サヤカ、どうして、こっちに来ているの?」

「このコたち、私の四国の従姉妹だよ」

「ふーん」

「シンイチ」

「何?」

「踊っていたでしょう」

「うん」

「かっこよかった」

 その日は、シンイチは、サヤカたちと、夜の街で、カラオケに行き、次の日は、鳴門の渦潮を観に行ったらしい。そして、そのままシンイチは、サヤカと会社を休んで、四国をドライブしたらしい。<完>

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阿波道中膝栗毛 マイペース七瀬 @simichi0505

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