【再改稿版】オープニングの変更点の解説


 まずは【旧版】と【改稿版】を1つに統合した意図を説明させて頂きます。


 この2つに頂いたご意見なのですが、【旧版】派の方たちは口を揃えて「【改稿版】はユーキが悪役に見えてしまう」という事を問題視しておられました。

 対して【改稿版】派の方たちから頂いたお言葉は「【改稿版】の方が動きがあって良い」という意見です。


 全く別のシーンになっていますので好みが別れるのも、問題点が別なのも、ある意味当然ですね。

 1点だけ「まだインパクトが足りない」という意見もございました。


 「動きがあって良い」という意見はありがたいのですが、それ以外は由々しき問題です。

 主人公であるユーキの好感が下がってしまうのは問題ですし、動きを見せてもインパクトが足りないのも問題です。

 これを解決する為に思いついたのが「2つのシーンを統合する」という方法でした。


 【旧版】では「ユーキがアレクの気持ちを察する」という描写になっていますので、心の優しさを表現できてはいると思います。

 そこが前提にあれば【改稿版】の描写も「ユーキにも何か事情があるのだろう」と察して貰えるのでは、という狙いです。


 また、【旧版】で「互いの事を想いながらも別れる」というシーンの後に、「敵対して戦う」という【改稿版】のシーンが来る事によりギャップ、つまりインパクトが生まれるのでは、という狙いもあります。


 あとは「ユーキとアレクの対比」もありますね。

 【旧版】ではアレクが、【改稿版】ではユーキが、それぞれ互いに本心を隠して行動しています。

 ですが2人の性格は真反対なので、「アレクの嘘はユーキにあっさりバレる」のに対して、「ユーキの嘘はアレクにはバレない」という違いがあります。

 ただ、この点は「読者が察してくれれば良いが、察してくれなくても問題はない」と考えましたので、明確に描写はしませんでした。



 【旧版】と【改稿版】を1つに合わせた理由の説明を終えましたので、ここからは細かい変更点の解説となります。



・「ユーキ、残念だけどキミとはここでお別れだ」


「……は? なに言ってんだアレク?」


 ここはクライテリオン帝国の帝都。そこにある宿屋の一室。

 左頬に傷跡のある茶髪の青年・ユーキの部屋に訪れた金髪碧眼のアレクは少しの逡巡しゅんじゅんの後に、いつもとは違う固い口調でそう言った。

        ↓

「ユーキ、残念だけどキミとはここでお別れだ」


「……は? なに言ってんだアレク?」


 クライテリオン帝国の帝都。そこにある宿屋の一室。

 自室に訪れたアレクの突然の宣言に、ユーキは目を丸くして問い返した。



 元々の文章は、梶野カメムシさまから「悪文」とのダメ出しを喰らっており、更に「この(地の文の)説明はアレクの発言を受けてのものなので、直前がユーキの台詞になっているのは違和感があります」との指摘も受けました。

 梶野カメムシさまより改善案として、「ユーキの台詞を地の文の後に移動する」という提案も受けましたが、「地の文の方を変更」という形としました。


 こうした理由は、「一番最初の文章なので、ユーキとアレクの名前をまず伝えたい」というものがあったからです。




・2人は幼馴染であり、その付き合いは10年にもなる。まだ10代の2人にとっては、誇張ではなく半生を共にした知己ちきと言えるだろう。

 更に2人はただの親友ではなく「とある目的」を果たすために共に冒険者となり旅に出た、まさしくいつにした関係だった。……少なくともユーキはそう思っていた。


 その親友の口から出てきた突然の決別の言葉に、ユーキは理解が及ばず素っ頓狂な声を上げたのだった。

        ↓

 共に「願いを叶えるため」に冒険者となり旅を続けてきたアレクは、8年もの付き合いになる親友だ。それは、これからもずっと変わらない……少なくともユーキはそう思っていた。



 ダラダラと長い文章を圧縮。

 「知己」「軌を一にする」という、馴染みの薄い単語を削除。

 設定変更により「10年」を「8年」に。

 【改稿版】と統合したので、表記揺れを防ぐ為に「目的」を「願い」に。

 「その親友の~」は、必要ない一文なのでカット。(梶野カメムシさまの指摘)




・ユーキが納得した理由は聞けないが……それでもアレクはこれだけは聞かずにはいられなかった。


「ユーキ、これからどうするつもりだい?」


「さてな、お前さんの言う通りシュアーブに帰るのもいいが……。ま、ゆっくりと考えるさ。アレクたちはすぐに出発か?」


「ぁ、うん……。2、3日中には帝都を発つ予定だよ。でも……」


 ユーキはすでに吹っ切れた様子で、普段と変わらない口調で話してくる。

 逆にアレクは動揺を隠せない。その動揺が、一瞬アレクの口調をいつものものに戻し、更に心中の不安が僅かながら言葉に漏れ出てしまう。


 他の仲間たちの事、これからの旅の事、そしてユーキの事……。

 しかし、その先の言葉は出てこず、出す訳にもいかず、ユーキも聞いてはこない。

        ↓

 言葉を呑む仕草を見たユーキは、アレクの言葉を待っている。

 だが何も言えるはずもなく、辛うじて出たのは別れの言葉だった。



 アレクの動揺と不安を示すシーンを大幅にカット。

 無くても話が繋がる事と、(ここで特に)梶野カメムシさまから「アレク株が暴落」と言われた為。

 次の台詞に繋げる為の文章だけを追加。




・この日アレクは、10年来の親友のユーキとたもとを分かった。

 聖歴1366年の春。冬の寒さも去り、実に過ごしやすい良い天気の日だった。

        ↓

 この日アレクは、親友のユーキとたもとを分かった。

 聖歴1364年の春。快晴のはずの空に、雨が降り始めた――。



 「10年来の」をカット。

 設定変更により「1366年」から「1364年」に。


 天気の件ですが、梶野カメムシさまより「暗喩だと思った」「違うのは残念。せっかくだから暗喩で表現してみてはどうか?」とのアドバイスを頂き、挑戦。

 暗喩ではないものも含みますが、意味合いとしては3つ。


1.2人の心象

 まぁ、そのままですね。特にアレクは涙を流していますので、涙雨という感じでしょうか。

2.「転機」

 天気雨には「浄化」や「転機」といった意味合いがあるらしく、「2人の転機」という感じで。

3.【改稿版】に繋がる流れの演出

 【改稿版】部分の舞台を「雨天」に変更しましたので、【旧版】のラストに雨を降らせる事で繋がりを演出しました。




・「別れの日から2年後――。」の一文を追加。


 2つのオープニングを統合したので、繋げる為の一文を追加。




煙炎えんえんが包む、街の中。

 親友同士だった2人は対峙していた――。

        ↓

 降りすさぶ雨と、煙炎えんえんが包む街の中。

 親友同士だった2人は対峙していた――。


 上記の説明の通り、舞台に雨を降らせました。

 理由としては、アタオカしき様より「周囲の物の壊れ方、人の反応を利用して相対的に派手にしたいところ」といったご意見を頂きまして、「2人の動き以外で表現する」というヒントを頂きました。


 ですが(設定・ストーリー的な)諸事情により、「物を派手に壊す」という描写は相応しくないと思い、また「他のキャラを登場させると冗長になってしまう」事を懸念したので、「雨で雰囲気を強化する」という方向性にしました。

 派手にはなっていませんが、個人的には良くなったと感じています。

(以下、雨の描写が増えていますが解説は省略します)




・聖歴1366年――。

 この日、長年を共に過ごした親友は互いに闘う事となった。

        ↓

 聖歴1366年――。

 この日、別れた親友は再び出会い、互いに闘う事となった。


 【旧版】からの流れを引き継ぐ為、説明も倣う形に変更。




 変更点は以上となります。

 文字数は少し増えていますが、削れる部分をカットして【旧版】1949文字、【改稿版】736文字を合計した【再改稿版】が2092文字なので許容内かと思います。


 2つのエピソードを統合するという安直な考えでしたが、いかがでしたでしょうか?

 これ以降は改稿を繰り返すとしてもここには載せませんので、皆様にお尋ねするのはこれで最後とさせて頂きます。


 最後にもう1度、感謝を述べさせてください。

 沢山のご意見・ご指摘・アドバイスを頂きまして、誠にありがとうございました。

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