4  GW

 ぼくらの大学だが、GWは普通に休みだった。

 東京の大学に行った友人やつらのSNSで知ったが、連休に通常通りの講義があるそうだ。

「山口は、ゴールデンウィークGW、家に帰るのが」

 寮の夕飯の時、石川に聞かれた。

「いや。飛行機、込みそうだし。飛び石連休だし」

「フェリーで帰ったら、ええやろ」

 宮崎さんが割り込んできた。

「名古屋から苫小牧とまこまいまで、フェリー出るやん。それとも、敦賀つるがから小樽おたるか」


「うっわ。フェリーに乗るまでと降りてからが、なまらめっちゃ、大変でないですか」

 船で北海道に到達しようなどと、ぼくは考えたこともなかった。

「少なくとも、車持ってる人だ。フェリー使う利点があるのって」


「だよな。車の免許、欲しいな」

 石川が身をのり出してきた。

「石川も、まだ免許取ってなかったんか」

 私大の試験本番は2月だから、ぼくは、免許どころじゃなかった。

「ああ、これがら」

「大学生協で教習所のパンフレット、もらってこよ」

「長期休みに合宿免許で取ったら、ええねん。教習の地をどこでも(どの県の教習所になってもよい)にして申し込んだら、冬休みに北陸に合宿免許に行く羽目になったやつを知ってる」

「北陸……、雪……、大阪の人には、きついんでない」

 ぼくは、北海道の雪道に残るわだちと、ホワイトアウトを思い出した。


「夏休みに南の島で合宿免許て、どないや?」


 宮崎さんは、何気に遠くへ遠くへ、ぼくらを誘導しようとしてないか。




 ――というような近況を、北海道にいる友人に携帯のラインで送った。


『なかなか充実してるな』と返ってきた。『こっちは、やっと桜が咲いた』

 北海道神宮の桜の画像が添えられていた。


 ぼくの送った画像は、ハチワレ猫とか、たこ焼きとか、そんなんばっかだった。

 今度は何か、心が洗われるような画像を彼に送ろう。






    〈道民少年、大阪へ行く・春の巻 了〉





※ホワイトアウト 雪や雲などによって視界が白一色となり

 方向、高度、地形の起伏が識別不能となる現象

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道民少年、大阪へ行く・春の巻 ミコト楚良 @mm_sora_mm

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