第31話 出動

「さ、俺たちが悪逆非道な連中だという誤解も解けたところで」

「失礼いたしました、イザク様。ドクター・シシス様」


平謝りに平謝りを繰り返し、2人からやっとお許しを得た。ドクター・シシスは笑ってくれたけど、イザクさんは引きずって引きずって大変だった。気持ちも分かるけれど。

勘違いというのは恐ろしい。みんな、くれぐれも気をつけて。「彼は私といても楽しくない。きっと、他にお似合いの女の子がいる」とかなんとか言って、急に別れを切り出すヒロインいるけど、ダメだよ本当に。

そんなこと、彼は言ってませんからね! 勘違い(思い込み?)は危険です。


「準備もできたし、早速、出動だ」

「了解!」


イザクさんの声がけに、私より先に返事した者がいる。バレントくんだ。今回も護衛として参加してくれるみたい。心強いけど、また通信途切れたらイヤだな……。

私の心中を察してか、イザクさんが言う。


「安心しろ、大丈夫だ。通信機器のチェックも事前に済んでいる。問題ない」


前回も無論、していたが。そう続けられて、逆に腹が決まった。向こうにいた頃から、技術は進化しても『絶対』はなかった。災害があれば通信は途切れたし、ウイルスのせいでデータが吹っ飛ぶことだってあった。通信に頼りすぎちゃダメだ。

頼れるのは、己の力だけ!


「いい面構えだ。思いっきりやってこい」

「はいっ」


激励を受けて、私は地下から出る。目的地はリコゼット学園の中庭。1人佇むルース王子に接触、ギャップ萌えで好感度アップだ!

耳につけた機器から、バレントくんの声がする。


「のえみさん、背中はお任せください。必ずあなたをお守りします」

「うん、ありがとう。よろしくね」


1人じゃない。みんながいる。きっと任務を成功させて、胸張って家に帰ろう。

一歩ずつ地面を踏みしめて、彼の元へ向かう。身に纏った紫色のドレス。その裾を持ち上げ、優雅に歩く。不思議と緊張はしていなかった。この瞬間、私は確かにレゾイア様だった。


ザザッ。通信が入る。


「のえみ、のえみ。聞こえるか」

「はい、しっかり聞こえます。何かありました?」

「ああ、1番重要なことを伝え忘れていたんだ」


おいおいおい。思わず、右手が動く。なんでやねん、とツッコミを入れるように。


「作戦コード01、『放課後、中庭にて』開始」


誰にともなく宣言し、彼は続ける。


「今回は真正面からぶつかっていけ。『謝罪』という武器を使ってな」

「謝罪……」

「そうだ。まずは誠心誠意、謝る。頭を下げる。そこから真人間は始まる」


真人間って。


「レゾイア様の悪事、今回はお茶目〜で済まされるレベルだ。ルース王子は生きているし」


最後の一文はやけに強調されていた。まだ根に持っている。


「要するに、謝れば許されるレベルだ。難易度は低い」


幸いなことに目撃者はいない。ルース王子は学園のシャワールームで墨を落とし、事なきを得た。


「いいか、のえみ。謝って、それから笑顔だぞ。お前の力で、下がった好感度を上げるんだ」

「はい! 必ずや任務を達成してみせます」


時は満ちた。さあ、行こう!

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2024年12月19日 19:00 毎日 19:00

激チョロ乙女ゲームの世界で、推し悪役令嬢の身代わりになりました 砥石 莞次 @or0ka_i6ion__

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