爽やかほんわか青年とぶっきらぼうな若者とのバディものです。
天空都市と地上都市が分たれた世界、互いに自由には行き来できない二つの地。しかしこの二人はその間を飛んで、地上に降りたい人々を運ぶ「運び屋」。
なぜそんなことが可能なのか。それは二人の過去と大いに関わっています。
その過去の出来事はこのレビューでなく本編でご覧いただきたいのですが……
依頼人たちに確認されるのは、本当に地上行きを後悔しないか、という一点。
私たちも過去を振り返れば、身体を引き裂かれると思うほど苦しみを感じる時もあるでしょう。
でも過去には戻れません。前を向いて行かなくてはいけない。
一人一人の依頼人を彼らと共に見送る時、改めて思うのです。
そんなふうにバディ二人に励まされ、教えられながら読み進む読者として、物語において気になるのは、「彼ら」の未来。
一体、どんな運命へ進んでいくのか。
タイトルを噛み締めながら読んでいただきたい優れた作品です。
レビュアーはほのぼの温和ながら、芯の強さが見えるタイクウさんが好きです、とこっそり告白しておきます。
依頼人の「思い」が込められた、大切な品物。そして、地上へ向かう人。それを運び守るのが、彼ら二人の役目。
そのために彼らは、はるか数千メートル先の、地上へと飛び降りる。
かつて、人々の憧れの土地であった天空都市「彩雲」は、突如機械を食い散らす異形「天空鬼」によって地上との交流を絶たれた。
それから十年。数年前に行われた武装降下作戦は失敗に終わったと思われていたが、実は生還者がいた。
そして現在、彼らは運び屋『藍銅鉱(アズライト)』を経営している。
『Make a choice without regret(後悔なき選択を)』
危険でしかない空の下。どう変化しているかわからない地上。そこは、依頼人が望む世界ではないかもしれない。今までの生活の方がよかったと嘆くかもしれない。どちらにも愛着があり、どちらを捨てても後悔するかもしれない。
「『後悔』って、余程どうしようもないことじゃない限り、その先の行動によっては、切り替えたり絶ち切ったりできるものだと思うんだ」
『藍銅鉱(アズライト)』の相方で、後悔してしまう性格の持ち主のタイクウは、あるものを選び、あるものを捨てた。
「どうせ後悔すんなら、やったことで後悔しろ!」
もう一人の『藍銅鉱(アズライト)』であるヒダカは、自分の弱さによって引き起こされたことを今も後悔した。
彼らのもとに届く依頼は、はたして…?
空とはどんな所だろう。限りなく広く青く冷たくて。
誰しもが一度は自由にそこを飛んでみたい。私も思ったことがある。
地上に縫い止められた人間では決して行くことができない場所。憧れの地。
その『空』をもしも、忌むものとして憎まなければならなくなったとしたら。
主人公のタイクウとヒダカ。幼馴染の二人は天空都市『彩雲』で、密かに地上へ降りることを願う人達を運ぶ仕事をしている。
だが空には忌むべき敵が出て、飛行機や人間を襲い、地上への行く手を阻みます。
だが二人は毅然として戦います。まさに身一つで彼らを屠るヒダカの戦闘力はすごいし、タイクウのサポートもばっちりです。
空中戦の描写も二つあります。一つは地上に降りる時のスピード感。
二つ目は地上から天空都市へ昇る時の緊張感。この戦闘シーンの書き分けがすごくて、行きは良い良い、帰りは怖いという言葉がまさにそう。
人間ドラマもご注目下さい。ヒダカとタイクウが何故、運び屋をすることになったのか。
そこにはとても重い過去や悲しい出来事があるのですが、そこで抱いた『後悔』をもう二度としないように。
二人は思いを込めて今日も空を飛びます。
この作品を読まなかったという選択を、後悔しないように。
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