『観覧車点検バイト』
常闇の霊夜
廻
「……金がない」
しまった……。推しの新衣装が出たからって課金しすぎてしまった……!このままだと俺の母さんにブッ殺される……!くそっせめて二体同時に出なけりゃこうはならなかったんだがな!
「仕方ねぇ、バイトするかぁ~」
◇
……今回やってきたバイトはさびれた遊園地。それも夜中の22時。なんて嫌な雰囲気なのだ……。
「えー今回集まっていただいた五名のみなさん、今回やっていただく仕事は簡単です!」
「あちらに廻っている観覧車がありますでしょ?アレ、かごが下に来た時にスパナでゴンゴンたたいてください!」
「あ、でも同じスパナは使ってはいけませんので。毎回こちらの休憩室に戻っていただきますようお願いします。六時になりましたら迎えに来ますので、それまでは毎回よろしくお願いします」
……またなんとも言えないバイトに来ちまったな。なんで遊園地に観覧車だけがあるんだ?ジェットコースターは?メリーゴーランドは?ないの?
「じゃー俺行ってきますわ」
「え、えぇ行ってきなさい」
まぁ仕事って言われちゃしょうがねぇな……。観覧車は~っと。
「……上が見えねぇ」
いやいやいや。どんだけ高いんですかこの観覧車。真下から見上げてるから上が見えないのか?全く嫌になるぜホント。とかなんとか思ってたら最初のかごがやってきたな。
「オラッ!!」
うーん普通。普通だ。特に問題がある訳でもない。殴った感触も鉄そのものだ。
「さてスパナを戻しに行くか」
……これを延々とやり続けるのか、夜が明けるまで……。はぁ、四人で来てなかったら地獄だぞ……。それにコレ、洗わないといけないんだとよ。スパナ。
「おうお疲れ。洗うからこっちによこせ」
「ハイハイ……。ふあぁ」
「なんだ眠いのか?」
「えぇまぁ。少々眠いですけど大丈夫です」
「そんなこと言ってると続かないぜ?いったん寝たらどうだ」
「いえ、遠慮なく……」
その後もガンガンする作業は続いた。代り映えしない光景に一瞬おかしくなるかもしれなかった。
「はぁ……ってこのスパナ前使った奴じゃねぇか!」
ウッカリ違うスパナを持って行った時は血の気が引いたね。幸い何故か未使用スパナが落ちていたから安心だったけども。そうこう繰り返していると変なかごを発見した。
「……赤くね?」
妙に肉肉しいというか……。バラ肉で巻かれたかごと言うか。今まで見たことのない物だったから慌てて使用済みスパナを投げつけちまった。
「うおっ落ちたぁ?!」
やっべぇ器物損壊罪だよ……。と思ったが確認しに行ったら無くなっていた。観覧車を見れば赤いかごは廻っていた。……途中かごのガラスから手や目が伸びていた気がするが気のせい。気のせいである。
「ハァ……。オッサン一人とこんな仕事とか滅入るわホント」
普通は五人~六人くらいでやる作業だろうが!くそぉ……。オッサンは洗ってばっかりだしハラ立つぜ!嫌がらせにさっきの赤かごスパナ持って行ってやろう。バッチいからスパナ同士で挟んで……っと。
「オッサンこれ使用済みな」
「え?おぉ」
はー辛い。でもあと一時間だし頑張るぞーっと。
ほーれガンガン。おーらガンガン。オラオラガンガン……。
「狂うわ!くそっ一人の時点で帰るべきだったなぁ!」
とはいえもうあと五分……。クフフこれが終わったら金がいっぱいもらえるんだ……
ケテ…
「ん?」
ダ…テ シネ
コロス…コロス… ダセ
ニクイニクイニクイ ヤダ
「……かごから?」
チクショウ コドモオロセ
カンケイナイダロ オマエガハイレ
シネ ミガワリ オマエガハイレ
「……誰だよかごに落書きしてるのは」
オマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエ
「うるせーーーーーーーッ!スパナでも食らってやがれボケがッ!」
ヤメ
「あっ壊しちゃった!」
やっべぇ~!完全にスパナぶっ刺さってんじゃ~ん!
あー俺し~らねっと!もう知らん知らん見ないフリ~!
「あっ六時だ!早く迎えに来いってんだ!」
「終わりましたか」
「あのさぁ~。俺が言うのもなんだけど今度からもっと人数を増やしてくんねぇ~?俺一人ワンオペはつらいよ~」
「検討させていただきます」
「絶対しない奴じゃん!それより報酬よ報酬!現ナマで持ってきたんでしょーね!?」
「こちら、22時から6時までの八時間×二万円の16万円でございます」
「うっひょ~ッ!一晩稼ぐだけでこの報酬!ワンオペでも許せちゃうね!」
「ちなみに……もう一度このバイトをしますか?」
「誰がするかこんなバイト!もう来ないからね~」
◇
翌朝。別の推し衣装が出たので早速コンビニに向かった。うひょひょ幸い金はあるんでねぇ!ケッケッケこのタイミングで良かったぜ!
「とりあえず三万円課金するだろ……?」
「おい聞いたかよ、なんかどっかの病院の院長が撲殺されたってよ」
「マジで?」
「マジだよネットニュースに上がってんだから」
へー。おぉ確かにやってるやってる。
えーっと?何々。
『○○病院の院長、謎の死!
警察によると昨晩0時以降6時以前の間に○○病院の院長がスパナのような物で殴り殺されたとのことです。警察は殺人事件としてこの一件を……』
ハイハイまー良くある話だなぁ!どーせどっかの誰かに恨み買ってたんだろ。
「……そう言えば、あの観覧車があった場所ってその○○病院ってところのすぐ近くだったような気が……」
……気のせいだな!うん!なんか知らんけど滅茶苦茶その○○病院で長生きしてたジジババ患者どもが一斉に死にまくってるけど!知らねーな!そして深入りするつもりもない。
「ま、俺にとっちゃ無償石で推しの新衣装さえ出てくれればなんでもいいんだけどよ」
お、ラッキー!
『観覧車点検バイト』 常闇の霊夜 @kakinatireiya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます