あの鐘を鳴らしたんはお前か？

笑って許してやんなよ

　お前……あの鐘を鳴らしたんか。

　まさかお前、いやアンタが、街の人々にかけられた眠りの呪いを解くことができる唯一の手段、あの目覚めの鐘を鳴らした英雄だったとはな。

　鐘を守る邪悪な魔物がウヨウヨいたって話だったが、よく無事だったな。

　女だてらにやるじゃねえか、見直したよ。

　え？　魔物全員殴り飛ばして川（道頓堀）に投げ捨てたって？　すげえなアンタ。どうやったんだい？

　リズムに乗りながら暴力？　R＆B？

　よくわかんねえけど、まあアンタが凄いのは分かったよ。

　まあ飲みなよ、うちの店最高のリザーブ。俺からのおごりだ。

　おお、いい飲みっぷりだねえ。どんどんやりなよ。

　……アンタよく飲むな。

　いやいいよ、どんどん飲んで。鐘を鳴らした街の恩人だからな。

　でもアンタだんだん目が座ってきてないかい？

　うわっ！びっくりした。急に立ち上がるもんだから……

　アンタ背がでけえな、2メートルくらいあんのか？

　おい！ちょっと！

　なんで俺にキスしようとするんだよ！やめろ！

　酔うとキスするタイプなのかアンタ。

　え？何だって？

　今の姿は魔女に呪いをかけられた姿だって？

　それでキスを……

　元々は都会の隅の小さなアパートですねたよな暮らし方をしてたのか。

　そうか、そりゃ気の毒だったね。

　でも本当に俺みたいな酒場の親父のキスで呪いが解けるのかい？

　まあ、やってみなきゃ分らんよな。そうだよな。

　じゃあ目え瞑ってるから、好きにしてくれ。

　ぬおっ――！

　飲み込まれるかと思った……

　！　アンタ！　体が光に包まれてきてるよ！

　解けたのか！　呪いが！　キスで！

　――うん。解けたみたいだな。

　身長もだいぶ……

　伸びたね。250センチくらい？　

　でかいね。

　え？　ずっとここに居座るの？

　それは……困――らないです！　はい！

　困りません！　なので首を絞めないでください！　おろして！

　ハァーッ、ハァーッ、ハァー。

　死ぬかと思った……

　え？　私一生あなたの下僕ですか？

　そんな……嫌――じゃないです！　はい！

　嫌じゃないです！　なので頭を握りつぶさないでください！　たすけて！

　はい？　私の名前？

　カーツです。

　カーツ・マータ。

　以後よろしくお願いします。ハイ。