ショート・ショートは話の中身が短いことは当然として、それと同時にオチの切れ味も求められる。
そういう意味で本作はタイトルに「ショート・ショート」を冠するだけあって、ラストの一文の切れ味の良さで勝負する純度の高いショート・ショートと言えるだろう。
本作で語られるのはいずれも400字にも満たないホラー短編。一見淡々とした語り口でありながら、最後の一文で一気に読者を恐怖させる落差がすごい。オチを読んだ後に見直すと真意がわかるタイトルのつけ方も素晴らしい。
どの話も粒ぞろいなのだが、個人的にはごく普通の日常の風景を描きながらも最後の二行で一気にアクセルを踏み込んでくる「第5話 私だけ」と、田舎にある祠というネットでは良く擦られる題材を不気味にひねった「第7話 1個と言わずに何個でも」がタイトルの見事さもあって大変印象的だった。
暑さで寝苦しい夜に、ベッドの上でスマホで読んだりすると少しだけ涼しげな気分になれるかもしれない。その後ぐっすり眠れるかは別として……。
(「サクッと読める! ショートショートの世界!」4選/文=柿崎憲)