魔界下り 闇落ちさせられた聖女の下へ向かう勇者

白雪花房

勇者としてではなく

 マグマが煮えたぎる危険な領域を進む青年――彼は没落ぼつらくした貴族のような風貌ふうぼうだった。一丁前に前髪をm字にセットしておきながら服の生地はくすみ、裾はギザギザに破れている。右手に握り込んだ剣だけが、ギラギラと輝いていた。


 果たして、自分のやることは正しいのか、過去になにをするべきだったのか。

 ぐるぐると考え込みながらも足は止めない。


 駆け抜けようとした矢先、前方に影がぬっと現れ、立体となった。

「地上のとがが集いし世界に、聖者の居場所はない」

 反射的に身構える。

「俺は自分が聖者だとは思ってないがな」

 両手剣のまっすぐな切っ先を向けると、影が膨張ぼうちょうし、夜のように広がった。

 迎え撃ち、包み込む。口では『出ていけ』と促しながら、逃がす気はない。

「お前に構ってる暇はない――おや?」

 一撃を放つと影が解け、現れたのは骸骨がいこつだった。ゴシックなドレスをまとい頭にはアンティーク調のティアラが光る。

 ゴーストクイーンかと思い見入ると、白い剣が眼前に迫った。

「おっと」

 骨を用いた武具だ。

 とっさに距離を取り、体勢を整える。

「いい機会だ。無事に戻れたら茶でもしないか?」

 片手を差し出すと、向こうで歯ぎしりが鳴った。

「死ぬ前から軟派なんぱな男は嫌いだった。さっさときりに溶けてしまいなさい」

「そうはいかない! 俺はあの人と会わなきゃいけないんだ!」

 つばり合いをしながら、声を張り上げ、主張する。

「浮気者が。本命にも嫌われてしまえばよかったのに」

 骸骨がいこつ剣士は鼻で笑う。

 相手は探し人が誰か知っているようだった。

「あの方はすでに我々の王。あなたごときになにができる?」

 挑発的な言葉。

 だまって剣で押し切る。

 硬質こうしつな音が鳴った。

 間髪を入れずに剣を振り下ろす。

 目の前に聖なる光がはじけた。ほっそりとしたシルエットが青ざめた色に包まれ、消えていく。

「この期に及んで救えると思っているなんて、傲慢ごうまんね」

 ノイズ混じりの声を耳で拾う。

 彼女は自ら消えたのか、手応えがなかった。

 妙に知った口ぶりだったのも気になる。

「なんで俺が傲慢ごうまんだって、知ってんだ?」


 青年の脳内に過去の記憶が流れ込む。


 陽光が降り注ぐ草原を歩く影。マントをなびかせ聖剣をたずさえた勇者のそばには、純白のローブをまとった若い女が付き添う。

 聖女セレスだ。りんとした顔立ちに淡い色の瞳。勇者にふさわしい美しい容姿に、花の匂い。彼女の前でならどんな力だって出せ、かっこつけていられた。

「君は俺が守るよ。なにがあっても」

 調子に乗って歯の浮く台詞せりふをこぼした。

 魔王を相手にも勇猛ゆうもうに立ち向かう。剣でバッサリと切り裂くと、黒いシルエットは崩れ落ちた。

「やっぱり俺が最強なんだよなぁ!」

 勇者はおごり高ぶり、聖女がそばで支えていてくれていたことにも、気づかない。今思えばなんて恵まれた環境。彼にとっては二度と手に入らない宝物だった。


 しみじみと振り返りながら狭い通路をくぐり抜け、最奥へ足を踏み入れる。

 湿しめっぽい闇の向こうにはかろうじて人の形が見えた。はりつけになった女にいばらが絡みつき、顔だけが白く浮き出る。かたくなに目を閉じた様は彫刻ちょうこくのようだった。

 彼女を視界にとらえ、心に光が差し込む。

 やっと会えた。ずっと、会いたかった。

「セレス! 俺だよ、バロンだよ!」

 口を大きく開けて呼びかけるも、彼女は反応を示さなかった。

「今、助けてやる。さあ、外へ出るんだ」

 明るい声を出し、駆け出そうとして。

「やめて」

 シャープな声が低く聞こえた。

 バロンはぬかるみにはまったように、足を止める。

 重たいまつ毛におおわれたまぶたが開いた。過去のセレスよりも切れ長で、暗い色。最後に見た彼女の目も絶望にかげっていた。


 彼は思い出す、事の顛末てんまつを。


「この戦いが終わったら結婚しよう」

 今思えばフラグだったのだろう。

 魔王を倒した後、バロンとセレスは用済みとなった。天より与えられし力は平和になった世において、脅威きょういとなる。国は討伐隊を派遣はけんした。

 二人で動けば目立つ。三叉路にて顔を見合わせ、うなずいた。

「必ず迎えに行くからな!」

 森へ向かって駆け出した勇者を、聖女はじっと見送った。

 彼は各地の宿を巡り、遊び回る。のんきに酒場に出入りし、っ払う青年。

 表でセレスが注目を引き、守っていたことすら知らずに。


 聖女は勇者よりも圧倒的な力を持ち、むしろ強すぎるのが問題だった。


遠慮えんりょしないで。もっと素直になって」

「散々こき使っておきながら裏切った政府を許せない。そうでしょう?」

復讐ふくしゅうしましょう。そうしましょう」


 セレスは邪教団体に目をつけられ、まつり上げられた。

 催眠術さいみんじゅつの要領で操られ、正気を失う。

 彼女は新たなの王として君臨した。


 世間は瞬く間に大騒ぎ。勇者も即座に現地に駆けつける。

 しかばねが降り積もった広場には恐ろしい魔女。全身をおおうローブはすみ色に染まり、鳥についばまれたようにボロボロだった。

 暗雲を背に立つ女はもう、かつてのセレスではない。

 感情すらなく殺戮さつりくの限りを尽くす様に畏怖いふを覚え、バロンは唖然あぜんと立ち尽くした。


 政府は全勢力を投入し、戦いは激化する。


「これは参った。我々も世界軍と共に戦いましょう」


 彼女はたった一人残された。

 最後は封印によっての世界へ叩き落される。

 あっけない幕切れ。むなしい結末をだまって見届けた。


 曇天どんてんを背負い一人。空っぽな平原を彷徨さまよう。

 けものおそわれ、野盗やとうにも遭った。

 体が重くてまともに戦えず、金品を盗まれること、多数。

 聖女がいなくなって初めて気づく。勇者が強かったのは彼女の力あってのもの。セレスがそばにいなければ戦士としてすら、振る舞えない。


 バロンは殺風景な宿に隠れ潜む。普段は冒険者として、あるときはヒモとして。

 彼の時間は停まったまま。まるで天に呪われたかのよう。無為むいに時を消費し気が付くと、数百年が経っていた。


「今更合わせる顔があったなんて」

 冷めた声で現実に戻る。

 聖女の白い顔は仮面を被ったようだった。


 彼女の言う通りこちらに相対する資格はない。

 胸の空白を埋めるために、女をとっかえひっかえしながら、各地を転々とする。たくさんのヒトを惑わし、傷付けた。最低な自分に吐き気がする。


 じんわりとくさっていく日々で、ある出会いを経験した。

 路地裏でボロ衣をまとった娘が転がっていたので、拾ってかくまう。

 きれいな服を着せ、整えた。

 世話をし食事を分け与えると、親鳥になった気分になる。誰かのために生きていると思うだけで、心が生き返った。


 おだやかな日々は長くは続かない。

 バンッ。

 荒い音を立てて貸宿の戸が開き、物々しいスーツ姿がずらっと並んだ。


「その娘を渡してもらおう」

「それは邪教集団の生き残りだ」

「その者をかばう意味はないはずだ」


 顔を引きつらせるバロンのかたわらで、娘は運命を受け入れ、目を伏せる。

 連行される小さな背を、ただ見送った。


 罪人は処刑台へ上がる。

 暗転した空の下、ひらめく銀色。斬撃の音が響く。

 むわっと刺激的な臭いが飛び散った。

「うおおおお!」

 甲高い喝采かっさいに埋もれ、青年は青ざめ、後ずさる。

 首が落ち、血溜まりに沈んだ。赤い眼球が斜めに動く。ギロリ。臆病おくびょうな男を責め立てるように感じた。


 なにを考えている。彼女は罪人だ。

 何度言い聞かせても、気持ちは晴れない。

 首を下げ、拳を握り込んだ。尖った爪が皮膚ひふに食い込み、するどい傷みが突き抜ける。


 目の奥での色がらめいた。ほむらを透かして討伐隊に囲まれたセレスの姿が、映り込む。彼女は封印石の黒い光に吸い込まれ、消えていった。

 数百年前となにも変わらない。

 なにが勇者だ。

 影に落ちくぼんだ顔で、二対の目がギラリと光る。


 もう、足踏みなんてしていられらない。


ちかうよ。今度こそだ」


 数百年前と同じ格好でバロンは魔界の入口へと、足を踏み入れた。



 今一度、彼女と向き合う。

「あなたにとって私はその他大勢の内の一人に過ぎない。そうでしょう?」

「俺は最初から君しか見てなかった」

 セレスは静かに首を横に振る。

「ここに、あなたの知る聖女はいないわ」

 一瞬、青年の動きが停まる。

「私はたくさんの人を殺したの。今は世界の敵。解放すれば災いが落ちるでしょう」

 抑揚よくようなく、他人事のように告げる。

 バロンは眉尻を下げ、唇を曲げた。

「それじゃあ誰も幸せにならないんだよ」

 納得できない。してたまるか。


 いばらをかきわけ前に進む。彼女に絡みつくものを乱暴に切りいた。途切れたところからまたたく間に修復。編み込むようにして、結びつく。

 舌打ち。また顔を上げ、腕を突き出した。

 手の先から白い光があふれマーガレットのように広がり、闇が薄れる。

 淡い明かりに照らされ、セレスは目を大きく見張った。


「信じてくれ。俺なら君を救える!」


 力を振り絞る。

 全力を出してなお、手応えはない。

 はーはー。

 息を切らしながら肩を上下させ、なんとか顔を上げる。

 ぼやけた視界で壁を見た。バロンは言葉を失い、息すら止める。

 黒いつるは今なお少女の体をおおっていた。


おろかな人』

 薄暗がりで冷ややかな声が聞こえた。

 急に体が重くなり、崩れ落ちそうになるのを、ぐっとこらえる。

 魔界は人がいてよい環境ではなかった。時間切れは近い。足元からい上がる寒々しい感覚にぞわりと鳥肌が立ち、汗の粒が張り付く。


 もう無理なのか。

 拳は茨で傷つき、じめっとした赤い液体がしたたる。

 目の前が真っ暗になりかけたとき、薄闇に傷だらけの少女の顔が浮かんだ。細い四肢にボロ衣。かつてかくまった小柄な娘だった。

 幻影に向かって問いかける。

 選んだ道は本当に正しかったのか、と。


『答えなんて分かっているでしょう』

 幻視した姿は、彼女ではない。

『あなたは何も救えない』

 ゴーストクイーンがささやくと、濡れ手で触られたような感覚に、体が硬直する。


 正しい道なんてないのか。できることなど、最初からなかったのか。

 気持ちが揺れ動く中、不意に稲妻いなずまのごとき光が差し込む。正面に小さな娘が迫り、真顔で彼を見つめた。

『関係ない。なにもできなくてもやりなさい。間違っていたとしても、やり通すの』

 バッサリと切り捨てる。ほおを打たれた感覚だった。

『あなたは正しいから彼女を助けに来たの? 正しくなかったら切り捨てるの? 私と同じように』

 さげすむような目になる。

『思い上がらないで』

 さすがはおのれの影だ。ほしい言葉をかけてくれる。

 ああ、そうとも。気持ちはすでに固まっていた。

 心が熱く燃え上がる。脈打つ鼓動こどうを強く感じた。

 青年は口の端をつり上げ、足を踏み込む。


「待ってろ。今からとっておきのイリュージョンを見せてやる」

 バロンは剣をかかげた。黄金色の刃から閃光があふれ、爆発する。

 まるで祭壇さいだんに上がった生贄いけにえ。バロンはおのれの全てを捧げ、命すら投げ出すつもりだ。

 セレスが目を見開き、泣き出しそうに表情をゆがめる。悲鳴のような声を聞いた。


 彼は精悍な顔で数百年連れった相棒を、まっすぐに構える。

 聖剣よ、持っていけ。

 今こそ太陽の輝きを放出するとき。

 魔力の奔流ほんりゅうが見えない壁を突き破る。

 フレッシュな汗、やりきった思いを抱き、清々すがすがしい風を胸が突き抜けていった。



 気が付くと仰向けに倒れ、夜の闇のように閉ざされた天井が、頭上をおおう。

 バロンは柔らかいものに体を預けていた。チラリと視界に入った毛先が、まっすぐに垂れる。

「どうしてこんな、無茶なことを……!」

 唇を震わし揺れる声が、透明なひびきに聞こえた。

「言っただろ。なにかあったら君を救い、助けるって」

 優しい声でまっすぐに伝えるとセレスはさらにうつむき、うなだれた。

「私にはそんな概念、なかったわ。聖女は救世のための道具。そうあるべしと生み出され、その通りに消費されたの」

 眉を曇らせながら、抑えた声で語る。

「でも、あなたと過ごす内に光を見た」

 彼女は世界のために戦ったことは、一度もなかった。

 セレスは深く息を吸い込んだ後、顔を上げ、彼方を見つめる。

「宝石が散りばめられたような星空を見たわ。バラードを奏でる街でデートをした。焼き立ての匂いが漂うカフェにも行ったわね。ふわふわとしたパンケーキは甘くとろけるようで、いつかまた食べたいと思っていたの」

 薄く開いた唇が思い出をつむぎ出した。

 丸みを帯びた目に淡い光を宿し、ほおがゆるむ。

「勇者らしく胸を張るあなたがいじらしかった。もっと輝く様を見たいと願ったの。私は影。それでよかったのよ」

 彼女の振り絞るような声を聞くと、特別な思いが込み上げてきた。

 バロンはゆっくりと身を起こす。もう一度、正面を向いた。


「許してくれ。俺は君を忘れようとした。たくさんの人を、その一人一人を愛したんだ。でも、聖女と同じ輝きは見れなかった」

 口の端から後悔こうかいにじむ。

「ただの現実逃避だ」

 低い声。

「俺は勇者なんかじゃなかったんだよ」

 言葉が落ちる。


 セレスは眉尻を垂らし、じっと彼を見つめ返した。

「私にとって、あなただけが勇者だった」

 温かな声が胸にみ渡る。

 互いの心音が間近で聞こえた。

 バロンはいだ心地で息を吐いた。


「ああ、だからこそ、君もそれでいいのだと思う」

 体から力を抜き、素直な気持ちを吐き出す。

 今、彼の願いは一つだけだった。

 彼女の手を包み込むようにして握りしめる。

「頼むよ、幸せになってくれ」

 真剣な目で、訴えかけた。

「君は役目を果たしたんだから」

 祈るように眉を寄せる。

 しっとりとした空気、心地よい音楽が流れそうだった。


「いままでそんなこと……誰も言ってくれなかったのに」


 セレスは声を詰まらせる。


「あなたが教えてくれなければ、暗闇の中で一生を終えたでしょう」


 ガラス玉のような目を隠すように、まぶたを閉じる。目の端を伝う透明な雫が頬を伝い、あごをすべり落ちた。


 バロンは彼女の震える身を抱きしめる。もう離さない。互いの影が重なると、確かなぬくもりを感じ、熱い衝動しょうどうがこみ上げる。

 二人の唇が触れ合うと甘く優しい香りに包まれた。瞬間――まばゆい輝きがあふれ、彼らの顔を明るく照らす。互いの力が干渉・共鳴し、玉響たまゆらのように鳴った。

「まさか……」

 セレスはおのれの手首をじっと見つめる。彼女の腕に絡みついていた鎖がほどけ、砂の粒のような残骸ざんがいが落ちた。

「やったな、これで自由だ」

 予想はできた展開だ。勇者と聖女は二人合わさって初めて、力を発揮するもの。互いに触れあえば、新たな現象も起き、くさびだって解ける。

 そうか、ようやく隣に立てたのか。


 感慨深さを抱いたのもつかの間、地面が揺れ、ごう音。

 天井がひび割れ、乾いた破片が降ってきた。

「わ、わわわ。逃げないと」

「間に合わないぞ。どうするんだ。あ、そうだ」


 手を結ぶと彼らは同時に飛び立った。

 体からあふれる力。表面にまとった輝きがブーストをかけ、勢いのまま天井をぶち破り、上空へ踊り出た。

 魔界を貫通して、地上へ。


 山中に降り立つと表の世界は、大騒ぎだった。

ほこらでも壊しやがったのか!? まさか罪人の怨霊おんりょうが!?」

「神様ぁ、許しておくれ。俺ぁ、まだペットの魔獣に餌やってねぇよぉ」


 不安げに体を縮むセレス。深い緋色の空はかつておのれが起こした災厄と同じ。体を縮めた彼女の肩をそっと抱いた。

「大丈夫。俺を信じてくれ」

 彼女を解放すると決めた以上、天から裁きが下ることなど、想定済みだ。もちろん、ただで終わらせる気はない。

 彼の意思をみ取ったのか、セレスは頷く。もう一度強く手を握り仕込むと、体の内側から緋色のエネルギーがあふれた。


 災厄の塊は隕石のように街を襲う。

 まさしく絶体絶命の状況下、唐突に斜めに飛び込むかたまり

 流星となった男女が正面からぶつかった。はるか高い空で花火が打ち上がる。


 まばゆく虹色を帯びた輝きに地上の人間は皆、見入った。


 光が闇を飲み込み、空を晴らす。

 砕けた厄災が粒子となり、透き通った青に溶ける。

 浮力を失い落ちていく少女に向かって、手を伸ばす。指先が触れ、絡み合った。手を繋ぎくるくると輪を作るように回る。

 地上が近づくとふわりとした風に包まれ、無事に足をつけた。


「やったな!」

「ええ!」

 喜び、笑い合う。

 背景に花が咲きそうなほど甘い空気を台無しにするように、歓声と足音が迫る。岩雪崩の勢いで住民が流れ込み、熱気を連れてきた。


「おい、お前ら、すごいな」

「いったい何者だ?」

「何者であろうと関係はない。お前らこそが真の救世主だ!」


 にぎやかな人々に囲まれ、勇者は誇らしげに胸を張り、そばには聖女も控える。昔に戻った気分だった。



 うららかな春、神秘的なまでに深い山奥で、結婚式が開かれる。

 陽だまりに染まった会場はフローラな香りで満ち、ウェディングドレスをまとった花嫁は女神のようにまぶしく輝いていた。ほっそりとした腕を引く男も純白のスーツ姿で、清々しい空気をまとう。

 ふんわりとしたブーケを手に見つめ合うとピンクに塗った唇が弧を描き、ほおがほんのりと薔薇ばら色に色づいた。

「言ったよな。戦いが終わったら結婚しようと」

「今こそ続きをしましょう」


 祝福の鐘が鳴る。教会を越えた青く晴れた空へと、清らかな音色はどこまでもひびいていた。

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魔界下り 闇落ちさせられた聖女の下へ向かう勇者 白雪花房 @snowhite

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