戦後事業｢異世界横断鉄道｣

昭和三十五年(1960年)、高度経済成長期真っ只中の日本。叢雨(むらさめ)は、異世界同士を繋ぐ交通機関である花笠(はながさ)鉄道で勤務していた。彼は、花笠鉄道東京駅という、亜空間にある駅の勤務である。

客は魔法使い、エルフ、オーク、機械生命体など多種多様。そして、勤務する鉄道員たちの多くが幽霊で、生い立ちも様々。容姿も文化も違う異世界人らは、その世界で事業を展開したり、生活を営んだりしていた。

しかし、テロリストや密輸などの外患、過酷な労働環境に人手不足といった内憂も孕んでいる。特に人手不足は深刻であった。そのため、数カ月間無休で働いていたり、いくつもの役職を掛け持ちしたりといった鉄道員もいる状況だ。

また、多くの世界ではその存在を公にしている中、日本は既得権益のため、その存在を世間に…続きを読む