第5話[20][21]

[20]


七曜社代表、風水士 清野行玄氏へのインタビュー記事


「清野先生は、『日本で一番怪異が集まり易いのは東京である』と言う訴えをされてらっしゃいますが、お間違い無いですか?」


「おっしゃる通りです。山陰地方や近畿地方にも古くから怪異や霊的な存在が伝わっていますが、

特に現代の東京は異例の速さで発展し、多くの『気』の流れが乱されているため、怪異が集まりやすい特異な場所となっています。

東京の中でも■■、■■、■■は特に『風水的に危険な場所』です。

これらのエリアは、かつて川が流れていた土地であり、都市化に伴い地下水脈や地形が大きく変わりました。

そのため、本来の『気の流れ』が乱れ、異界の気や怪異が現れやすくなっているのです。

また、東京湾に沿う形で、古い地脈と新しい都市の気が入り乱れており、結果として『集められたもの』がさまよい、怪異として形を成す機会が増えています」


「今お話に出ました、『怪異』とは具体的になにを指しますでしょうか?また、それによる被害のソースなどあればお話しください」



「例えば地下鉄や通路での事故の原因としても、これらの幻聴や幻視が寄与している可能性が指摘されています。

 風水的に危険なエリアでは、本来行われるべき『道留め』の儀式が途絶えたことで、地元住民や来訪者が体調不良や急病に見舞われやすくなっています。

 例えば、■■の一部地域では、昔から地元の人々の間で『三年住むと体が弱る』といった噂があり、これも

 怪異の影響とされます。特に都市の気が淀んだ場所では、免疫が下がりやすいとされ、実際に健康被害を訴えるケースも少なくありません。


 これらの怪異については、過去の新聞記事や都市伝説としても頻繁に報告されています。

 例えば、■■では1970年代に『し■■■』による不可解な事故が立て続けに起こり、原因不明の転倒や滑落が問題になりました。

ネット掲示板やSNSでも、特定の地下道や排水路付近での『奇妙な体験談』が増加傾向にあり、怪異が現代においても影響を与えている可能性が示唆されています」


「成程。つまり、水の流れが、霊的な流れになっており、それを食い止めてしまう行為が、霊現象につながると言う主張ですね?」


「おっしゃる通りです。水の流れは、ただの物理的なものにとどまらず、霊的な

『気』をも運ぶと考えられています。

 特に、川や地下水脈は『異界と現世を繋ぐ道』として古来より見られてきました。

 ですので、急激な都市化で水の流れを強引に堰き止めたり、地下水路として封じてしまった結果、霊的な流れも遮られ、怪異現象が現れる土壌ができてしまったのです。

 つまり、水路が持っていた『浄化と循環の力』が失われ、異界の霊的エネルギーが閉じ込められ、行き場を失った気が不安定になって人々に影響を及ぼしている、という見方です。

 これは都市中心部に特に顕著に見られ、風水的に『淀み』が生じやすい場所といえます」


「先生は、具体的に怪異と遭遇されたことがございますか?」


「■■周辺の側溝や暗渠で祓いの儀式を行いましたが、ただの祓いでは力が及ばないと痛感しました。

 こうした強力な霊的存在には、伝統的な『道留め』のように、封じの力が必要になります。」


「最後に、清野先生はこれからも東京都心にて怪奇現象が発生するとお考えでしょうか?」


「はい、残念ながらこれからも東京都心にて怪奇現象が発生する可能性は高いと考えています。

 急速な都市化に伴う気の乱れが非常に大きく、また水脈や地脈が複雑に絡み合っています。

 そのため、ただの物理的な治水ではなく、霊的な視点からの『風水的治水』が求められていると感じます。

 風水的に言えば、これらの地域の『気の淀み』が高まれば高まるほど、異界との境界が不安定になり、怪異が現れる土壌が強固になります。

 このため、私たちのような風水士や地域の伝統を守る者が定期的に祓いや封じの儀を行わなければ、怪奇現象の発生はさらに増していくでしょう。

 私としては、『道留め』のような封じの儀式を復活させることが、今後の都心の平穏を守るためには欠かせないと考えております」


[21]


気がつくと私は雨の中、屈んで側溝を覗いていた。

本来、私がいくはずだった場所だ。

汚れも気にせず膝をついて、開かない側溝の溝を傘の先端で掘る。

助けるから。

健吾、絶対助けるから。

健吾、絶対出してあげるから。

……やめないから。

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