第36話

心平は麗奈の卒業式に参列した後に、彼女と彼は店の軽ワゴンの中で話をした。「麗奈、卒業、おめでとう。それで従業員も増えて、心平まんじゅうも売れに売れて、これもすべて麗奈のお陰じゃ思うとる、げに感謝しとる、ありがとの、そこで決めたんじゃけど、従業員を全員、連れて社員旅行をしようと思うとるんじゃ、もちろん、このコロナが下火になってからの話しなんじゃけどの、泊りがけで日光見物をして、勝手に師匠にしてもうた、武平まんじゅうの和田菓子店さんにも伺って、あちらさんは、ワシが真似をしたこたぁ、知らんのじゃけど、お礼かたがた行くのに付きおうてくれるかのぉ?」


「私も連れて行って、くださるのですか?」

「うん、一緒に行ってもらいとう思うとるけぇ、新婚旅行のようなものじゃけえなぁ」

「嬉しいです、私をお嫁さんにして下さるということで……よいのですか?」

「うん、麗奈が大学を卒業したけぇ、ワシの妻になってもらいとう思うとったし、どうかな?」

「嬉しいです、ありがとうございます」

「じゃぁ、従業員全員を連れて、社員旅行かたがた、日光見物に行こうな? ワシャ、日光東照宮や二荒神社にも中禅寺湖畔の旧英国大使館別荘にも行ったことないけぇさ、それを両親から土産話で聞かされていただけじゃけぇ、それに、今度はいろは坂が渋滞するからと、ロープーウエーが設置されるらしいからさ」

「はい、行きましょう。それと、お婆ちゃまに、社長からプロポーズしてもらった話をしてもいいですか?」

「うん、中山様にゃあ一番、お世話になっとるけぇ、ワシの方からも麗奈を正式にもらいに行くけぇ、その件も伝えてくれると嬉しいんじゃけど」

「社長! 本当に嬉しいです、ありがとうございます」と言って心平の首に腕を回してキスをせがんだ。心平も優しく麗奈を抱いてキスをした。

「それと明日は一番で、うちの両親にも、会うてほしいし、中山様にも挨拶に行くけぇ、その事も伝えといて、後、中国のお父様にもね」

「はい、わかりました」


※ ※ ※


翌日、麗奈が店に来たので、心平は実家に連れて行き、祖父と両親に会わせて、彼女が大学を卒業したので結婚をすることを伝えた。祖父と両親も中山様には世話になっていたので、すぐに麗奈のことは認識し承知した。


その足で彼女と一緒に中山様の家に訪問して中山様に麗奈を妻にもらいたいと話すと、喜んでくれて、さらにその場で中国の父親に電話すると安心したと喜んだ。


従業員全員にコロナが下火になったら、社員旅行で日光に行くことを皆に話すと喜んでくれた。


そして心平と麗奈は結婚して夫婦となり、麗奈は株式会社 桔平の跡取り息子を妊娠し、幸せな家庭を営み商売も順風満帆となっている。


心平まんじゅうは広島を代表する銘菓となり、形も平べったくて真っ黒なので、別の名を「原爆まんじゅう」と謳われるようになり、「広島の土産といえば、原爆まんじゅう」と言われるようになっていった。


「婆ちゃんのお陰で、店の方も何とか軌道に乗り、麗奈と結婚もできた。ありがとの」と心平と麗奈は広島市内が一望できる禊萩が咲く丘の祖母が眠る墓前で合掌し報告をした。


―了-

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広島の街が一望できる禊萩が咲く丘 @k-shirakawa

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