第35話

 獅子屋は本社新築で無理をしていて、前沢が勤務していた時代から材料費を落とす努力をしていたことで、評判がかなり落ち込んでいて、4年も続いているコロナによって、さらに業績が悪化していた。


 社長の寅之助が工場長に対して原価を落とせと顔を突き合わす度に文句を言っていることから、嫌気がさして彼は退職することになり、二番手も一緒に彼と退職して独立すると言い出した。


 そこで工場の業務が回らないという窮地に陥ったので、石田が心平に相談を持ち込んだ。


「社長から直接、頼まれたら、前沢とうちの会長に頼んで、手伝いに行ってもらうようにするけぇ」


 と心平は言った。


 さすがの寅之助は心平に頭を下げるのを躊躇していたが、石田の説得で、寅之助が直々に心平の店に足を運び頼んだ。


「心平、頼む、助けてくれ!」


「承知いたした。親父と前沢に相談して向かってもらうけぇ」


 と心平は言い、父親に話しをした。


「同業者じゃけぇ助け合わにゃぁな」


 と言って腰をあげた。さらに前沢に心平が頼むと難色を示したので、心平は当分の間、前沢には桔平で通し(8時間拘束の1時間休憩で実働7時間)で勤務してもらい、時給を1.25倍にした。


 心平と会長の鉄平と二人で手伝いに行くことにした。一か月ほど獅子屋の工場で親子水入らずで、勤務していると、獅子屋の不採算店を撤退すると寅之助が心平に話した。


 その店は桔平の斜め前の三店舗だったので、心平は会長の鉄平と、専務になる予定の麗奈と相談して、三店舗の造作を安価で買い取り、従業員も桔平で採用することにした。


 そして、新たな職人も獅子屋に入社したことで、心平と鉄平は店に戻った。三店舗の一番端の店を改装して土田に所長になってもらい従業員の子供たちの保育所兼子ども食堂を開業することに決め、大工の鈴木に造作の変更を頼み、さらに和菓子屋と茶寮をぶち抜いて桔平の第二工場の造作に変更するように頼んだ。


 しばらくしてまた石田から電話が来た。


「業績が落ち込んだままで戻らないので、本社ビルを売却すると社長が言っているんだけど?」


 心平は本社ビルまで購入する気はなかったので言った。


「そりゃ大変じゃのぉ、頑張れ!」


 その後は、ガタガタと音がするように、獅子屋は倒産の道をたどったことで、従業員だけは桔平で引き受けることにした。その後の桔平には、めでたい話が舞い込んできた、翔平と土田が婚約をし、いつの間にか孝子と江口が付き合いだしたと聞いた。


 さらには、飯尾が前沢から日々、指導を受けて心平饅頭の工場を任せられるまでなってくれていたし、新メニューも開発してくれていた。


 そして飯尾は家出をしていたことを明かし、実家に報告してくると言った。更には麗奈が大学を卒業することが決まり、彼女の祖母に代わって心平が卒業式に参列して、その帰りに求婚をした。


つづく





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