第34話

心平まんじゅう、かき氷屋、そしてレストランも予約で完売が続いていた、石田から電話があって、獅子屋の社長の水島寅之助と石田と美紀子が来店したいとの事でレストランの個室を予約した。


寅之助たちが来店して、桔平の店内外を舐めるように見回すと、厨房に居た前沢を見て「お前がここで、何しとるんじゃ!?」と大声で怒鳴った。


前沢は「あっ、社長、お久しぶりじゃ、心平社長に採用してもろうて今、勤務させてもろうとる」と言った。


その後の寅之助は苦虫をつぶした顔で、隣のかき氷屋の内外を見てその後、心平の案内でレストランの個室に入って座った。


寅之助が言った、「心平、ずいぶん、繁盛しているみたいだな、お前の店で自信のある商品を出せ、試食してやるから!」と言った。

「社長のお口に合うようなもなぁないす」と心平が言った。

「別に俺の口に合わんでもいいから、自信のあるモノを出せばいいんだよ」と寅之助。

心平は「承知した」と言い、翔平にビーフシチューと自家製パンを三人前、作らせて運ばせ、

食べ終わる、直前でかき氷屋からイチゴ100パーセントのかき氷の小を三人前と心平饅頭を一個ずつ持って来させた。


三人は無心で食して、寅之助は「さすがだな、心平!うまかったぞ」と言って、立ち上がり帰って行くと、石田が会計をして帰った。


その日の夜に石田から電話があり、あの後に寅之助は美紀子に対して、「石田の子なんか、何で作ったんだ!?」と怒鳴り、その後は、「あれほど、心平と縒りを戻せ!と言っただろ!」と怒鳴ったと言い、石田は落ち込んだと言っていたので、心平は複雑な気持ちになった。


寅之助は子供の頃からの心平を知っていて、愛娘の婿は心平と、ひそかに決めていたからだ、中学時代に心平と美紀子は、当然だが、プラトニックな付き合いをしていた、クラスの成績は一位と二位で、二人はとても仲が良かった。


その光景を見ていて寅之助は二人を応援していたのだ。それが美紀子の天然さから男子大学生時代に騙されて東京に駆け落ちしたことで寅之助の夢が幻となった。


そんな過去がありながら、美紀子は離婚して帰って来た途端に、石田と関係をもって、子供まで作ったことに寅之助は憤慨し幻滅した。美紀子に自身の会社を継がせるのではなく、桔平を吸収合併して、心平に自身の後継者としたいという青写真を描いていた。


心平は最初から獅子屋を目の敵にはしていなかったし、二代目の鉄平も同じだった。それよりも競業店同士で切磋琢磨してこの町を盛り上げていければと大繁盛している今でも、そう思っていたので、獅子屋が困れば、いつでも助けに行くつもりがあった。

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