第33話
同窓会の幹事をやっていた石田から心平に電話があった、
「どうした?」
「実は相談したいことがあるんじゃ」と石田が神妙に言った、
「どがいな事じゃ?」
「電話では」
「うん、分かった、ワシの仕事が終わる時間でもええかな?」
「うん」
「じゃぁ、今日の19時に駅前の月あかりでどうだ?」
「うん、ありがとう」
※
「またしてしもうて、悪いな」
「いや、ワシも今、来たばかりじゃけぇ」
「そっか、それで話ってなんじゃ」
「とりあえず、注文してから話すよ」
「あぁ、そうじゃのぉ」
「ワシャ、生だけど、心平は?」
「ぬくい、ウーロン茶で」
「何でも好きなものを頼んでくれよ」
「あぁ、そうさせてもらうよ、何言うても、東証一部上場の大企業の主任さんじゃけぇな?」
注文をして乾杯し話をした、
「実は美紀子と付きおうとって、彼女を孕まして、それが妻に分かって、今、うちは修羅場なんじゃ、さらに悪いことにあの美紀子の鬼軍曹の親父にも見つかってしもうた。この間、美紀子の親父に呼ばれて、うちの嫁と別れて美紀子と結婚して責任を取れ言われて、どがぁしたらええのか分からんでさ」
「まずは、ワレの、嫁さんの気持ちが一番なんじゃないのか?」
「嫁にゃあ、子供ができんかったけぇ、別れたいって言われたんじゃ、もちろん、泣かれたけどな」
「そりゃ、お互いに辛かったなぁ、嫁さんは傷ついたじゃろうな、かわいそうに、でも美紀子を孕ましたんじゃったら、そりゃ、それとして責任を取らにゃあ、つまらんじゃろ、男としてさ」
「やっぱり、そうじゃよな」
「美紀子も、ワレと結婚したいって、言いよるんじゃろ?」
「それが好きな人が、おると言うんじゃ」
「何だそれ? われの子供まで孕んでかよ?」と呆れて言った心平だった。
「うん、そうなんじゃ、その好きな人言うのが、心平、われなんじゃ」
「ワシャ、半年前にその事を美紀子から言われて、ちゃんと断っとるけぇ、関係ないけぇさ、美紀子は相変わらず、どこかが抜けとるんじゃな、あいつは天然じゃのぉ、大学時代の男と駆け落ちして、ワシを振っといて、東京で結婚して、離婚して帰ってきて、今度はこのワシとまた縒りを戻したいって言うたけぇ、ワシャ呆れて、『再婚する相手はワシじゃない』言うたんじゃ、じゃけぇ石田、ワレが責任を取れよ」
「やっぱり、そがいなことになるよな」
「あの鬼軍曹の婿養子って、ことじゃな?」と言った心平は声を上げて爆笑していた。
「そんなに笑う事じゃねえじゃろ、うちは兄貴が一人おるけぇ、そがいなことに、なると思うよ」
「ごめん、あそこは美紀子しか子供がおらんけぇ、そうなるんじゃろうな、獅子屋の次期社長ってか?」と心平はまた笑いながら言った、
「あの鬼軍曹からバカじゃ、コケじゃ言われてじゃな」
「それは仕方ないだろうよ、鬼軍曹の目の中に入れても痛くないほどの愛娘の美紀子を孕ませたんだからさ、あとお前の結婚式で渡したご祝儀を返してくれよな」と心平が笑いながら言った。
「そんな笑いごとじゃないんだよ。心平の店の商売敵になるんだよ、ワシとワレはさ?」
「そがいななぁ親父の時代からで、当の昔からじゃけぇ、何とも思うとらんし、ワシャ自分の店だけが発展すりゃ、ええなんて思うとらんけぇ、原爆を落とされた、この広島の町だけじゃのうて、市内全域いや県全域が、今よりも、もっと発展すりゃええ思うとるけぇ、ワレがあの獅子屋に入って、ワレの時代になったら、ワレと協力してワシャ、広島県市町の発展に力を注ぎたい思うとるけぇ、ワレもそがいな気持ちで美紀子の旦那になれよ、それじゃったら、ワシも心から二人を応援するけぇさ!」
「相変わらず、心平の考えは、自分がようなりゃあと、いう考えじゃないんじゃよな、じゃけぇワシャ、ワレのことを親友じゃ思うとるんじゃ」
「ワシとワレが、いつから親友じゃったんじゃ?」と笑いながら言った心平だった。
その後はしばらく雑談して帰宅した。そして石田は前妻と別れて、勤務先を退職し、獅子屋の本店で修業に入り、しばらくして、石田は美紀子と結婚式を挙げた。
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