第15話

 羽佐間ハザマ市のスラム街、壊れかけたビルがひしめき合う雑踏の中、ひときわ目を引く光景が広がっていた。廃墟の一角に、新たに開店したばかりの「よろず屋」の看板が煌々と輝いている。ネオンがぼんやりとした夕暮れの街を照らし、そこにカガネとフロストバイトが並んで立っていた。


カガネの瞳には、もうあの冷徹な復讐心はなかった。今、彼が持っているのは、この街の一部として生きる覚悟と、それに伴う責任感だった。


 ドアを小さく叩く音が響いた。二人が視線を交わす。来訪者は小柄な老人だった。震える手で帽子を取り、頼みごとを口にする。


「娘が何者かに連れ去られてしまいました。どうか助けてくれないか」


 カガネは黙って老人を見つめ、傍らのフロストバイトと視線を交わした。その目には、互いに無言で了解した証が浮かんでいた。


「心配するな、じいさん。俺たちがやれるだけやってみせる」


 過去の仇討ちを終えた今、彼の目的は変わっていた。新たな力は、他者を守るために使われるべきものだと気づいたのだ。


フロストバイトがにやりと笑った。「じゃあ、また仕事開始だね」


 こうして、サイバネ侍と忍者ハッカーの何でも屋は羽佐間ハザマ市の片隅で静かに、そして確かに息づき続けるのだった。

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サイバネ侍と忍者ハッカー 青猫あずき @beencat

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