00.番外編 Human beings

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 ある国に、違法なヒューマンクローニングを生業にする男がいた。

 彼は高度な技術力を持ち、法外な料金の支払いと遺伝子提供を行えばどんな人間のクローンでも用意してくれる。


 今回の依頼は、『処刑される娘の身代わりを用意して欲しい』というものだった。

 彼は依頼者の黒髪の娘の遺伝子を培養して作ったクローンを不味い栄養剤で急速成長させ、短期間で依頼者の娘と同じ年頃にまで仕立てあげた。


 複製体の精神状態はやや幼いものの、どうせすぐ処刑されるのだ、関係はない。

 むしろ、余計なことを喋らないように知能は低い方がいい。


 もし、賢い複製体など作ろうものなら、本物を殺して成り代わる可能性もあるのだから。

 男は、奴と同じ失敗はしない。

 社会に関する最低限の情報と、依頼人の娘の趣味嗜好のみを複製体に伝え、それを復唱するように厳しく躾けた。


 どうやら、依頼者の娘はハンバーガーと珈琲が好みらしい。


一等市民ハイランクの癖に、随分と俗っぽいものを」


 男は独り呟き、複製体の躾に戻った。


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最期の晩餐 ジャック(JTW) @JackTheWriter

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