竜の声を持つ神職と生贄の少女。失われた科学の世界との邂逅
- ★★★ Excellent!!!
ジャンルとしてはポストアポカリプスファンタジー、という感じでしょうか。遠い過去に優れた科学力で発展した世界だったのが、今や植物の上に植物が生える多層構造。倒木更新なんて生易しいものではなく、森に森が積み重なり、人々は大地から引き離されたという世界です。
口伝のように過去は継承されているけど科学力はすべて失って、古代に戻ってしまったかのように人々は竜を神と崇め、十年に一度生贄をささげる事で竜を呼び森に縦穴をあけ、遥か下にあるはずの大地とのつながりを維持している…。
もうこの世界観が素晴らしくて、儀式や宗教観、人々の心理等が「こういう世界がある」というリアリティをもっていて、ぐっと物語に引き込まれます。
歴代最高峰の実力で竜の声が出せる主人公イーレンは、初恋の人を嫁入りと称した生贄の儀式で失ってからは表情筋がバグってしまい、見た目の様子がちょっとおかしくなってますが、その性格はとても好感が持てます。そんな彼が二度目の恋をしたのだけど、なんとその娘ユゥラは次の生贄。しかもイーレンが竜を呼ぶ役目を果たさないといけないという。
こんな悲恋と悲劇を許していいのだろうか。何故生贄が必要なのだと、読者もぐっと力を入れてこの世界を恨むなど、主人公イーレンの気持ちとリンクしてしまう。
その時イーレンが取った行動とは!
彼の行動がこの閉塞した世界にどんな風穴を開けるのか。
イーレンとユゥラの恋の行方は。
失われた科学との出会い等、次々と話は盛り上がり展開するので、一行たりとも目が離せません。