皆さん、本日はお忙しい中講演会にお集まりいただき格別の感謝を申し上げさせていただきます。

皆さん、本日はお忙しい中講演会にお集まりいただき格別の感謝を申し上げさせていただきます。

　皆さん。本日の講演会は、偉大な量子力学的な発明や、とても役に立つおばあちゃんの知恵袋。などのような退屈な物では一切ございません！

　おっと、退屈の意味？　退屈というのは（ほかのとてもつまらない）講演会をわざわざ聞くために屈んで居たけれど、（とてもつまらないので）我慢がならず、ついに立ち上がり客席から退く。という意味で使われるのが一般的ですね。

　なに？　これでも分からない？　そうですね。余り頭を使わない方のために説明するとしたら…………退屈というのは退屈という意味です。

（聴衆から笑いの渦が起こる）

　おや。まだ理解されていない？　仕方ないですね、今回はそんな余り頭をを使わなずあまつさえ理解すら出来ない方々のための、画期的でパワフル。それでいてユーモラスな（とてもおもしろい）発明を紹介します。

　思うに、皆さんは難しく事を考えすぎなのです。とても大きい惑星サイズのコンピュータや、厚さ0μｍの板を[$無効な値]枚重ね合わせた演算回路を持つ世界最高峰の演算装置などといった、冗長で退屈な方法で万物を知る必要は無いのです。

（聴衆から響めきが起こる）

　ではどのようにこの万物を知ればいいのか？　簡単なことです。もし神々がいたなら最初に設計した。と言わせ占めるこのアイテムを使えばいいのです。

　そう、このアイテムです。まるで平坦でありながら、緩やかな曲線が絶妙に交錯し、低く広がる長方形の上に柔らかく膨らみを帯びた幾重もの層が有限個重ねられていて、左右に広がるその偶数個の端は、ふわりと（この場合のふわりは火星でのカーテンを指す言葉では無い）柔らかく弧を描き塩棍棒を包み込むかのごとく内へと緩やかに湾曲しております。全体は地に近く据えられつつも、無理のない高さで床から浮かび上がり、見た目にも圧迫感なく、しかし存在感は揺るがない。その複雑で微妙な形は、一見冗長なようにも感じられますが、一度使えば緻密な計算の上産み出されたと納得せざるを得ない素晴らしい形状のこちら。

（聴衆が素晴らしいアイテムの登場に忽ち拍手をする）

　……なんですか？　…………ええ。…………分かりにくい？　はあ。

　なるほど、そうでした。余り頭を使わない方のために説明をする必要がありそうですね。

　端的に申し上げますと…………ソファです。

　なに？　馬鹿馬鹿しい？　おっと、席を立ちましたね？　今あなたは、今日の講演で聞くまで理解すらしていなかった退屈を自ら行いましたね？

　そう、実のところ我々は知る必要が無かったのです。これは偏屈な数学者や近所のいつもニコニコしているマダムに言うと、必ず顔をしかめて（そして必ず自分の今までの人生を振り返りながら）”そんなはずが無い！”と仰られるのですが。しかしこれは、自明の理であり、ある種の答えなのです。

　なぜなら我々は既に答えを全て知っているからです。しかしながら答えを知っている全知の我々にも、一つだけ分からないことがあります。それは…………（とてももったいぶって間を開ける開けている）

　その答えを見る方法、ある種のカンニングの仕方です。

（耐えられなくなった聴衆からどっと笑いが漏れる）

　ええ。皆さん、静かに。これはとても真面目で、そしてとても愉快な話です。最後までしっかりと耳の穴に金魚を飼って（とても真面目にという意味）聞いてください。

　答えは知っているはずなのに、全知のはずなのに。それが使えないなんて！　一体なんて言うことだ！　と皆様もお思いのことでしょう。

　なんと、それをこのアイテムを一つ使うだけで。しかもまるで人のことにだけ文句を言うように（とても簡単にという意味）全てを知る事が出来るのです。

　（とても長い表現）、あるいはソファと呼ばれているこれに腰を降ろし、その後の507ゼッフル間（およそ37秒）の間の足（生物が歩行するために用いるもの）の動きを観察するだけです！

　本当にそれだけ？　と思いましたね？

　ええ。それだけなのです。それだけで、我々は全てを知っていることを思い出すことが出来るのです。

　講演会は以上とさせていただきます。ありがとうございました。（頭が背中にぶつかるようなとても深いお辞儀）

（聴衆からの凄まじい量の拍手）