第7話 協会
ボス戦を制圧した三人はそのまま探索者協会へと向かい、買取窓口へと向かった。
「おお、三人とも凄い成果ですね。それぞれ別々に計算すれば良いんですね。それでは、ジュンヤさんの買取合計は二万八千円です。ミヤビさんの買取合計は二万六千二百円となります。コウスケさんの買取合計は二万千六百円です」
コウスケとしては一日の目標額である一万八千円を超えたので満足であった。
二人もこれだけ稼げたのは初めてだったようで、
「有難う、コウスケのお陰でかなり稼げたよ!」
「有難うコウスケくん。これで二人で住む目標に近づけたよ!」
礼をコウスケに言い、更に
「あのな…… 明々後日の日に双子山に挑戦してみるつもりなんだが、その…… コウスケの都合が良かったらで良いんだが」
とジュンヤが少し言い難そうに言い始めたので
「おう! 明々後日なら俺もちょうど双子山に行こうと思ってたんだ! 二人が良かったら臨時でパーティーを組んでくれるか?」
コウスケはジュンヤの言葉の途中で、コウスケの方からパーティーを組んでくれと頼んだのだった。
「あっ、ああ、勿論だ! 頼むな、コウスケ」
「ヤッタ、明々後日はよろしくね、コウスケくん!」
そして待ち合わせ場所と時間を決めて二人と別れたコウスケは家へと帰ったのだった。
家に戻ってコウスケは庭に出て闇属性の闇魔法の研究を始めた。基本的に魔力を武器に流す事しかしてこなかったので、ジュンヤやミヤビの魔法を見て自分も魔法を研究してみる気になったのだ。
「う〜ん…… 視界を遮るダーク、攻撃はダークアロー、ダークランス…… いやダメだっ! もっと俺の個性を出さないとっ!!」
うんうん唸りながらも、色々な魔法を試しているコウスケ。そのバリエーションは豊富であったが、ネーミングで躓いていた……
「ダーク…… 闇だからダークというのが安直か? ならばどう名付ける? ノワール? う〜んしっくりこないなぁ…… 闇、やみ、ヤミ、yami…… 要は暗い、黒い、影もまた闇なんだよな…… うん、だから魔法矢と魔法槍はシャドウアロー、シャドウランスにしよう! 視界を遮るのは日本語で
うんうんと唸りながらネーミングを考えていたコウスケであったが、玄関から聞こえてきた声に思考を止めた。
「ただいま〜、コウちゃん!」
「おう、おかえり、ミサキ」
庭から返事をしたコウスケにミサキが駆け寄ってきた。どうやら靴を脱がずにそのまま庭に回ってきたようだ。
「どうしたのコウちゃん? 庭にいるなんて」
「ああ、ちょっと魔法の研究をしてたんだ」
コウスケの返事にミサキは
「そうなんだね! コウちゃん属性開花の前から魔力制御が上手だったもんね!!」
属性が開花してない状態でも魔力はある。それは探索者でなくても同じなのだが、魔力を上手く扱うには学ぶ必要があり、それを教えているのが探索者養成高校であった。
なので探索者以外の人は魔力を持っていても扱う事は出来ないのだ。稀に例外として扱う事が出来る人もいるが、制御を上手く出来ずに子供が石を投げた方が威力がある程度にしか扱えないのが現状である。
「ミサキも魔力制御は褒められていたぞ、ヤバス先生に」
「えー、そうなの? ヤバス先生にはいつも厳しい事しか言われてないけど……」
「ああ、あの先生は見所ある生徒にしか厳しい事は言わないからな。それだけミサキが優秀だって事だよ」
コウスケからそう教えられて嬉しそうになるミサキ。
「そうなんだぁ! それじゃ、私もっと頑張ろう!」
「ああ、頑張れよ」
コウスケはそう言ってミサキの頭を軽くポンポンとする。
「エヘヘ、うん頑張るねコウちゃん」
二人で家の中に入り、夕食の準備も二人で行い一緒に食べる。コウスケは自分の家で誰かと食事を共にする事に幸せを感じていた。
『この幸せが続くように俺も頑張って上位ランカーになろう!』
そう心に誓うコウスケだった。
翌朝、爽快な気分で目覚めたコウスケは今日は協会長に呼ばれていたと思い早めに支度を始めた。ミサキも起きてきたので一緒に朝食を食べる。
「コウちゃん今日はどうするの?」
「今日はロックさんと一緒に探索者協会に行くよ。協会長が俺に話があるそうなんだ」
「そうなんだ。それじゃそんなに遅くない?」
「ああ、多分そんなに遅くはならないと思う。ミサキは今日は実習だったか?」
昨夜寝る前にミサキから聞いていた予定を確認すると
「うん。今日は機関車公園で実習だよ。パーティーを組むのは二人とも女子だから心配しないでねコウちゃん」
ミサキからそんな返事があった。
「そうか。実習だから引率の先生も三人だよな? ちゃんと周りをよく見て気をつけるんだぞ」
「うん。今日は地下三階までしか行かないから大丈夫だと思うけど気をつけて進むね」
そんな会話をしてからお互いに出かける事に。隣のミサキの実家からロックも出てきた。
「おはよう、光介、美咲。ちゃんと避妊してるか?」
「ロックさん、おはようございます。完璧にしてますよ『やる事やってないから避妊してる事になるよな』」
平然とそう返すコウスケを見て顔を真っ赤にしながらミサキが言う。
「もう! お兄ちゃんもコウちゃんも、朝から何を言ってるのっ!!」
そんなミサキにロックは言う。
「いや、俺も二十代でオジサンになりたくはないからな」
「その心配は…… あるかも知れませんね」
ロックは二十二歳。来年ミサキが卒業して直ぐに籍を入れて…… そんな事を考えたコウスケ。
「二人とも! 朝の往来でする話じゃないでしょ!!」
ミサキから怒られて謝りながら歩きだす三人。探索者協会に着いた。ここから探索者養成高校までは徒歩三分の距離だ。
「それじゃ、ミサキ。気をつけてな」
「うん、コウちゃん。コウちゃんもお兄ちゃんに気をつけてね」
「妹の信頼を無くしてしまったか…… だが、兄は敢えて嫌われ役を演じたのだといつか妹も気がつく筈だっ!!」
「ロックさん、ミサキならもう走って行きましたよ」
「ああ、俺の決め台詞を聞かずに行くなんてっ!?」
「早く中に入りましょう……」
コウスケは半ば呆れながらロックを促して中に入った。
協会長の部屋まで行きノックすると中から「入ってくれ」と言われたので扉を開けて中に入る。
「おはよう二人とも。よく来てくれた、そこに座ってくれ」
ソファを指し示しそう言われたので座るコウスケとロック。協会長も対面に座った。
「さてと、今さらだか俺の名前は
そう言ってタイキはコウスケに向かって頭を下げた。コウスケは両親が亡くなったのは暴走を止めに行った時に探索者を救った為だとミユキから聞いた。それがタイキが送り込んだ上位ランカーだったと知ってもタイキを責めるつもりは無かった。
「協会長、頭を上げて下さい。俺は両親が亡くなったのは悲しいと思ってますが、当時ダンジョンの暴走を止める為に協会長が上位ランカーの人たちを派遣した事が間違っているとも思いません。例え両親が二人だけで良いと言ったにしても、町を守る為に打てる手を打つのは当然でしょうから。ですので、許す、許さないなどという気持ちは俺にはありませんから」
コウスケの言葉にタイキは頭を上げて
「そうか…… そう言ってくれるか…… やはり慎也の子だな。有難う光介」
それからタイキは机に行き、一束の書類を手に戻った。その書類をコウスケに手渡す。
「光介、これは慎也と響子がまとめた闇属性に関するものだ。君が探索者となった時に渡して欲しいと頼まれていた。時間を作って目を通しておいてくれ。それとロック、上位ランカーの【
「それは良いけど暫くってどれくらいだ、協会長?」
「光介が上位ランカーと渡り合える力を付けるまでだ」
タイキの言葉にロックは笑って
「ああ、それなら
そう言ってタイキを驚かせた。
「一ヶ月も要らないって! ロック、光介はついこの前に探索者になったばかりだぞ!?」
「心配ない、協会長。今の光介でも上位ランカーと十分に渡り合える力を持っていると俺が保証するよ」
ロックの言葉にタイキは
「ロックがここまで言うとは…… さすが慎也と響子の息子だな…… しかし【犬猿】は品行方正とは言えないランカーだ。気をつけてやってくれロック」
そう言って二人を部屋から送り出したのだった。
闇属性で回復(治癒、治療)出来ないって誰が言った? しょうわな人 @Chou03
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