クマくんのハチミツ
霧氷 こあ
消えたハチミツ
「おーい、クマくん。おやつのじかんだよ」
リスくんが、切り株によりかかって眠っているクマくんに声をかけた。
あたたかな陽だまりのなか、クマくんは少しだけ目をあけて、ねがえりをうった。
「うーん、もうたべられないよぉ……むにゃむにゃ」
「あはは、クマくんったら夢のなかでなにをたべてるのかしら?」
リスくんの隣にいたウサギさんがわらう。
その声で、ようやくクマくんは目がさめた。
「わぁ、みんなおはよう。もう、おやつのじかん?」
「そうだよ、早くたべようよ!」
リスくんがクマくんの周りをはしりまわる。そのすばやい動きを追っていたら、目が回りそうだ。
「あら、キツネくんは?」
ウサギさんが耳をぴょこぴょこさせながらいうと、しげみの中からキツネくんが飛び出してきた。
「よっ、またせたな。今日もみんなでおやつをたべようじゃないか」
「キツネくん、今日は果物をたべるのね。とってもおいしそう」
ウサギさんにほめられたキツネくんは、自信満々に口にくわえていた果物をかかげた。それを見ていたリスくんがぴょんとはねた。
「でも、たったひとつじゃないか。ボクなんて、ほら!」
リスくんは、ちいさな果実や木の実を四つも出した。
「わぁ、すごい」
クマくんは両手をうえにあげておどろいた。
「でも、リスくんのは一つが小さいわ。わたしのをみて」
そういったウサギさんの足元には、おおきなニンジンが一本おいてあった。
「キツネくんも、リスくんも、ウサギさんもすごいね。でも、ぼくだってすごいんだよ」
そういってクマくんは横においてあったツボをのぞきこんで、大きな声をあげた。
「あれ、ぼくのハチミツがない!」
「なんだって? どれ、ボクがかくにんするよ」
リスくんは器用にツボのふちに飛びのって、なかをみる。
「ほんとうだ、きれいさっぱりなくなってるよ!」
「もしかして、べつのツボと間違えているんじゃないかしら?」
ウサギさんがしつもんする。クマくんは首をよこにふった。
「いいや、このツボはぼくのお気に入りで、いつもつかっているんだよ」
「そういえば、いつもそのツボだもんな。オイラもよくおぼえているよ」
キツネくんがフシギそうにツボをみつめている。
クマくんはもういちど、何かのまちがいじゃないかと、ツボに手をいれてみたけれど、やっぱりハチミツはなかった。
「たしかにここにハチミツがあったのに、なくなっている……。だれかが、ぼくのハチミツをたべたにちがいない!」
キツネくんも、リスくんも、ウサギさんも、おたがいに顔をみあって首をかしげた。
「いったいぜんたい、誰がたべたっていうんだい?」
キツネさんがたずねると、クマくんはたちあがった。
「きっとこのなかに、はんにんがいる!」
「なんだって!? ボ、ボクじゃないぞ」
リスくんがその場でくるくると走りまわる。
「リスくん、きみはそのすばしっこさで、ハチミツをかくしたんじゃないのかい?」
「そんなどろどろしたもの、ボクじゃかくせないよ!」
「たしかに、そうだね」
クマくんはあきらめて、次にキツネくんをみた。
「おくれてきたキツネくんが、ハチミツをこっそりたべたにちがいない!」
「オイラは高いばしょにあった果物をとるのに、じかんがかかっちゃったんだよ」
キツネくんのもってきた果物は、木の上にはえているのをクマくんはみたことがあった。
「たしかに、そうだね」
クマくんはまたあきらめて、次にウサギさんをみた。
「それじゃあ、ウサギさんしかいない! どうしてぼくのハチミツをとったりしたんだ!」
「わたしじゃないわ。だって、ニンジンが大好物なのよ。ハチミツなんて、いらないわ」
ウサギさんはいつも、おやつの時間はニンジンをたべていたのをクマくんはおもいだした。
「たしかに、そうだね」
クマくんはまたまたあきらめて、その場にどっしりとすわりこんだ。
「うーん、ハチミツはどこにいっちゃったんだろう」
「ないものはしょうがないよ、みんなのおやつを少しずつクマくんにわけてあげよう」
リスくんが提案すると、みんなうなずいた。
「みんな、ありがとう。でも、なんでだろう。ぼくおなかへっていないんだ。どうしてだろう」
クマくんはおなかに手をあててかんがえる。
「あっ、おもいだした!」
「なにをおもいだしたの?」
ウサギさんが、クマくんにしつもんする。
「ぼく、まちきれなくてハチミツをたべちゃったんだ。そうしたら、ねむたくなっておひるねしてたんだよ」
「なんだ、じゃあはんにんはクマくんだったんだね!」
リスくんが尻尾をふって笑った。
「もうたべられないよっていう寝言はほんとうだったのね。ほんと、クマくんは食いしん坊ね」
迷探偵クマくんのじけんは一件落着。森のみんなはわいわいとさわぎながら、なかよくおやつをたべました。
クマくんのハチミツ 霧氷 こあ @coachanfly
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