4-3. 反応

 蜂起はまさしく『世論形成を為す』ひとつの手段であった──。

 

 そして、それを伝播させるテレビ等のメディアは重要な役割を担っている。


 平和立国とした名高い、東洋の一国──。

 国家転覆を謀ったテロとなれば、間違いなくインパクトは大きく、どのメディアも無視することはあり得ない。

 結果、喧伝された報道は国内全体に広まり、『彼ら』含む国民全体は目を背けることもできず、『その事実』と向き合わざるを得なくなる──。




 そうして、目論見通り、事は為った──。




 ……全く『狙った形』としてではなかったが。




「彼らには一筋縄では通用しない。

 心象操作されるのは当然の結果だろう」


 報道は、すべてを映し出す必要もない──。

 十あるうちの七を流し、不足があるからといって罰せられることもない。

 支障となるものは切り取りし、全景がそうであるかのように仕向けさせるのは世の常──。

 映像を繋ぎつつ解説者による後押しは、不特定多数の観る者の印象を、考える余地なく狙いとする着地点へ誘導するのはじつには優れている。

 そんな事実めいた報道には、一例がある。


 国の重要ポストに就く者が銃弾で倒れた事件。

 事件の有り様は即座に国内外へ発信された。

 しかし、不思議にも一部の情報は欠落していた。

 ……事を引き起こした者の情報、特に動機が──。

『速報』という位置付けであれば、よろしい。

 しかし、即現行犯逮捕したという事実がありながらも、幾日も経ったあとでの『解禁』には裏があるように思えてならない。

 ましてや、『選挙期間』が明けてからの報道はそれを抱かせるに十分過ぎた……。


 この一例はまさしく報道者には『報道しない自由』を持っていること、そして『益に為り得る団体・個人』とは『関係を持つ』ことを、たしかに示している。

 その例に漏れることなく、テレビ等を見やれば、今もあからさまな論点ずらしが目立つ。


 ……テロ行為が悪であることは否定しない。

 しかし、こちら側が提示する要求を一切取り上げず、ただ『テロリストは悪』、『悪には屈しない』といった、ただ『起こった出来事だけを切取り』する報道は心象操作以外の、なにものでもない!!


 それを知ってのSNSによる犯行声明ではあったが──。


 ……他メディアによる加工は施されず、切り落とされず、そのまま全国、全世界に発信出来はするものの、未だテレビの報道力は断然強く、狙いとした声明が国内に広く浸透していない事実にはもどかしさを感じるしかない。


「それについては、気にする必要はない」


 青年はデスクから窓際に立ち、変わらず吹雪く外の景色に視線を移す──。


「彼らに不満を持つ者は多く多い──。

 直に彼らが担ってくれる」


 外部に協力者がいるのか──??

 仮にいたとして、この流れをどう変えていく──!?

 ……何かしら奇策があるのか。


 ──まぁいい。

 策があるというのであれば、任せることとしよう。

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夢のあと――。振り返れば、いまもまた虚しい……。 祈戸 悟 @kido_8726

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