第4話 密会
狂宴の翌朝。
屋敷の者がまだ眠っている中、蘇芳は一人起き出して散歩に出かけた。
いつものように桜の木の所に行こうかと思ったが、瑠璃に探しに来られるのが面倒で別の道を歩き出す。
(まったく、どうしたものか…)
蘇芳は相変わらず迫ってくる瑠璃を退けながらの生活に辟易していた。
どうにかして瑠璃と青藍をくっつけてしまいたかった。
妖力の差も瑠璃が青藍を受け入れられれば何の問題もないはずなのだが…。
(…いけない…)
考え事をしながら歩いていたせいで、蘇芳は随分と人里の近くまで来てしまった事に気付いた。
人の姿をとっているとはいえ、何処の人間かと不審に思われても困るので、早くこの場を離れようと、もと来た道を引き返す事にした。
「キャーッ!」
何処からか女の悲鳴とガサガサと茂みを揺らす音が聞こえた。
(何事だ?)
突然聞こえた悲鳴に蘇芳は警戒しながら声がした方へ近づく。
少し開けた場所に出ると若い女が一人、地面に座り込んでいた。
若い女もいきなり現れた蘇芳の姿にびっくりしている。
姿を見られた事に舌打ちをしたかったが、そのまま無視して通り過ぎるのもどうかと思い座り込んでいる女に声をかけた。
「どうかしたのか?」
驚いた顔をしていた女は、蘇芳の声にはっと我に返った。
「猪にびっくりして転んでしまったのです」
「猪?」
どうやら先程の茂みを揺らす音は猪が逃げて行ったせいだったようだ。
蘇芳が近付いて来たことに気付いて逃げて行ったようだ。
「立てるか?」
手を差し出して立ち上がらせようとしたが、女は「痛っ!」とうめき声をあげた。
どうやら転んだ拍子に足を痛めたようだ。
あまり人に関わりたくはなかったが、今更知らない振りで立ち去る事も出来ない。
蘇芳は女の背中と膝裏に両腕を差し入れると、軽々と抱き上げた。
「えっ?」
女は突然抱き上げられて戸惑ったような声をあげる。
「歩けないだろう。送ってやる」
「そ、そんな…。重たいでしょ?」
女は恥ずかしそうに言うが、鬼の蘇芳にしてみれば大した重さではない。
「大丈夫だ。家はどっちだ」
女の道案内で山を下りて里の方へと向かった。
関わらないつもりが自然とお互いに名乗りあっていた。
女は名前を浅黄と言い、年は十八だと告げた。
里から少し外れた場所に女の家はあった。
こじんまりとした家で去年、母親を失くし一人暮らしだと言う。
家に入ると浅黄を床に降ろして足の怪我を確認する。
少し腫れてはいるが大した怪我ではなかった。すぐに歩けるようになるだろう。
「ありがとうございます。…何のお礼も出来なくて申し訳ありません」
蘇芳にはそんなふうに謝る浅黄の姿がなんともいじらしかった。
「別に構わない。私が勝手にやった事だから」
すぐに立ち去らなければいけないと思いながら、蘇芳は何故かその場から離れがたかった。
それでもあまり屋敷を空けると瑠璃に不審に思われる。
蘇芳は直感で瑠璃に浅黄の存在を知られてはいけないと感じていた。
「…また来て良いか?」
蘇芳がそう問うと浅黄は嬉しそうに顔をほころばせた。
こうして二人の秘密の逢瀬が始まった。
浅黄の家に通うのも、出入りをあまり近所に見られるわけにはいかないからと、山で落ち合う事にした。
浅黄は蘇芳の事を何か訳ありだと感じたのだろう。そんな提案にも嫌とは言わなかった。
そうして逢瀬を重ねるうちに、いつしか二人は口づけを交わすようになった。
一度口づけを交わしてしまえば、蘇芳はもう止まらなかった。
最近では京から攫ってきた女には口での奉仕しかさせていなかった。
抱くのならば好きになった女だけにしたいと思ったからだ。
そんな蘇芳にようやく「抱きたい」と思う相手が現れたのだから止まるはずがない。
口づけはすぐに熱を持ったような激しいものに変わる。
唇に吸い付きながら浅黄の帯を解き、着物をはだけると肌が露わになった。
胸の突起に吸い付くとすぐにそれはピンと尖る。
「あぁっ、蘇芳…」
片手で胸の突起を弄りながら、もう一方の手で蜜口を探る。
しっとりとしていたそこはやがてピチャピチヤと水音をさせ、蘇芳の指を濡らす。
ぐいっと足を開かせると蜜口の上の突起に舌を這わせる。
突起を舌で弄りながら蜜口に指を差し込むが、かなりキツい。
蘇芳は自分が浅黄にとって初めての男だということに歓びを感じていた。
指で十分にほぐした後、陰茎を蜜口に押し当てる。
自分のモノがズブズブと飲み込まれていく様に蘇芳はますます快感を覚えた。
「ああっ!」
痛みに耐えながらも浅黄は蘇芳を受け入れる。ようやく蘇芳のモノが奥まで到達したときには、浅黄は目尻にうっすらと涙を浮かべていた。
蘇芳はその涙をそっと舌ですくい取る。
「動いても大丈夫か?」
「…はい…」
消え入りそうな小さな声で答える浅黄が堪らなく愛しかった。
初めて女を経験したとき以上の快感に驚きながらも、蘇芳はガツガツと腰を打ちつけ続けた。
(もう、離したくない…)
そう思いながら蘇芳は浅黄の身体に溺れていった。
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