第5話 凶行
(近頃蘇芳の様子がおかしいわ)
瑠璃はイライラしながら蘇芳の姿を探し回っていた。
以前はあまり出歩かなかったのに、最近はよく屋敷を空けている。
「狩りに行ってきた」と言って獲物を持ち帰るが、それにしては変だと感じていた。
捕ってくる獲物はどれもすぐに狩れるような小物ばかりだ。
ただ単に屋敷を空けた口実にしているとしか思えなかった。
たとえ問い詰めてもしらを切るに決まっている。
瑠璃はこっそり蘇芳の後を付ける事にした。
瑠璃の妖力をもってすれば、蘇芳の後をつけるなど造作もない事だった。
(何処へ行くんだろう?)
蘇芳は屋敷を出ると山へ向かわずに里の方へと降りて行った。
ふと、その先に見慣れぬ女の姿があった。
女は蘇芳を見ると嬉しそうに顔をほころばせ小走りに駆け寄った。
二人はすぐに抱き合い、瑠璃が見ている事にも気付かずに口づけを交わしている。
(何てことだろう。私の蘇芳があんな女に…)
瑠璃は駆け寄りそうになる衝動を抑え、なおかつ殺気を消した。
ここで蘇芳に気づかれるわけにはいかなかった。
瑠璃は一旦その場を離れた。
(さて、どうやってあの女に思い知らせてやろうか?)
蘇芳が屋敷に戻るのと入れ違いに瑠璃は里へと向かった。
まずはあの女の居場所を突き止めるのが先決だ。
蘇芳の匂いを頼りに歩いて行くと里の外れに小さな家が見えてきた。
どうやらあそこが女の住処らしい。とりあえずはあの女が誰と住んでいるか確かめよう。
「ごめんください」
「はーい」
呼びかけるとすぐに返事があって戸が開いた。
現れたのは、先程蘇芳と抱き合っていた女だった。
すぐにでも首をへし折ってやりたかったが、何食わぬ顔で問いかけた。
「こんにちは。吾平さんいらっしゃる?」
女はちょっとびっくりした顔をしたが、すぐに笑みをこぼした。
「まあ、どちらかとお間違えでは? ここは私一人なんですよ」
(ふーん、一人暮らしね。いい事を聞いたわ)
「あら、嫌だ。何処かで聞き間違えたみたいだわ。ごめんなさい」
「いいえ」
「それでは失礼します」
瑠璃はニッコリと微笑むと、さっさと暇を告げて女の家を後にした。
(さて、どうやって思い知らせてやろうかしら?)
考え事をしながら歩いていると、ドンと誰かとぶつかった。
「おいおい、何処を見て歩いてるんだよ」
見るからに柄の悪そうな男が三人、目の前に立っていた。
(やれやれ。そっちだって避けなかったくせに、何処を見ても何も無いでしょうに…)
人間の男なんか何人いても瑠璃の相手じではなかったが、人里で面倒事は避けたかった。
「ごめんなさい。ちょっとよそ見をしてしまって…」
「何だ。見かけない顔だな。どうだい? 俺達と遊ばないか?」
(何で私がこんな連中なんかと…)
瑠璃は男達の言葉を無視して通り過ぎようとして考え直した。
「私より、もっといい女を紹介してあげるわ」
******
浅黄がそろそろ夕食の支度をしようとした時、誰かが戸を叩く音が聞こえた。
(今日は訪ねて来る人が多いわね)
何の疑問も抱かずに戸を開けると、そこには見知らぬ男が三人立っていた。
やけに下卑た顔をしている。
身の危険を感じた浅黄は慌てて戸を閉めようとしたがそれよりも早く男達は押し入ってきた。
「なるほどいい女だな」
逃げるより先に腕を掴まれ床に押し倒された。
「男に飢えてるんだって? 俺達が相手してやるよ」
着物の裾を捲られ、下半身が露わになる。足を左右に開かれ、陰部が晒される。
「どれ。ちょっと味見させて貰おうか」
そう言うと男は浅黄の突起に吸い付いてきた。体を起こそうにも他の二人に押さえつけられて身動き出来ない。
ちゅうちゅうと突起を吸われ蜜口に指を差し込まれぐるぐると掻き回される。
蘇芳によって快感を知っているそこはあっという間に蜜で溢れた。
「本当に男に飢えているみたいだな。汁がいっぱい出てきたぞ。そろそろ太いものが欲しいだろ?」
蜜口から口を離した男は陰茎を取り出すと一気に刺し貫いた。
「いやーーっ!」
がっしりと浅黄の腰を掴まえた男は何度も奥まで抽出を繰り返す。
興奮した他の男は浅黄の胸の突起にしゃぶりつき、もう一人は陰茎を口に押し込んだ。
「ううっ、んーーっ」
口いっぱいに陰茎を押し込まれ、声を出すことも敵わない。
浅黄の中を掴んでいた男はやがて達したのか、蜜口から陰茎が抜かれた。ほっとする間もなく次の男の陰茎が差し込まれる。
そのうちに口に押し込まれた陰茎がピクピクっと収縮して、浅黄の口の中に白濁を流し込んだ。
「ゴホッ! ゴホッ!」
むせ返って咳き込んでいる浅黄の頭を、最初に浅黄を犯した男がひっ捕まえる。
硬さを取り戻した陰茎を口に押し込んできたが、浅黄は迷わず噛み付いた。
「痛え! このアマ!」
ガンッと顔を殴られた瞬間、ゴンと鈍い音がした。囲炉裏の角に頭をぶつけたらしく、浅黄はすうっと意識が遠のいていった。
******
男達があの女の家に入って行くのを瑠璃は木立の陰に隠れて見ていた。
事が終わった後で蘇芳を呼び出して、あの女が男を誘い込んでいたと告げるつもりだった。
けれど、瑠璃が思っているよりも早くあの男達が慌てたように家を出てきた。
不審に思った瑠璃は家に近付き、そっと戸を開けると中は青臭い匂いで充満していた。
匂いに顔を顰めながら奥へと進むと女が全裸で倒れていた。
既にこと切れているのは明白だった。
「…人間て弱いのね。頭を打ったくらいで死ぬなんて…」
瑠璃はひとりごちて倒れている浅黄を見下ろした。
(あなたが悪いのよ。私の蘇芳に手を出すから…)
瑠璃は自分が直接手を下すこともなく邪魔な女を排除できてホッとしていた。
瑠璃は踵を返すと上機嫌で女の家を後にした。
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