第4話 代わりの者

 私は完璧でなければいけない。完璧でないと親に怒られる。


 完璧であれば、怒られることなどない。


 少しのミスがあれば、親は私を叱る。


 父は見て見ぬふりをする。母は私を怒鳴り、殴り、ご飯さえもない日なんて当たり前だった。




 私の母は自分の夢が学生の時代に消えた。


 母は優等生だった。何をしても一番で、学生から憧れる存在だった。将来は有名な大学に入ることが夢だった。


 夢というより、必然的にそれが可能なくらい優秀な生徒だった。




 親はそんな我が子が誇りだった。


 そのため、周りに自慢の娘として話をしていたくらいだった。


 出来て当たり前、それが母には出来ていた。出来ないことなどなかった。


 勉強はいつも満点。生徒会長としてトップで居続け、周りの生徒からも信頼と信用があった。


 先生からも認められていた。 


 


 母の夢は有名な大学に入ることだった。


 だって、完璧で模試も上位に入っていた。


 赤本を買って有名な大学の過去問をしていたが、合格ラインをはるかに超える点数だった。


 この世に生まれてきた時から天才だった。才能ではないく、天才の領域だった。


 


 高校は優秀な生徒ということもあり、学費は免除されていた。つまり、お金は一切必要としなかった。すべては学校負担で。


 本来必要とされる学費は、教育費として塾へ使われた。それでも、お金は余るくらいだった。


 ある日事件が起きた。




 大学受験に向かう途中に、電車が大事故にあった。その電車に乗っていた母は重症だった。


 その電車には試験会場へ向かう学生が何人か乗っていた。それ以外でも、他の大学受験に向かう生徒、出勤する人など多数の人が事故にあっていた。




 母が向かう大学では、参加者の免除が約束されていた。


 事件にあった関係者は、模試や学校の成績をみて、その大学の成績に相応しいと判断されれば、試験を受けずとも入学は可能となっていた。そして、有効期限は一年とされ、遅くても一年半までは入学が可能された。来年の後期が始まる前までに、通える状態となれば入学はできたのだ。


 事故にあった他校の生徒は運よく、軽症で入学できる生徒もいた。


 ただ、母の容体はかなり酷く回復の見込みはかなり難しかった。




 母は運が悪くかなりの重症を負い、昏睡状態になっていた。一年の昏睡状態だった。医療費は電車会社が前面に支援してくれたのだ。


 医療費については問題はなかった。だけど、昏睡状態が一年と長く続いたため、後遺症が残った。


 過去の記憶が一部欠損、手の麻痺が残った。それに歩くにも時間がかかった。筋肉の低下によって、歩行が出来なかった、


 後遺症が多く残ったため1年半までには到底治せる時間などなかった。




 大学については残念ながら諦めるしかなかった。


 そのことを知った両親はぜつ絶望感に襲われた。それは、母にも言える。


 特に母の両親である母親が一番ショックを受けていた。


 自慢の娘が大学に行くことが出来なかった。


 それにショックを受け精神的にもおかしくなった。


 母の両親、母親と父親がケンカをする日々が続いた。それは娘がいないところでだった。


 そんな毎日が続いたこともあって、両親は離婚をすることになった。




 一方、母は大学に行けないショック、後遺症との闘い、精神障害になり、何もかもが水の泡となった。


 自分の夢がすべて失われ、生きる目的を失った。


 母は病院の屋上に立ち、命を絶つ選択を選んだ。


 母と同じ年の少年が偶然にも屋上にやってきて、母の自殺行動を止めに入ることが出来た。


 のちに、少年も大学は違うものの、母と同じ境遇だった。




 長いリハビリを少年と一緒に乗り越え、退院する日が来た。


 その間、母は少年と一緒に居続け、恋を寄せていた。それは、少年も同じだった。




 その後、母と少年はお付き合いした後、少年と結婚をすることとなった。


 一部過去の記憶の欠損、そして手のま一部過去の記憶の欠損、そして手の麻痺は残ったままだ。




 その後、その少年と母の間に七が生まれた。


 母は自分の夢を諦めてはいなかった。




 「自分の子供なら、私の天才も受け継いでくれる」




 そう思っていた。




 だけど違った。


 簡単なことにかん関しては覚えは早かった。だけど、それ以外の複雑なことに関しては覚えは遅かった。


 実際、幼稚園に入ってからも、周りと比べると劣っていた。




 「なぜ、言ったことがわからないの!簡単なことでしょ!」




 毎日怒鳴り声を上げる。


 父は子供には無関心だった。父は母にしか興味がなかった。


 実の子は見向きもしなかった。




 出来なかったことは毎晩やらされた。できなければ、罵声、怒鳴り声、手を飛んでくる。


 そんなことが毎日だった。


 


 「私は、お母さんの言ったことをしないと怒られる。怒られないようにしなきゃ」




 そう思い続けて私は頑張った。


 自分に言い聞かせながら、私は頑張った。


 


 必死に頑張ったおかげで、幼稚園で私はトップになった。


 


 「これで、お母さんに喜んでもらえる。褒めてくれる」




 私は、お母さんのもとに行き知らせた。


 すると、予想を超える答えが返ってきた。


 


 「それが当たり前のことなの!それをなぜ今までできなかったの!」




 褒めてもらえると思った。


 でも違った。


 一回だけではダメだってことを。


 だから、何回も何回もずっと一番であり続けた。




 「七。それが当然なの。周りより一番であり続けるの」




 「お母さん、私はいつも頑張って一番でいるのに、いつになったら褒めてもらえるの?」




 私はお母さんに言った。


 


 「それは、私の夢が叶った時に褒めてあげる。それはまだ先のことよ。幼稚園、小学校、中学校、高校とずっと一番で居続けるの。そして、私がいけなかった大学に行けたら褒めてあげる」




 お母さんは私に難しいこと言ったが、一番であり続ければきっと褒めてくれると信じて頑張ろうと思った。




 ある日、幼稚園で失敗をしてしまった。


 すると、お母さんは激怒した。人が変わったように。


 私を叩いた。怒鳴った。そして、お仕置きとしてご飯もなかった。


 ご飯を食べる時間があるならと、勉強させられた。




 そんなことが度々あった。


 小学校に上がってからは、さらにエスカレートしていった。




 次第に七も変わっていった。


 表情が無くなった。


 学校では誰とも話すことはなかった。


 ずっと一人で勉強をしていた。


 


 そんな極限をずっと体験してるのか、ゾーンに入りやすくなった。


 周りがスローに見えたり、集中力が上がったり。


 極限の中でいつの間にか能力を身に着けていた。




 「一番にならないと」というプレッシャーもあり、七は話しづらい雰囲気を出している。人を寄せ付けないオーラと。




 親の為に一番にならないといけない。


 気をうかがうことがあり、周りのことを観察する力も身に着けていた。




 私はずっと一番であり続けないといけない。


 一番でないと母に殴られる。怒鳴られる。恐怖心。


 そんな中で私は生きていた。


 そんな生活がずっと続いていた。


 


 そして、わたしは逃げた。


 母に縛られることに逃げた。


 逃げても結局、母のところに戻ってこさせられた。


 そして、いつものように。




 私は母のおもちゃじゃない。


 なのに、なんでこんな目に合わなくてはならないのか。




 みんなと一緒に遊びたいとおもった。


 でも、そんな夢は叶わない。




 私はこの現実から逃げたい。


 そう思い、私は自らの手でこの世を去った。




 この世を去ったあと、母の姿が見えた。


 母は笑っていた。




 「所詮、その程度でしかなかったのか。残念でならない」




 悲しいと思ってはくれてなかった。


 全て自分の願いのためしかなかった。


 母はそういう人だ。






 次の日…


 


 雫は仲間の人たちを集めた。




 「おはよう、みんな」




 空気が濁んで重かった。


 昨日のメッセージで、かなり精神的なダメージがあっただろう。




 『君たちは自らの手で死んでいる』




 その一言で、昨夜みなパニックになっていた。


 


 「優奈、七の体調はどう?」




 「まだ、ダメだわ…ずっと寝ている状態よ」




 無理もない。昨日の今日だ。


 七だけが記憶を取り戻し、過去の記憶をみせられたのだから、精神面は僕たちが思っている以上の事だろう。




 「昨日のメッセージで『このまま続けるか』について、みんなの意見を聞きたいわ。今回も同様、全員一致が条件よ」


 


 全員一致…


 果たして今回は上手く行くのか?


 七があの状態になっているくらいだから、今回は難しいに決まっている。




 ただ、今回はいつもとメッセージが違うみたいで、こちらからメッセージが送れることだ。


 一方的に送ってこられたメッセージが、返信可能と書いてあった。


 送るのは、生徒会の代表である雫が送るだろう。




 みんな考えているようだ。


 その中で凛が発言した。




 「今回の件、私は見送りにさせてほしいわ。まず、七の状態が心配なこと。それから、真実の一部しか知らされてないけど、自分の中で整理整頓が出来ない…またパニックに陥ってしまったらと考えると、今の私では耐えられない」




 凛は一回、パニックになっている。


 だから、凛は今回冷静な状態で真実を挑みたいみたいだ。


 七の様子も誰もが心配している。




 「わかったわ。凛が反対ということで今回は見送る結果になったわ。反論は認めないわ。さっき言ったように『全員一致が条件』と言ったからね。まずは七の様子が最優先で考えましょう」




 雫から仲間に向けて今回の意向を話した。




 「ひとまずは七の状態を最優先に考えましょう。今日は各自、自由行動にするわ」




 そう言った後、みんなは各自の自由行動へと移った。




 優奈は七の様子を見に行った。


 凛とはるは部屋を出て屋上へ向かった。


 僕を含む男子四人は生徒会室に残った。


 雫も同様に残った。


 何も会話はないまま沈黙が続いた。




 


 私はわかっていた。クラスの人から冷たい目で見られて避けられているのを。それは私もわかっていた。


 誰よりも一番になること。


 


 私は生徒会長として学校の代表になった。


 候補者はいたものの、私の成果や意見を述べる場では、反論も出来なかったくらいだった。


 生徒会長になっても、同じ生徒会の仲間たちからは良く思われていなかった。


 気難しいところ、寄せ付けないオーラ。


 それがあって、私に声をかけるときは最小限の時だけだった。




 高校に上がってからも、私は一番であり続けた。


 成績がトップであっても、満点をとれなければ、いつもの罰を受けていた。


 私は精神的に限界を迎えた。




 私は母の代わりではない。私は私だ。


 皆みたいに、楽しく遊んで笑ってはしゃいで、そんな学生生活を送りたかった。


 でも、母はそれを許さなかった。


 門限も厳守。


 


 「私は母の代わりじゃない。私は七として生きたかった。けど、母がいる限り私は自由にはなれない」




 七は死ぬことを決意した。




 学校から帰ってくると自室に戻り、縄を首にかけた。


 


 「これですべて解放される。母に指図されることもなくなる。恐怖などない。ただ、この輪っかに首を通せば解放される」




 そして、七は自らの手で死を選んだ。


 死に際に母の姿が見えた。


 母は笑っていた。




 「(なんで笑っていられるの…私にはわからない…)」




 それを最後に私の意識は次第に暗くなっていった。


 そして、目覚めたらこの世界にいたんだ。


 記憶をなくした状態で。




 長い夢を見たのか目覚めたら、隣には優奈がいた。


 私はあの後、どうなったのかわからない。




 優奈は七が動いたのを感じたのか、優奈は眠りから覚めて、




 「七ちゃん!」




 泣きながら、七に抱き着いた。




 私を心配してくれているかわからない。けど、泣きながら飛びついてきた。多分、心配してくれているのだろうか…




 「優奈…私は大丈夫だよ」




 まだ大丈夫じゃない。けど、安心させるためにはこの言葉しか見当たらなかった。




 「嘘よ…大丈夫じゃないってこと!七ちゃんは、真面目だからわかるよ!私には七ちゃんの過去がどんな辛い出来事があったのかわからないけど、私はわかるの。今は正常じゃないってこと。だから、辛いことあったら相談してほしい」




 記憶を取り戻した私は、今の状態で仲間に頼って良いのかわからなかった。


 それを聞きつけた雫が駆け付けた。




 「七!七!」


  


 泣きながら雫は七に抱き着いた。


 一番心配してたのは雫みたいだ。




 「雫…大丈夫だよ、私は」




 「大丈夫じゃないでしょ!これだけみんなを心配させておいて…」




 七と雫の間には人並み以上に絆のようなものがある。




 「雫、私に何があったのかみんなに話す。この話で今後、みんなにどのように答えを出すのか、きっかけにもなると思うから」




 そう七は言った。


 それを聞いた雫は納得した様子。


 そして、七たちは生徒会室へ向かった。


 


 雫は全メンバーへ、生徒会室へ集合させるようメッセージを送った。


 そして、すべてのメンバーが生徒会室に集合した。


 みんなが七を心配した様子で見たが、ほっとした様子も見せた。




 「七!大丈夫なの!?」




 「大丈夫だよ、凛。心配してくれてありがとう」




 凛もよっぽど心配していたみたい。


 凛だけでなく僕を含め、みんな心配していたのだ。




 「雫…私が何があったのか、みんなに伝えてもいい?」




 七は雫の方をみて雫は七に向かて頷いた。




 「私があった出来事をみんなに話したいと思う」


 


 七は昨日、メッセージにあった内容を伝えた。




 「私はメッセージが来るまで過去の記憶がなかった。でも、メッセージが来た時点で私の過去の記憶が戻った。でも、その記憶の内容はあなたたちが想像していた過去の記憶とは違っていた」




 そう七は話した。


 僕が想像していたような内容ではなかったみたいだ。


 僕が想像していたのは、日常生活の最中にこちらの世界に飛ばされたと思っていた。


 でも、それはたぶん違うような気がした。




 「私が見たのはもっと残酷で悲惨な過去の記憶だった。今回がそうであるかもしれない。次回は違うかもしれない。だけど、今回、私の場合はそうだった」




 メッセージにはみんな『自殺した』と書いてあった。だとしたら、僕も含めみんなの過去の記憶はこれから、残酷で悲惨な記憶に違いない。


 僕はそう確信した。




 「なにそれ!それじゃあ、これから私たちが見せられる記憶は、七が言ってた内容に違いないってことでしょ!そんなの嫌よ!私は…」




 凛が興奮気味に話した。


 送られてきたメッセージ『自殺』


 そして、七が見た記憶。


 それが何を意味しているのか、凛を含めみんなはもう理解したことだろう。




 「でも、そうと決まったわけじゃないよ、凛…」




 はるはわかっていても、現実を受け入れないようだ。




 「はる!話を聞いたでしょ!これから私たちの記憶はそうなのよ!」


 


 凛は怒鳴ったように、はるに向かっていった。


 はるはそれに少しおびえてしまったようで、




 「ごめん、はる…そんなつもりじゃなかったの…怒鳴ってごめん」




 「いいよ」と言った素振りをはるは見せた。




 「みんなパニックになるのも仕方ないわ。だけど、七が言ったようにこれから私たちに見せられるのは、悲惨で残酷な過去の記憶よ。話からすると『違う』なんて言えないわ」




 雫も思ってたみたいだ。


 これから見せられる内容がそうであるように。




 「みんながまだ詳しく聞きたいというなら、私はこのまま話を続ける。だけど、もう聞きたくないというなら話さない。特に凛。あなたが一番パニックになりやすく、混乱してしまうから、凛が良いなら話す」




 この中で一番パニックになりやすいのは凛だ。過去にもそうだった。メッセージが送られてきた時、凛は倒れてしまった。


 みんな平常心てわけではないけど、まだ正気を保てられている。




 「大丈夫…今後、どうなるかわからない。だから、私は七の話を最後まで聞きいれるわ。どんな内容であっても」




 凛は決心したようだ。


 


 「私はみんなからみれば、真面目で頭がよく、人を寄せ付けない雰囲気を出していると思うわ。それでも、そんな私をみんなは受け入れてくれた。だけど今回、記憶を取り戻したことによって、素直に信用してもいいのかわからなくなった」




 僕が初めて会った時、確かにそうだった。


 近寄りがたい雰囲気を出していた。


 球技大会では頭の良さも出していた。


 状況把握。なにもかもが、完璧だった。


 それにはきっと、七の記憶に隠されてるのだろう。




 「私は母の代わりだった。母の願いが叶わなかった故、それを私に叶えさせようとした。一番、優等生、それ以外は許されなかった。失敗すれば母から虐待を受けていた。優等生として過ごした。その結果、感情が無くなり人を避けるようになった」




 七の過去にそんな出来事があるとは思わなかった。


 僕含め、みんなも同じような体験をしているだろう。


 僕の記憶が取り戻すことが出来れば、僕はどのように向き合うのだろうか。 


 


 七の話は続いた。


  


 「球技大会では、優勝できてうれしかった。今思えば、この世界に来て私は幸せだった。記憶を取り戻せば、過去のことが知れた。良い方にも悪い方にもどちらもとれた。過去の出来事を知ったとき、私は恐怖を感じた。『また一番にならないといけない』『あの恐怖が待ってる』そう感じた。みんなとも、どのように過ごせばいいのかわからなくなった」




 七はそう話した。




 雫は七に話した。




 「過去は過去よ。今まで通り、仲間と一緒に楽しいと思っていたのなら、そのままでいいわ。私は過去を知った七でも、避けたりなんてしないわ。今まで通り、一緒にはしゃいで、時にはバカどもを見てあげればいいのよ」




 「あの…雫?『バカども』て、もしかして男子たちの事いってます?」




 僕の間違いがなければ、多分いつの間にか、僕も『バカ』の仲間入りにされていると思うんだけど。


 


 「そうよ。利木くんも『バカ』の一員でしょ?男子四人組は」




 ですよねー。わかってました。


 一緒にいることも多く、遊んでいることもあることから、いつの間にか仲間になっていたようだ。




 「おい!雫!俺も入ってんだ!」




 海も仲間に入っていることは知らなかったようだ。




 「僕は『バカ』の仲間でもいいかな。楽しかったら何でもいいし。一緒にいて楽しいことしかないからね」 




 陣がそう言った。


 陣は楽しかったら、本当に何でも良いみたいだ。


 実際、楽しい表情と好奇心しかない。




 久吉は相変わらず、普段通りだった。


 久吉の割には何も言わなかった。


 ただ、嫌という感じでもなかった様子。




 「後は七次第よ。過去と向き合い、今までと変わりない生活を送るのか、それとも七は過去に囚われながら、この世界で生きていくのか。それを選ぶのは七よ」




 私は選ぶ必要などなかった。


 結果は、もう出ている。


 仲間と一緒に遊びたい!


 私は母の代わりではない。私は私だから。


 それをみんなに伝えることにする。


 


 「私は…仲間と一緒に遊びたい。こんな性格でも仲間が良いというなら。生きていた時に出来なかったことをしたい!もう、優等生であり続けるのは嫌だ!」




 七は心から叫んだ。


 僕には聞こえた。


 それが本心だと。




 「ようこそ、七!『名もない生徒会』へ!」




 雫がそういうと、七は泣きながら笑顔をみせた。




 他の仲間たちも、笑顔で歓迎していた。


 反対するものなどいなかった。


 いつもの七が帰ってきた、というより『成長して帰ってきた』というべきだろうか。


 なにか吹っ切れたような、そんな七だった。




 話は今後について雫が話した。




 「今後、一旦はミッションを保留にするわ。いつもの、楽しい日常に戻るだけよ。記憶を取り戻したいと、世界を知りたいと思った時、全員一致の場合のみ、この先の真実を知るために再開しよう。誰の記憶が戻るかわからない。だからの、全員一致が条件になるわ」




 今回の七の件だけに慎重に事を進める方針へと変わった。

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