1億奪還編
作戦決行
「天皇陛下が亡くなりました。」
国民に天皇陛下が亡くなったことが伝えられたのは事件から五日経った頃だ。
天皇陛下は末期のガンを患っていておりその病で亡くなったという話が作り上げられ、国民は悲しみに暮れていた。
事件から五日経った今でも夢だったように感じる。それでも普段の日常は俺を置き去りにしていく。
「おはよう、今日も頼んだぞ鷹村。」
課長は毎日俺に笑顔で挨拶してくれる。
この五日間の間に1億円の取引に必要な書類は全て完成し、この取引の責任者に課長が俺を推薦してくれた。
つまり1億円をどうするかの主導権は完全に俺が握っている。
「鷹村、昼一緒に食べようぜ!」
「お前、1億の契約取り付けたってすげーな!」
「先輩は彼女とかいるんですか~?」
俺に優しくしてくれる営業部の皆の言葉が頭の中でぐるぐる回っている。俺が1億を送ってしまったら銀行の信用が欠落し、間違いなく皆に迷惑をかける。倒産してしまえば皆と皆の大切な人たちの暮らしを奪ってしまうことになる。
「どうすりゃいいんだよくそがぁぁぁぁ!!!!」
営業周り中、車の中で思わず叫んでしまった。こんなに悩んだのは中2の頃さくらちゃんとみきちゃんのどっちに告白するか悩んだとき以来だ。結局どっちも付き合えなかったけど・・・
その時、ラインの通知が鳴る。凛からだ。
「今日の午後14時決行だ。お前に命運がかかってる頼んだぞ。」
ー14時ー
俺は銀行の窓口に向かい、1億円を融資する旨を伝える。
「1億円、融資をお願いします。」
背に腹は代えられない。俺は自分の命のために1億を振り込むことにした。
「正常に振り込まれました。鷹村さんやりましたね!」
窓口を担当している新人行員は嬉しそうにそういっているが俺は愛想笑いをする余裕すらなかった。
果たしてこれでよかったのだろうか。
その時凛から電話がかかってきた。あぁ、これで解放される・・・
「やられた!!!何者かが私のハッキングに重ねて口座をハッキングしている!どういうことだ!!!」
「え、ま・・どゆこと?」
姿は見えないが凛が異常なほど焦っているのが分かる。
「海外にある複数のダミー口座を使い、数か国をまたいで金を洗浄し、最終的に私の手元に渡る算段だったんだがおそらく私がハッキングする前に既にやられていた、!お金が振り込まれた直後、私と同じような算段で金を移動させ姿を眩ました・・・」
「は、何者かに1億円盗まれたってことか?」
「あぁ、超高度なハッキング。完全にしてやられた。」
「お、おい!!!どうすんだよ!!!!」
「今から資金がどこに消えたのかログを辿る。お前は銀行内に怪しい動きをしてるやつがいないか探せ。このハッキングは100%1億が振り込まれることを知っている人物だ。銀行内の者は全員敵だと思え。」
「り、凛の会社の奴かもしんないだろ。そっちこそ探せよ!」
「そっちは朔に張らせている。そっちに集中しろ。一旦切るぞ。」
とんでもない事態になった。1億円の契約を取り付け大喜びしていた五日前の自分をぶん殴りたい。
全員敵だと思え。もし、優しくしてくれた営業部の皆の中に犯人がいるのならそいつは俺が捕まえないといけない。
俺は全速力で皆のいる部屋へ駆け出した。
烏の黙示録 毎朝バナナ @urara0193
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