第5話 魔力操作の秘密の練習
ようやく足腰がしっかりしてきた。
これで家中うろうろ出来るようになった。
たまに家にやってくる若目の女性。
俺好みのタイト目なスカートを履いて来てくれるから、お尻を眺めてしっかりと食い込みを確認した。
でもこの女性は露骨に嫌そうな顔を向けるのだ。
きっと子供嫌いなんだと思う。
少しずつ人生ってやつをやってみよう。と決めたがどうするか考えた。
まずはこの世界の言語だ。
話は理解出来る。だが、話せない。
話せるのは赤ちゃん語だけ。
今はしょうがないと我慢するしかない。
待てよ?
そもそも人間って何歳くらいから話せるようになるんだ?
そこは、置いとこう――。
月日が流れて――。
両親の会話に聞き耳立てて聞いていた甲斐もあって、この世界の言語を話せるようになった。
だが、文字を書くのはまだ出来ない。
ハイハイから成長して歩く事が出来たから家中を物色する事にした。
そんな時、ちょうど良く言語の勉強になりそうなものを発見する。
本だ――。
物置きから数冊の本を見つけ出した。なんか高級そうな革カバーに入ってる。
俺が持っていた数に比べると見劣りしてしまう。
この世界ではあまり読書という文化が無いのだろうか。
俺は案外、読書は好きだった。
集めた数百冊にも及ぶ蔵書の光景を見ては酔いしれた。
言うても、全部ラノベだったが。
最初は文字が読めないから、寝る前に父親に読み聞かせて貰った。
その本を読むにつれて、両親は何故か恥ずかしがってるのか、照れているのか分からないが、顔を赤く染め出す。
俺もその理由がわかった頃だ。
内容は男と女の色恋についてだが、ななかなかこれがタイムリーな内容だった。言ってみれば、不倫の話。
時折ちゃんと喘ぎ声を出してしまうシーンもあった。だからだと思う。
(こんなの子供に読み聞かせるなんてどうかしてるぜ?)
それでも、こんな内容の本のおかげで文字を読めるようになった。
この本を読み聞かせてから、俺を寝かしつける。
そこから火が付いたように、両親は俺の弟を作ろうと励んでいた。
そこからさらに家にある本を読み漁った。
文字が読めるのはなかなか楽しい。
勉強は嫌いだったが、ネトゲの攻略本を読んでると思えば、自然と内容が頭に入ってきた。
これも覚えが異常に良い。ってのもあるのかもしれない。
徘徊してる際、たまに寝室に押し掛かると再び俺の弟を作ろうと励んでるとこに遭遇したこともあった。
「あぁ……んっ、そこっ、そこっ……っいいっ……、あっ……そこ奥っ……あん、……あたってる、奥あたって――あなたっ!」
(ほんとお盛んですこと)
毎晩こうしてベッドガクガク揺らしてるわけだ。
(くそおっ! 羨ましいぞ、おいっ!!)
だが、なんだろう?
この複雑な気持ちは――
なんかこう、背徳感というか、罪悪感というか――。
ダメだ。今は考えたらダメな気がする。
文字が読めるからどんな本なのかも分かる。
だから、なるべく身になるような本を選んだ。
・世界地図
この世界の地名などが載っている地図。
言葉のまんまだ。
・魔力操作基本教本
魔力とはなんなのかと言う基本と、魔力をどう応用するかが書かれてる教科書。
・下級鍛治師から上級鍛治師の為の身になる教本
これは恐らく父親のだろう。
下級から上級までの鍛治について書かれた教科書。
色々漁った結果、この3冊が今の俺にぴったりだと思う。
まず何も知らない異世界に来てしまった俺は、この世界がどうなってるのか、今いる村はなんて言う村なのかを知る必要があった。
結果としては、
案外、この世界の広さは地球とあまり変わらないそうだ。
大きい大陸もあれば、小さな大陸もある。
それに海も描かれているから、きっとあるのだと思う。
それから父親にこの村はどこに位置するのか。
なんて言う村なのかを聞いた。
「勉強熱心だなぁ」
「普通この歳でそんな事教えてくれなんてなるの?」
「良いじゃないかぁ? 賢いんだよ」
俺が聞くと両親はそんな会話をしていた。
聞くところ、ここは『ユーノ』村というらしい。
田舎なのはもう分かっているが、規模は分からなかった。
さらに聞いてみると、たいして村人は多くないらしい。
少し行けば市場などもあり、最低限の買い物などは出来るくらいだそうだ。
漁村って訳ではなく、どちらかというと農村に近いイメージ。
特産物は麦。で、ここで生産された麦を使用して麦酒を加工してるらしい。それを商人や商会を通して売る。
それをこの村の財源にしているのも分かった。
自然は豊からしい。丘もあれば森もある。
俺と同じくらいの子供もいるらしい。
これで『ユーノ』村の地理や村についてのことが分かった。
続いて、もっとも興味を惹いた『魔力操作基本教本』だ。
魔力操作なんてワクワクする展開だ。
これぞラノベの世界。俺が妄想した世界だと心底思った。
この世界に魔法が存在すると知った今、俺にだって出来るかもしれない。
と読み進めると、いくつか基本的なことが分かった。
・魔力は体内から放出される。
または、魔力を溜め込んでいる道具から放出する。
・詠唱や呪文を唱える前にイメージする事が重要である。
そのイメージを詠唱や呪文にさらに置き換えて、魔術に変
換後に発動する。
・魔力量は産まれながらにして最大量は決まってる。
そして最後に重要な事が分かった。
それは、魔術というものがあるらしい。
それに、この教本はあくまでも魔力を魔術に変換するという意味での前置きみたいなものだ。という事。
だから、きっとこの続きになる教本が存在するかもしれないのだ。
そう考えると、さらに興味が沸いてしまう。
魔力と来て、次に魔術と来るのだから、それこそファンタジー世界を想像させる。
だが、間違いではない筈。
母親が俺にした回復魔法が良い例だ。
だからきっと、魔術というか魔法みたいなものがあると確信に変わった。
それでも、魔術の存在にワクワクしてたが、やはり魔術を扱うには魔力操作を理解しないといけないらしい。
という結論に至った。
魔力は体内から放出される。
だからきっと俺にもあるのだ。
いや、どうだろう。
遺伝にもよると書いていたからどうなんだ。
母親は魔術が使えるみたいだったから、きっとそれなりに魔力はあるのだと思う。
父親はどうだろうか。
鍛治師とはいえ、魔術を使ってるようには見えなかった。
いや、見えていないだけで、使っているのかもしれない。
ある程度は期待しても良いんだろうか。
俺の遺伝子は全く機能しなさそうだ。
不安だ。
詠唱や呪文を学ぶ前に、イメージする事が重要と書いてあったから、まずは俺自身の体内から魔力を放出するみたいなイメージをしてみよう。
もしかしたら、この家にあるかもしれない。
『魔力操作基本教本』の次なる教本が。
魔術について書かれてる本が。
信じよう。
でも、いったい魔力の放出のイメージってどうやるんだ。
うぅーん、迷ったぞ。
ラノベやアニメのような感覚で出来てしまうのか。
…………まぁいいか。
とりあえず試してみよう。
どのラノベを思い浮かべてみるか。
どのアニメを思い浮かべてみるか。
どうする。
…………考えてもムダな気がする。
やってみるか。
最近見たアニメは……異世界薬局だ。
分かる範囲で何かをイメージしてしまおう。
体内から…………俺自身の…………、
こう……沸き出る……感じで……。
魔術が出来るようになれば、時間を止めて……、
透明人間になって……確かそんなエロアニメが……
(ダメだ! 邪念がまじった)
もう一回。
体内から……放出する感じを……イメージ…………
うっ、なんだ。
身体が熱くなってきた。工房があるからか。
いや違う。そんな感じではない。
なんかこう込み上がってくるような感覚だ。
うっ、さらに熱くなってきた。
力が湧き出てくる感じだ。
これが魔力ってヤツか。
これを継続して魔力を使い果たして、ありがちなパターンだが気を失う。とかもあり得る。
逆に魔力を制御出来なくて暴走もあり得る。
ラノベの展開はどっちだ。
集中、集中……だ。
冷静になれ俺。
ここまできて諦められるかって。
もう一回、反復だ……。
制御しよう。いや、そういうつもりでだ。
…………良いぞ。さっきと同じ感覚だ。
なるべくこれを継続しつつ、冷静に、冷静にだ……。
「はぁーーー、すぅーー」
深呼吸をここでひとつ。
分析してみよう。
俺にはきっと魔力がある。
そう確信に至る。
魔力あるぞ。あるぞ!
今のところ完全集中モードに入らないとダメらしい。
体内から放出するイメージは出来るが、まだまだ継続はそこまで出来ない。
それに、自然とこなせるようになればそれがいちばん良い。
とにかく、反復練習だ。
やろう。とにかくやるしかない……。
こうして俺は、しばらくの間魔力放出のイメージ練習を繰り返す事にした。
家中どこに行くにしても、この『魔力操作基本教本』を手に持ち、暇さえあれば魔力放出のイメージ練習を行った。
ずっと持ち歩く俺を見て両親は言う。
「なんの本持ってるのかしら」
「良いんだ、良いんだ。あの歳は色んなものに興味を持つんだから」
「文字なんて教えてないのに、あの子にわかるのかしら」
◇◆◇◆
さらに月日が流れた。
俺は1歳6ヶ月になった。
それまで俺は魔力放出のイメージ練習を欠かさず行った。
その結果、時計がないから分からないけど、相当な時間、魔力放出の状態を維持出来ている。
完全集中モードに入らなくても、案外、自然とこなせるようになった。
ある意味、この状態がどこか気持ちいい。
なんだか、絶頂を迎える感覚に似ているからかもしれない。
そこで『魔力操作基本教本』に書かれてる新たなステップに進んでみようと思う。
だが、嬉しい誤算があって、ある事に気付いた。
それは、どれだけ魔力放出のイメージ練習をやっても疲労感も感じられないし、ラノベとかでありがちな気を失うパターンや、暴走するパターンすら無いのだ。
これって……、俺の魔力は無限なのか。
に行きついた。
1日何度繰り返しても、気を失って倒れたり暴走する事も無い。
ラノベだと気を失ったり、魔力が暴走したりっていうオチになるのだが、そうはならないのだ。
…………これは、チートか。
魔力無限なのか? 俺……。
こうなるともう、ワクワクとかの
そもそも、転生時に女神様にも会ってないし、チート能力や神器すらも与えられてないんだぞ。
でも、そういう事なんだと納得するしか無い。
そうとなれば、迷わず次のステップだ。
どうせダメ元だ。
そもそも、魔力操作の中でも放出状態が出来るってだけで、実際魔術を使えるのとは別問題だ。
そこはきっと、魔術に関する本を読まないとダメ系な、ゲームとかでありがちなチュートリアルみたいな感じだろ。
一段ずつ階段を登って。的なアレだ。
でも、試してみたい気はある。
魔力無限って事に気付いたんだからな。
…………やっ、……やってみるか。
それこそイメージする題材みたいなのが必要だ。
何にするかな。
死ぬ直前に見てたアニメは異世界薬局だからな。
あのアニメどんな感じだった。
薬剤師が異世界転生して、薬局を開いて……。
そんな感じだった。
なんか、錬金術みたいな方法でイメージしただけで薬を生み出してた気がする。
この手で行ってみるか。
いや、こんな茶番あるのか。
アニメのように想像してイメージしたら出来ましたって。
俺もそんなオチなのか。
もし今が俺の成長期だとしたら、それを逃したくない。
それに挑戦してみる価値は十分ありそうだ。
気を失う心配も無いし、暴走する心配……きっと無いよな。
おいおい。
これって自分でフラグ立ててしまってるんじゃないか。
暴走とかやめてくれ。
このパターンだと、追放展開になりそうだ。
うん?
もしかして、そのパターンなのか。
不安になってきた。
そもそも、この世界で魔術は存在するかもしれない。
いや、存在する。
でも、錬金術ともなれば、錬金術イコール異端児。とかならないか。
一応、隠れながらバレないようにやらないとな。
だからそれこそ、気を失ったり暴走したりするのは勘弁だ。
(頼むぞ俺の身体!)
それにしても、イメージして何を出すかって問題だ。
異世界薬局の主人公みたいに、そこまで化学の知識があるのか。と聞かれると自信はない。
では、何がいいだろうか。
それこそラノベで、最初に出す魔術とか魔法を考えてみたら良いのか。
…………水だな。
水くらいなら簡単にイメージ出来そうだ。
一応、念のため魔術の詠唱みたいな事やってみるか。
「クリエイト・ウォーター」とか「水よ出ろ!」とか、
「アグアメンティ」とか言った方がいいのだろう。
最初だからな。
カッコイイのにしたい。
(厨二で妄想好きな俺としては)
無難に「クリエイト・ウォーター」だな。
もうこの時点で決めてしまおう。
これがもし成功したらなら、今度は実際にイメージだけでやってみるとか。
これが成功したら、この世界での楽しみ方が広がるぞ。
…………まぁ、やってみるか。
不安だが。
暴走なんてしないでくれよ。
…………まずは、魔力放出状態。
うむ。これはもう簡単に出来る。
……ここから…………水をイメージする。
……川とか、…………前世だと水道とか……海とか…………
一応、アニメの通り手を出しとくか。
この上に水が溜まるようなイメージだ。
集中だ、集中…………。
水水水水…………。
「ハアッ!!」
魔力放出状態から感覚が変わって、体内から血液が溢れ出るような感覚があった。
うん?
冷たい。てか、水だ。
手のひらの上に水が溜まってる。
ちょっと待て!
今、詠唱しようと思ってた「クリエイト・ウォーター」は言わなかったぞ。
待て待て。
母親は確かになんらかの詠唱をして、最後に「ケアル」って言ったんだ。
そしたらゲームみたいなエフェクトのような光が出た。
それなのに俺は何も言ってない。
本来なら魔力放出の操作を覚えてから、詠唱とか呪文に変換して発動するんじゃなかったか。
出来てしまうなら、詠唱とか要らないだろ。
なんで教本に嘘書くんだ。
出来るぞ。詠唱とか無くても。
出来てしまった。
それに俺の魔力は無限だ。
最大量というリミットすらも無い。
そこから俺はこの秘密の練習に没頭した。
もはやイメージで生み出す事が可能になったから、一辺倒に色んなものを出してみようと思った。
思いつくものを順番にだ。
それでも検証は必要だ。
化学の元素記号とかの、水素とかは出せるのか。とか、俺が写真とかで見た事が無いものはどうとか。
これは検証が必要だ。
結果、
物質以外の物は生成出来ない事が判明した。
いや、これはこれでいい検証になったと思う。
生前、学校の科学の授業とかで見た物質くらいなら生成する事に成功したのだ。
ただ、写真で見た映像を思い出すのがなかなか難しかった。
例えば、鉄とか砂鉄、マンガンやそれにダイヤモンドまでも生成出来てしまった。
…………どう考えてもこれは異端児だよな。
だってダイヤモンドだし……。
それに魔力無限だから生成し放題だ。
この世界でのダイヤモンドの価値は知らないが、どうなんだ。
そもそもダイヤモンドなんてあるのか。
待て待て。
ぶっちゃけ、これはありきたり過ぎだと思うのだが。
生成する事くらいなら誰でも出来そうだし、ラノベでは良くある展開だと思う。
案外この世界の連中ならこんな事あっという間にやってのけてしまう。っていう事もあり得る。
別にこの世界の斜め上を行こうとしてる訳ではないのだ。
ただ、標準レベルが分からないだけ。
母親なんて蓋開けたら、とんでも魔導師でしたとか。
父親は魔剣を作ってしまうとんでも鍛治師でしたとか。
だって、魔力の最大量は遺伝にもよると書かれていたから、その可能性は十分あり得ると思う。
まあ、今は置いとこう。
さて、ここから何かできないか考えてみる事にした。
生成して、その次に違う事……。
それこそ、生成した物質を合体……。
(そっちの合体ではない)
合体と言うべきか、融合と言うべきか。
それこそ錬金術って言った方が良くないか。
これもまた検証が必要らしい。
その結果、
生成した物質に対して、そこからさらにイメージを膨らませての錬金は成功した。
鉄とマンガンが合体してしまったり、鉄とダイヤモンドが合体してしまったり。
不思議な物質が出来てしまった。
ダイヤモンドの中に鉄の物質が入ってる感じだ。
なんか不気味だ――。
ダイヤモンドらしい美しさに欠ける。
鉄と硫黄なんかも錬金出来てしまった。
ただ、アンモニアの生成には、何故かおしっこが出てきた。思い込みが強過ぎなのか、いや、ある意味正解ではある。
アンモニアはもうやめよ。
でも、アイディア次第でなんでも出来てしまうのだ。
面白くなってきた。
これはハマるぞ。
それでも基本は大事だ。
だから、
もっと色んな物質を生成して限界を知る。
錬金術が息を吸うように自然と出来るようになる。
次の目標はこれだ。
コツコツやって行こう。
ここまで来て挫折は良くない。
成長期かもしれないんだから、最初は丁寧に、だ。
こうして、俺は魔力無限と物質生成に錬金術を手に入れてしまった。
そして、俺は毎日、錬金術を使い続けて過ごした。
毎日、ずっと――。
転生したら才能があったらしい ー異世界で少しずつ本気を出していこうと誓ったー ピコ丸太郎 @kudoken
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生したら才能があったらしい ー異世界で少しずつ本気を出していこうと誓ったーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます