第26話 ほうじ茶の覇権争い

 わたしは、ほうじ茶です。一般に、煎茶や番茶を焙煎したもので、苦味や渋味がない、さっぱりとした後味の緑茶の一種です。

 

 茶の品格としては、玉露や煎茶より下で、高級な部類ではないとされています。それでも、京都の料亭では食事の際に出されることも珍しくなく、徐々に知名度も上がってきているのです。


 そんなほうじ茶のわたしですが、実はこのほうじという名前が好きではないのです。だって、他の茶名と比べたら、なんか地味というか、ダサいでしょ? 


「――ほうじ茶ラテ、新発売!」


 ……ですが、綺麗な女優さんのCMが流れたのをきっかけに、まあ、この名も捨てたもんじゃないと思いました。ラテがつくだけで、こんなにもオシャレ度が増すのですね。しかし、それと同時に、わたしに新たなライバルができました。

 

 ほうじ茶が狙う首。それは抹茶さん、あなたですよ――。





 

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200文字短編集「救済皆無」 ノエルアリ @noeruari

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